71. カンドラに向けて
「あの猫、地上についたかしら?」
「あれなら問題ないと思いますよ。ナイトメアキャット......小心者ではありますが実力はピカイチですからね。」
「そう......早く話がしてみたい」
「クウ、起きて!ほら...シルエルも」
朝ご飯の準備をしながらお寝坊さん達を起こす。フウナさんとアーサーは起きた後、運動してくるといい外に行った。
「タツキさん、こんな感じでいいですか?」
「うん。上出来だよ!」
ルビアが作ったのはスクランブルエッグトースト。トーストしたパンの上にスクランブルエッグとベーコン、チーズを乗せた簡単なものだか早く出来るし何より旨い。
「料理の事を難しいものと考えていましたが......なるほどこれなら私でもできます!」
楽しそうにヒョイヒョイと仕上げていく。
「うーん......飲みすぎた。」
顔が真っ青になっているシリラさんの隣では平気そうな顔をしているリーシェルさんがいた。昨日ビール樽3つくらいは飲んでいたはずだが......化け物か?
「リーシェルさんは二日酔いになりにくいみたいなんです。夢はゴットリカーを飲むことだとか......」
うん?ゴットリカー?
「こら、ルビア様。人の夢を馬鹿にしてはダメですよ。」
「馬鹿にはしてません。ただ、あれはおとぎ話の産物です。存在するかどうかも怪しいのに......」
「ロマンと言うものですよ。まだお子様には難しいですかね?」
お子様という言葉にぷんすかとルビアは怒っていた。
(ゴットリカー......多分これの事だよな。)
宝物庫で見つけた大量の酒類。その中に黒のラベルに金の文字が入った酒。そこにはゴットリカーの文字が。
「...............リーシェルさん。」
「タツキさん?どうしましたか?」
ルビアに叩かれながらこちらを見るリーシェルさん。
「今回は何度も命を救って頂きました。これは......そのお礼です。」
「あら?お礼だなんて......」
事実彼女達がいなければ、俺は死んでいたかもしれない。命に比べたら酒なんて安い......
「こ、こ、ここ、これを何処で手に入れたの!?」
ゴットリカーを手に持ちプルプルと震えていた。
「醜悪のダンジョンにあった宝物庫で見つけました。結構高いんですか?」
「高いなんて物じゃないわよ!いい?これ一本でお城...いや国が買えちゃうわよ!」
なんと......いや、待てよ。
ごそごそとバックをあさり始めた樹生。右手にはワイン、左手にはウイスキー......
「.........ごくっ」
リーシェルさんの目が驚愕から大好物を見つけた猛獣の目へと変化していた。
なるほど......理解した。
「後で換金しよう......」
「ちょちょ...ちょっと待ってください!」
樹生の言葉にリーシェルさんが反応する。
「タツキさん、今おいくつですか?」
「今ですか?......16ですね。」
その言葉にリーシェルさんは嬉しそうに笑う。
「なら既に成人は迎えているということですね。ならば......」
指をワキワキとさせながら、迫ってくる。だがそれ以上に耳よりな情報を聞いた。
「この世界は16才で成人......合法的にお酒が飲める、買える!」
ならば......
「いや......止めておこう。」
樹生はお酒をしまう。それを見たリーシェルさんは残念そうな顔をするが仕方ない。
「リーシェルさん......飲みすぎには気をつけて下さいね?」
「うぐっ!わ、分かってはいます。」
笑顔でこう言う。下手に拒絶したり怒ったりするよりも実は効果的だったりする。
(調子に乗りすぎてるな......気を引き締めないと!)
バチィン!!
「タツキ!?何をしてるの!」
「タ、タツキさん!?」
フウナさんとルビアが心配そうに言ってくれる。いつの間にか帰ってきていたようで、部屋の端には幾つか魔物が転がっていた。
「いてて......」
軽く叩くつもりが力みすぎたようだ。両頬が赤くなりジンジンと痛むが、大切な事だ。痛みを感じるということは死んでしまう可能性があるということ。俺は不死ではないのだから。
「ははは、すみません。ちょっと気合いを入れようと!」
上を見上げ樹生は手を伸ばす。
「まだまだ知らない事ばかりだ!死んでやるものか!存分に楽しんでやる!」
そう叫ぶ樹生を不思議そうにルビアやリーシェルさんはみるが......
「そうね......私だって知らないことはあるもの。」
「はい、マスターの料理は始めてみる物ばかりですからね。」
「本当にね。ポンポン美味しいもの作るから一緒にいて飽きないわよね!」
「ワフーッ!(楽しいよ!)」
皆は樹生を見ながらニコニコと笑っていた。
「さあ!朝ご飯にしましょう。」
スクランブルエッグトーストにかぶりつく。
「ど、どうですか?」
「とっても美味しいよ!」
少ししょっぱいそれは朝の眠気を飛ばすのに最適であった。
「しょっぱっ!」
どうもシルエルは苦手なようだったが......
「本当にありがとうございました。」
ペコリとエマは頭を下げた。肩には白竜パルテナがおり同じように頭を下げていた。
「うん。本当に良かったよ。」
白竜との契約。これはエマの名誉を回復させるだけでなく、自信の向上にも繋がるだろう。
「タツキさんのおかげで契約も出来ましたし......それに......私......」
エマは僅かに頬を赤らめうつ向いてゴニョゴニョと何かを言っていた。
「油断は禁物だよ。上手く入ってる時こそ、小さなミスが積み重なっちゃう物だからね。」
「.........はぁい。......バカ」
「?」
樹生らしいと言うか、この鈍感は......
「まぁいいです!タツキさん、本当にありがとうございました!」
「ああ、また何処かで。」
学生や料理人の皆に見送られながらグラニア魔術学院を出た。色々な事があったが楽しい寄り道になった。
「ふふ、タツキ何だか嬉しそうね。」
「そりゃね。」
エマにシリラさん...また何処かで会えるだろうか?そう考えるだけでも楽しいものだ。
「それじゃあ俺たちも頑張ろうか!目的地はカンドラだ!」
「「「「「「おー!!」」」」」」
フウナさん、クウ、シルエル、アーサー、ルビア、リーシェルさんが声を上げた。
「え?ルビアにリーシェルさん?」
予想外の人物達に樹生は困惑する。て言うかいつの間に......
「実は昨日上から手紙が届きまして......」
ルビアが一通の手紙を見せてくる。そこには邪教徒について書かれていた。どうやらカンドラで邪教徒に動きがあったようだ。
「だからカンドラまでの同行をフウナ様にお願いしたんです。」
フウナさんをチラリと見ると
「いいじゃない。彼女達の実力は私が保証するわよ。」
「それは知ってるけど......」
相談はしてほしかった。これから向かう所はかなりの危険地帯なのだから。
「め、迷惑はかけません!だから......」
うるうるとルビアが懇願してくる。
「わかった、わかった......無理だけはしないでね?」
樹生の言葉に嬉しそうに笑った。
「あの娘分かりやすいわね......」
「始めての同年代の男性ですからね。ふふ、眼福です。」
シルエルとリーシェルさんが二人の様子を見ながら呟くのだった。
「そう言えばアーサーとクウは何処に......」
いつの間にか消えていた二人。さっきまで仲良さそうにしてたけど......
ドカッン!!!!
「うわぁ!!」
いきなり空から何かが落ちてきた。
「中々にやりますね。流石はエンシェントウルフですね。」
「ワフーッ!(でしょ!)」
土埃が晴れると灰色の羽毛を持った鷲......
「アークグリフォンですか!?すごい!」
ルビアとリーシェルさんが駆け寄っている。どうやらアークグリフォンと言うらしい。アーサーがクウと共に倒したようだが...
「.........どうやってクウが倒したんだ?」
上を見上げながら困惑する樹生だった。
「クウ......アーサー......あれどうやって倒したの?」
「ワフッ!(雷で落としたの!)」
「私がクウを背にのせ彼女が雷で落としたのです。」
「そっかぁ......ほどほどにしてね。俺の心臓が持たないからさぁ」




