101話 議題!樹生はマスターか、主様か。
「そろそろ、新しいお菓子が欲しいわね。」
「何か......信仰の対象があれば、わざわざ神夢界に呼ぶ必要は無いわね。」
「ライーナの事も彼に教えてあげないとだしね。」
「「私のマスターです!!」」
「まだやってるにゃ......」
「それほど、彼女達にとって譲ることが出来ないのでしょう......しかし、あれがフェニックスの"アーサー"様ですか。」
アーサーとアイギスの言い合いをメアは冷めた目で見ており、リリアは仕方ないといった感じで苦笑いをしていた。
「タッツー?苦しくない?」
「あぁ......リル、ありがとう。だいぶ落ち着いてきたよ...」
リルに膝枕をしてもらいながら、安静にしていた樹生が答える。アーサーとアイギスの言い合いは樹生にも聞こえていた。
「私のが先にマスターと出会ったのです。貴方が引きなさい!」
「マスターは私を一生の相棒だと言いました!私こそタツキをマスターと呼ぶのにふさわしい!」
「「..............................」」
バチバチとお互いに睨み合うアーサーとアイギス。
「はぁ......2人ともちょっといいかにゃ?」
メアが一向に話が終わらない事に痺れをきらしながら、話を切り出す。
「2人はマスター呼びが被ってるのが気に入らないにゃよね?なら、呼び方を変えてみるのはどうにゃ?例えば......主様とかどうにゃ?」
「「!!」」
2人の脳裏に電流走る。
「主......」
「主様か......」
「ふむ......アイギス、貴方が選ぶといい。」
「!!......何故ですか?」
アイギスは驚いたようにアーサーに聞く。
「簡単な事です。今回の一件私はマスターを守るどころか側にいることも出来なかった。ですが...貴方のお陰でマスターは生きています。......感謝を。」
スッと頭を下げるアーサーをアイギスは静かに見ていた。
「分かりました。では私は...」
スッとアイギスは樹生の元へと来る。
「改めて今日からよろしくお願いします。主様......」
「よろしくね。アイギス。」
膝枕してもらいながらの返答。なんとも情けない...
「......良いのですか?」
「アーサー、今回私は主様が目の前で死にそうになっているのに助けることが出来ず、ただ見ているだけでした。それに...」
アイギスはそっと樹生に寄り添うと
「マスターでも、主でも...タツキはタツキですから。」
「そうだよー!ギュー!」
「そうにゃね...」
「はい。」
アイギスは寄り添い、リルは頭を抱きしめ、メアは足元に寄り添い、リリアは近くで微笑んでいる。そしてアーサーは...
「皆さん、今回は我がマスターを救っていただきありがとうございます。本当に...」
全員を包み込むように、抱きしめる。フワリと暖かく、お日さまの暖かい香りが樹生達を包み込んでいた。
パチパチと焚き火の火がはぜる。
「皆は元気にしてる?」
「はい。......最近ようやくクウがご飯を食べるようになりましたね。ずっと遅くまでマスターの帰りを待ってましたよ。
夜ご飯をすませ、夜も更けた頃...樹生とアーサーは焚き火を前に話をしていた。
「それは......申し訳ないことをしたね。ルビアとリーシェルさんは?」
「あの2人ならすでに別れた後です。カンドラでやることがあると言ってましたよ。」
「そっか......皆はカンドラに?」
「はい。今はカンドラの近くにある森で暮らしてます。」
アーサーに近況を聞く。何とかうまくやってるらしい。
「しかし......マスターが居ないと寂しいですね。ご飯も美味しくないですし、楽しくありませんでしたよ。」
「.........ごめんね。すぐ戻れなくて。」
アーサーの頭を撫でて上げると気持ち良さそうに目を細める。
「明日はすぐにカンドラに向かいますか?」
「もちろん。......あぁでも、いくらアーサーでもこの人数運ぶのは辛いよね。」
テントの中でスースーと寝息をたてる皆を見る。
「運べないことはないですが......」
どうもバツが悪そうである。
「どうかした?」
「いえ......分かりました。任せてください。」
「?」
なんだか聞きたそうにチラチラとテントを見るアーサーは見て気づいた。
「もしかして...皆の事気になる?」
「......はい。」
樹生はアーサーにこれまでの事を説明する。
「なんと......驚きました。覇塔の話も信じられませんが、リルはあれで魔獣なのですか。」
「そうだよ。ちなみにリリア......あの女の子は神様だからね。」
「ただ者ではないと思ってましたが......マスターは凄まじいですね。」
アーサーの言葉に、樹生は鍋をかき回す手を止める。思い出すのは死にかけた瞬間とリルやアイギスを失ってしまったと...後悔した記憶。
「俺は......何も.........」
手がカタカタと震えていた。
「マスター......」
アーサーが心配そうに翼で抱きしめてくれる。
「はは......は...俺は...何も出来なかった...。運が良かっただけなんだ......。」
「そんなことはありませんよ。ちなみに私はマスターを尊敬しています。」
フフンと鼻をならしながら、アーサーはどや顔をする。
「まず、マスターはとても優しいです。正直ドン引きする時もありますが、そのお陰で救われた人は多くこれからも増えるでしょう。次にご飯がとても美味しいです。マスターの作るご飯は見たことも聞いたことも無いようなものばかりです。なのに、どこか懐かしいような......そんなご飯が私達はとても大好きなのですよ。次は......マスター?」
アーサーが樹生を見ると、バッと顔を反らしてしまう。
「ご、ごめん......今は...顔......見せられないや......」
肩を小さく震わせながら、必死に耐える樹生。そんな彼をアーサーは無言でそっと抱き寄せるのだった。
「マスター......もう心配はありません。私達がいます。もう2度と今回のような事は起こさせません。」
後書き
「アイギスは......なんとか持ち直したようですね。安心しました。」
「ほっほっほ、それはなによりじゃ。さて......アレス?わかっておるな?」
「えぇ......奴らの監視を続けましょう。タツキの旅の邪魔をさせないように。」




