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53. 信頼

不死身!?あんたやりすぎよ!!


条件はかなり厳しいわよ。正直狙って条件を満たすのは不可能ね。たがら、あの状態だと不死身属性はつかないのよ。


……………それ以外は付与されてるのね。はぁ……そのうち本当に手がつけられなくなるわよ。




「何度も言いますがその子を渡してください。お金なら望むだけ与えます。」

席についた後の第一声がこれである。

「まず最初に、ご存知かと思いますが僕の名前はタツキと言いいます。。貴方の名前は?」

本当は知っているが、まずは名乗るのが基本だろう。

「……………エマよ。それが今の私の名前よ。」

家名を名乗らない…………いや、名乗れないのか。

樹生は目の前の少女に同情を感じていた。同じ16歳とは思えない程彼女の人生は壮絶なのだろう。だからこそ力になりたいと本気で思っていた。

「何故クウをそんなに欲しがるんです?友情契約で結ばれた従魔を引き離すのは相当難しいですよ。」

魔術契約は他者が介入し、その契約を断ち切ることができるが友情契約の場合そう簡単には行かない。

「ええ、存じてますよ。だから"貴方に"交渉を持ちかけているですよ。契約の破棄が出来るのは当事者だけですからね。」

そこまでわかってるなら………もう隠す必要は無いだろう。


「………シルエル、お願いしていい?」

「はぁ……わかったわよ。………ちゃんとやりなさいよ。」

シルエルがそう言うと樹生とエマの回りに空間断絶結界が張られる。これで中からの音は外に聞こえない。

「何をしたんですか…………」

エマは警戒を強め殺意を持って樹生を睨み付ける。

それは想定内だったが


(殺意ってやっぱりなれないな……チビりそう)


「ただの結界です。エマ·ウィルスナーさん。」

樹生は軽く頭を下げ、彼女の本名を口にした。

「貴方!!どこでそれを!!」

瞬間、思い切り胸ぐらを捕まれ引っ張られる。仕方ないこととは言え首が締まって……

「その事はどこで聞いたんですか!?………貴方も!!貴方もそうやって私を!!」

さらに手に力が込められ苦しさが増していく。

すると視界のはしに心配そうにこちらを見るシルエルが写った。


「………エマさん、落ち着きましょう。俺は敵では無いですよ。」

優しく諭す。絶対に怒ってはいけない。まず彼女に目の前の男は敵では無いと言うことを認識させなければ話は進まない。


「フー!フー!………………………。」

ゆっくりと手を話すエマ。

「誰から聞いたか?と言う質問には申し訳ありませんが答えられません。僕から言いたいことは1つだけです。」

しっかりとエマの目を見る。真摯に誠実に本気で。

「貴方の手助けがしたいんです。」

樹生がそう言うとエマの目が一瞬揺らいだ。


「……………貴方のことなど最近知ったばかりですし、貴方だって私の事を知ったのは最近でしょう?なのに手助けがしたいだなんて一体何をたくらんでいるのですか?」

至極全うな事を言われる。

「私の名前を知っていると言うことは"あの事"も知っていると言うことでしょう?それに本気で手助けがしたいと言うならさっさとその子を譲ることです。」

そう言いながらエマはじっとクウを見つめる。

「そうです。どうせ貴方も私の事を心の中では笑っているんでしょう?名家に生まれながら無能の烙印を押されて、それでも死ぬ気で努力して努力して努力して………それでも家族としても見て貰えない!そんな私を……笑っているんでしょう………?」


ついにポロポロと涙を流しながらエマはそう言った。


「…………再度言いますが、クウを譲ることはありません。なので提案させてください。」

一呼吸起き


「改めてエマ·ウィルスナーさん。貴方の最初の契約を僕に手伝わせてください。」


右手を差し出し握手の構えをとる。


「貴方の話は聞きました。理由はわかりませんが従魔契約が出来ないそうですね。クウを譲ることは出来ませんがその代わりとして従魔契約の手助けは出来ます。」

彼女にとってはこの上なく怪しく見えるだろう。初めて会う男にこんなことを言われても信じることなど出来ないだろう。だからこそ切り札を使わせて貰う。


「……………貴方がどれほど腕がたつかなんてわからないのにどう信用しろと………」


「入るわよ~」

ヌッとフウナさんが中にはいってくる。

「全く……いつまでやってるのよ。」

スーッと樹生の頭の上にシルエルが現れる。最初からずっと頭の上にいたのだ。お陰で首が痛い………シルエルちょっと肥えたか?


「………………何よ。その目は。」

「何でもないよ」


いきなり現れたシルエルとフウナさんに驚き固まるエマ。



「改めて……エマ·ウィルスナーさん。貴方の従魔契約を手伝わせてください。」


「……………貴方に、貴方に私の何が分かると言うんですか?こんな落ちこぼれの気持ち何て貴方には分からないでしょうね。」



最初見たとき、彼に対して沸いた感情は嫉妬だった。同じくらいの年齢で従魔契約を完了させている彼。それも友情契約で結ばれていることは明らかで…………それが更に嫉妬心を湧き上がらせた。


「何故こんな簡単なことも出来ないの!?」

「………ごめんなさい。」

嫌な記憶。家でお兄様やお姉様に従魔契約を教えていた家庭教師から言われた最初の言葉だった。スライムとの従魔契約というウィルスナー家なら出来て当然、息を吸って息を吐くよりも簡単なことが私はできなかった。


「………………期待、していたんだがな。」

「もう少し様子を見ましょう。もしかしたら………」


少し離れた所からエマの様子を見る両親がいた。

昔は愛されていた。と言うよりは期待されていた。天才と称されたお兄様やお姉様より圧倒的に早く物事や魔術理論を覚え魔力量も歴代最大と言われ神童の誕生だと大いに持て囃された………………最初の従魔契約を行うまでは。


「緊張しなくても大丈夫だからね♪」

「そうだ。スライムくらいエマなら楽勝だ。」


優しいお姉様とお兄様。

いつも仲良くしてくれていた。多忙な両親の変わりによく面倒を見てくれた二人。


「うん!」

………人の心が読める魔術があれば、少しはましだったのだろうか?


スライムに対して従魔契約を結ぶ魔術を行使する。すぐに契約は完了し、いつもの日常に戻れるはずだった。


バチッ!


「………えっ?」


何かミスをしただろうか?

そう思いもう一度繰り返すが……


バチッ!


何度、何度、何度何度何度何度何度何度何度何度何度何度何度何度何度何度


…………気づけばスライムはいなくなっていた。


そして…‥振り向くとそこには醜悪な笑みを浮かべる兄と姉。


絶望の表情を浮かべる親がいた。



そこから先はまさに地獄だった。

私は大病にかかり生死の境目と言う口実のもと家に監禁された。

幸せな日常は消え、毎日が苦痛に満ちていた。

だからこそグラニア魔術学院への入学は私にとってはこの上なく嬉しいものだった。

そこには私の事を知らない平民と事情を知らない貴族しかいなかった。嘘に嘘を重ねて自分の地位を作り、従魔契約について猛勉強する。

それでも成果は現れず、もう少しで従魔契約の試験が始ま……というタイミングで彼が現れた。


一目見た瞬間、あの子犬はただ者ではない事がわかった。

そして同時に


あの子犬がいれば………またあの日常に戻れる!


そう思ってしまった。

なのに…………



「…………貴方はバカなんですか?こんな私を手伝いたいだなんて。」

正直嬉しかった。こんな私にも手を差しのべてくれる人がいたことが………同時に彼までを失望させてしまうことに絶望していた。


「散々迷惑をかけて………そんな落ちこぼれの私を何故?」

彼は悩むこと無く即答した。


「だって頑張ってきたんですよね?」


たった一言。当たり障りもない一言。

なのに胸にスッと入り、熱いものが込み上げてきた。


「……………………こんな私でも………いいんですか?」


もう耐えられなかった。ポロポロと涙が溢れてきた。

私を救ってくれる。これは予感ではなく確信に近かった。


「よろしく……お願いします!」


エマと樹生は握手を交わし、二人の共同訓練が始まろうとしていた。

















何故エマは落ちこぼれに?魔力量も魔力操作も十分なのに……


「……………タツキお腹減ったわ。」


「今言うそれ!?もう、わかったよ!」

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