8 林デビュー
誤字報告ありがとうございます。
この機能ありがたいです。
新事実の発覚です。
おむつの巻きが減ったら歩きやすくなりました。
某トレーニングの結果、おむつの巻が減りました。え、この前粗相しただろうって? それは三日も前の話です。
あれからやはり時折雨が降るため、アイリス捜索は実行に移せていません。
そして礼拝堂の中で僕は行動に移します。
アリアのスカートの裾をツンツンと引っ張りました。
「なに、リューク?」
「あいあ、うっうん」
そういうとアリアが僕を抱き上げシスターチェスタの元に走ります。
「シスターチェスタ、リュークうんちだって」
「そうかい、リュークはだいぶん言えるようになったねえ」
シスターチェスタはアリアから僕を受け取りおまるの場所へと移動する。
アリアは僕のお守り担当だったようです。小さい子のお守りならアリアより二歳上のカレンがいるのだけど、カレンはメリサのお守り担当でした。
メリサはシスタータバサにひっついているイメージが強いけど、孤児院長のシスタータバサは何かと忙しいので普段はカレンが面倒を見ていたようです。
「おむつ一枚減らしてもだ丈夫そうだね」
この二日、昼の間は失敗なく申請できていることでモコモコ巻きおむつが減りました。
するとどうでしょう、歩行がスムーズに。巻き巻きのおむつが足運びを邪魔していたようです。
……夜はまた巻き巻きですが。
今日は朝から良い天気です。
女性陣が洗濯を終えました。僕は一人女性自陣に混じってます。アリアとセットなので仕方がありません。
シーツが風にふわりと煽られるのをじっと見てました。あのシーツを汚したのは僕ではありませんよ。メリサです、メリサだってば。
「カレン、今日はこれから市場に行ってきますね。シスターチェスタは厨房にいますから何かあれば知らせなさい」
「はい、シスター」
女の子の最年長は十二歳のカレンです。
あれからも雨の日は玄関前になにかしらが届けられます。なんと魚もありました。おかげで食生活が少し豊かです。
兎や鹿の皮を市場で引き取ってもらって、教会では栽培できない麦や塩などを購入してくるそうです。
シスタータバサを見送った後カレンが言いました。
「じゃあ、森にハーブ摘みに行きましょうか。早成の野イチゴ見つけたの」
今ここにいるのはカレン、アリア、シェリー、メリサ、僕の五人。僕以外の四人が僕を見る。
「あ〜、リュークどうしよう?」
「随分歩けるようになったけど、森は無理じゃない?」
これはチャンスです!
「いく!」
僕は声を大にしてアピールします。
「いくお、あいあ、いく」
「なんか行く気満々になってるよ」
アリアにアピールします。僕のお守り担当ですから。
「ポッドとゼクスも巻き込んで、歩けなくなったら背負っってもらおうか」
「そうね」
やりました。僕の林デビューです。
僕以外が大小様々な籠を背負ってやってきました。果樹園の外につながる林です。
ここの林はそれなりに人の手が入っています。建材になりそうな大きな木はすでに伐採され、残っているのはまだ細い木と、少しばかり植林された若木です。
森だった場所は、森というには木が少なくなってしまいましたが、みんなは森と呼んでます。
林なのか森なのか悩ましいです。
ここを開拓してしまう案もあったそうですが、今はまだそこまで土地が必要ないし資源も取れるということで残されています。
これから入植者が増え、土地が不足するようならここも無くなってしまうそうです。
孤児院の食料庫なんですけど。
ポッドの籠が大きいのは僕が入ることを想定されております。
近くに小川があるようで、水の流れる音が木ぉえてきます。
川辺にはクレソンやスイバ、フキなどが生えてそうです。ん? なんでこんなこと知ってるのかな、まあいいや。
「あ、あそこ」
シェリーが何かの草を積んでいます。あれはノビルでしょうか、独特の匂いがします。
「リュークはここにいてね。うろちょろしないで」
「あい」
素直に返事をしたのに何故でしょう? 僕の周りを皆が持っていた籠で囲まれてしまいました。
でもいいのです、僕はじっと待ちます。みんなが夢中になってあっちこっちに野草やキノコを探しに散らばって行くことを。
「あったよ、野イチゴ」
カレンの声にみんなが殺到していきます。あれは採取ではなく、その場で食べるのでしょうね。
僕も食べたいけど、我慢します。そしてそろっと籠の囲いを脱出します。
そおっとそおっと林の奥に向かって歩きます。
カコカコカコカコ、カコカコカコカコ……
仕方ありません。この木靴は少し大きくて隙間があるせいかよく音がなります。
でもみんな夢中で野イチゴを頬張っているようです。
……誰か僕に持って行ってあげようという子はいないのでしょうか? まあ、いないから僕はこうして抜け出しているんですけどね。
いいもん、野イチゴなんて欲しくないんだからねっ。
「きゃあっ」
「逃げろっ」
「そっちじゃない、こっち」
突然の喧騒に振り向くと、カレンがメリサを抱いて走ってきた。その後ろにシェリーとアリアも付いてきています。
「リューク、リュークは?」
アリアが囲いの中に僕がいないことで焦っています。仕方ありません、今日は諦めましょう。
「あいあ」
「リューク!」
「ダメだ、ナイフじゃ歯が立たない!」
「みんな逃げろ!」
ポッドとゼクスの焦ったような叫びが聞こえた。