表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/129

スウィート ストーリー

タイトルのまんまです。

 朝、目が覚めたら、すぐ傍にあったルークの寝顔に見とれてしまった。

 なんで此処にいるのだろう?そう思いながら……。


 金色の長い睫毛、すっと通った鼻梁。緩くウェーブのかかったブロンドの髪は、朝の光に輝きを放っている。あとは、結構曲者な薄い唇。

 相変わらず綺麗なひとだなあ…。なんでこんなひとが私のことなんか好きになってくれたんだろう…。


 見とれていると、その金色の長い睫毛が揺れた。

 ああ――、綺麗なエメラルドグリーンの瞳が開いていく。吸い込まれそうだ。


「…ミツキ…?」

 綺麗な王子様の声に私は微笑んだ。ルークも微笑み返してくれる。そうしてやっぱりその曲者な唇が近づいてくる。

 私は静かに目を伏せ、顎を上げた。


「おや、起きたのかい?」

 明るい元気な声に、飛び上がらんばかりに驚いた。


 慌てて起き上がる。

「お、おはようございます!」


「おはようございます。随分元気になったみたいだね。良かったけど……」

「?」

「殿下が敷けてるよ」

「え?」

 女将さんの目線に自分の手元に目を向ける。


「!!!」


 慌てた私は掛け布団と一緒にルークをベッドに押し込めていた。

「だ、から、手を離せ。ミツキ…」

 声にならない悲鳴とともに両手を挙げた。

 起き上がったルークは柳眉を上げている。またやってしまった。

「何度目だろうな?」

「えーっと…」

「馬鹿、数えなくて良い」

「ごめんなさい…」


「まあまあ、元気があって良いじゃないの。朝食は?ふたり分ここに運ぶようにしましょうか?」

「ああ、頼む」

「承知しました」

 女将はにっこり笑って部屋を出ていった。



「怒ってる?」

 おずおずと尋ねる美月はまた違った可愛さがあると、ルーカスは心の中で悶絶していた。

「怒ってはいないが――、いや、やっぱり怒っている。どうもミツキは王太子の顔をぞんざいに扱いたいらしいからな」

「そんな事はっ!」

「ないのか?」

「ない、です」

「ふうん。じゃあ、証拠を見せてみろ」

「へ?」

 にやりとルーカスが笑う。


「証拠って…」

「簡単だ。大事に扱っているというなら、優しくくちづけを」

「―――へ?」

 優しくくちづけ…それってつまり―――。

 美月の顔が真っ赤に染まる。

「えええーっ!」

 そのまま固まった。

「何時もしてるだろう?ほら…」

 ルーカスが少しだけ顔を上げた。

「………」



「何だ、やっぱり無理か」

「いや、その…」

 美月は赤い顔をして口をパクパクさせている。


 これ以上は笑いを堪えられそうにない。流石にこの辺で止めておこうかと、ルーカスが口を開きかけた時だった。


「やる」

「は?」

「やるよ」

「えっ?」

 全身に緊張感を漲らせた美月が、ルーカスに震える手を伸ばしてくる。

 その両手は、そっとルーカスの頬に添えられた。


 想定外の展開にルーカスも戸惑ったが、そこは嬉しい誤算だった。

 赤い顔をして近寄ってくる美月の顔はいつもより艶めいて見える。こんな美味しいシチュエーションならもっと早くに試しておけばよかったと、美月の顔を眺めていると、目を閉じてと怒られた。

 そうして目を閉じると遠慮がちに美月の柔らかい唇が触れてきた。離れたかと思うとすぐに啄んでくる。優しく触れる口づけにルーカスの想いも高ぶっていく。

 堪えきれずに美月に手を伸ばそうとした瞬間、けたたましい音とともに客室のドアが乱暴に開いた。


「ミツキ!大丈夫ですかっ!――――っと」


 入ってきたのはレナードだった。

 そのレナードの目に映ったのは、ベッドに座る王太子に口づけているミツキの姿だった。

 赤かった美月の顔はさらに赤くなり、一瞬の静寂の後、悲鳴が轟いた。



 それから、布団に籠って出てきてくれない。


 顔がにやけている悪戯なルーカスを一瞥し、動かない布団の山に目を向ける。


「…すみません、ミツキ。ルークが部屋に居なかったので探していたら、女将に『ミツキが襲われるかもしれないから早くいけ』と言われまして…。ノックもせずに無作法なことをしました」

 レナードが眉尻を下げ弁明した。


「……いえ…」

 しばらくして、今にも消え入りそうな声で返事があった。


「あ――――、ミツキ、悪かった。その、俺がちょっと調子に乗りすぎたのだ。本当は途中で止めるつもりだったんだがな。余りミツキが可愛かったものでつい………」

「馬鹿!…馬鹿、馬鹿、馬鹿!ルークの馬鹿!もうヤダ!恥ずかしすぎて死にそう!」

「それは困る。せっかくこうして会えたのに。俺が悪かったから機嫌を直して出てきてくれないか?もうすぐ朝食も運ばれてくるだろうから…」


 美月の布団の塊がピクリと動いた。

「わかった」

 ルーカスは美月の食欲に救われた。


 美月が意を決して布団から出ると、ルーカスが優しく手を引いてベッドから下ろしてくれた。気をきかせたのか、レナードの姿は無かった。


 ルーカスがそっと引き寄せ抱きしめてくれる。

「悪かった」

 ルーカスの肩がわずかに震えている。


「………ルーク、笑ってるでしょ…」

「怒るな、ミツキ」

 ルーカスが額に口づけた。

「怒ってない、恥ずかしいだけ!」

「そうか、それは良かった」

 何が良いんだか、まったく…。そう思ってみても、なんだか異常に機嫌の良い王太子を前に、文句を言う気にはならなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ