102. ようやく戻り始めた日常
「どうにかして像......じゃなくてもいいんだけど」
「ふむ......悩みますね。」
「ぶっちゃけ其処らの石でもいいんだけどさ......威厳がね。」
「マスター......起きて下さい。朝ですよ。」
「うん?アーサーか?うーん.........おはよう。」
「はい。おはようございます。」
どうにもアーサーは寝ずの晩をしてくれていたらしい。
「それにしても、早いね。」
「ええ、向こうもまっているでしょうし。」
「確かにね...それじゃあ朝ご飯の準備するよ。」
「エビが食べたいです。できれば大ぶりの...」
「ふふふ......やっぱりこうじゃないとね!」
「?」
「待ってて......腕によりをかけるよ。」
樹生は焚き火を作る。その上にグリル板を置き熱する。
上にはリルがとってくれた魚介達を置いていく。
「アーサー見てくれ!カイザーシュリンプだよ。」
両腕を使って持ち上げる。そうめちゃくちゃでかいのだ!!
「な、なんと美しい......ぜひ食べさせてください!」
「もちろん......」
カイザーシュリンプを半分に…...半分に!!切る!
「ふぅ......早く新しい包丁が欲しいものだよ。」
半分にしたカイザーシュリンプにたっぷりとベシャメルソースをかける。その上からこれでもかとナチュラルチーズとパルメザンチーズをかける。
「タラー......」
「アーサー?よだれよだれ。」
「はっ!私としたことが......」
「にゃにゃ!この匂いは!」
ピョンとメアがテントから出てくると、鼻をヒクヒクさせると目を輝かせていた。
「チーズにゃ―!>ω<」
「お!メアおはよう。みんなを起こしてきてくれるか?」
「タツキ、アーサー、おはようにゃ。わかったにゃ。いってくるにゃよ。」
トコトコとテントにもどっていくメアを見ながら、タツキは魚介類を焼き上げていく。
「バケットは買って置いてあるから......」
バケットを斜めに切り分けていく。
「後はガーリックバターをぬって表面を焼き上げればOKだな。」
「タツキさん、おはようございます。何か手伝えることはありますか?」
「おはようリリア。それじゃあ目玉焼きを作ってくれないか?」
「わかりました。えぇとこの辺にゲイザーはいますか?」
「あぁ...えっと卵の方なんだけど......」
「ああ!ごめんなさい。勘違いしてました......」
そういいながら、新しく出した鉄板に卵を割って焼いていく。
「リリアの料理も後で教えてな。材料は......何とかするからさ。」
「はい!そのときは任せてください!」
フンスとやる気満々のリリア。これは楽しみだな。
「あー......タツキ?リルとアイギスは少し遅れてくるにゃ。」
「それまたどうして?」
「特訓だってにゃ。」
メアがそう言うと離れた所から物凄い戦闘音が聞こえてくる。
「ちょっと様子を見てくるよ。リリア、火を見といて貰っていい?」
「わかりました。」
樹生は音のする方に向かうと、リルとアイギスが戦っていた。
「はぁー!!」
「この程度!」
リルが物凄い威力の蹴りをアイギスに浴びせるが、アイギスはびくともせずむしろリルを弾き返していた。
「さすがアイちゃん!でもこれならどうかな?」
リルが右手を前に付きだし
「エーギルブラスター!!」
「くっ!はぁぁぁぁぁ!」
極太の水のレーザー...まるでワダツミのビームを彷彿とさせるそれはアイギスを押し込む。
「こ、この程度......何てことありません!!」
「マジで―!結構ショックなんですけどー!」
肩で息をするリルと比べてアイギスはまだ余裕がありそうだ。どうやら今回はアイギスの勝ちと言うことらしい。
「行けると思ったんだけどな......」
落ち込むリルにアイギスがアドバイスする。
「威力が拡散しすぎですね。もう少し、拡散を押さえられればとんでもない威力になりますよ。」
「それが難しいんだよね......」
2人であーでもないこーでもないと話ているのを微笑ましく見ている。
「切磋琢磨だね…...」
「あっ!タッツーだ!」
「主様......おはようございます!」
タタタッと軽快に樹生の元まで来るとギュット抱きついてくる。
「リル......ちょっと苦しいかも...」
「むふふ......」
「リル......主様を離してあげなさい。真っ青になってますよ。」
「ごめんごめん♪」
やっと解放された。プレシオサウルスの時からなんだかんだスキンシップはあったが、ちょっと激しくなった気がする。
「まぁいいか…...朝ご飯出来たけど食べる?」
「もちろん!!」
「マスター、私は...」
「もちろんピカピカに磨いてあげるよ」
目には見えないが、幻想の尻尾がブンブンと振られているのがわかる。リルとアイギスを連れて戻るとリリアが海老を火から外して大皿に盛り付けているところだった。
「ふむ......いい焼き上がりだ。褒めて使わす。」
「え!あ、あはは///......ありがとう...ございます...///」
ありゃ......なんか思った反応とちがう......
「タツキはもしかして天然かにゃ?」
「何を......そんなわけなだろう?」
「............」
メアがなにやら諦めた目をしていた。よくわからない。
「とにかく、朝ごはんにしちゃおうか!!おかわり欲しかったら言ってね。」
樹生がそう言うと、皆が食べ出す。アーサーなんて涙を流しながら食べていた。
「アイギス......おいで。」
「はい......主様」
地面に座って入念にアイギスを磨く。食事を取れない代わりにこうして毎日磨いているのだ。
(キシーも手入れしてあげないとな。)
「主様......別の武具の事を考えるのはやめて下さい。今は…私だけに集中してください!」
何故......わかった...
「ごめんね。そんなつもりは無かったんだけど...」
確かに失礼だったな。余計な事を考えて目の前の事を失敗するのは本末転倒だからな。
鼻歌を歌いながらアイギスを磨き、おかわり要請が届けば用意する。そんな環境に樹生は満足していた。
(フウナさん達と合流したら何をつくってあげようかな?)
朝ごはんを片付け、いざ出発。アーサーは全員を背負うと一気に上昇しカンドラまで向かう。
「マスター......少し重くなりましたね。」
ガーン......
「すごいです......タツキさんの顔がよくわからない美術品見たくなっちゃいました。」
「あははは!タッツー何その顔!!」
「にゃふふ......ぶふっ!」
「マスッ...ター......ふっ......ふふ...」
酷い扱いである。
「誤解無きように......太ったと言ったわけではなく、筋肉が増えたと褒めてるんですよ?」
アーサーが必死に弁解してる様子が面白いようでメアが笑い転げていた。
「わかってるよ......。さんざん動き回ったからね。なんだかんだ筋肉はついて来てるかもね。そのうち、ムキムキマッチョマンになっちゃったりね笑」
瞬間空気が凍りついた。アーサーがいるのに周辺の空気がグッと冷え込んだ。
「想像したのが間違いにゃ......」
「タッツー......それは嫌だな...」
「タツキさん。私は今のタツキさんで居てくれることを切に願います。見も心も...」
「マスター......クウが悲しみます。」
「主様!守りがいが無くなるのでやめて下さい。」
そろいもそろって......そろそろ泣いちゃうよ?
「分かったわ!!」
「何か迷案が浮かんだのね。教えて頂戴。」
「ルビアちゃんに信託を下すのよ!タツキ君に私たちを崇めなさいと!そしてお供え物をすることを!」