異世界なう?
気がつくと一面が砂だった・・・砂漠?
はて?俺はここに守護霊になりに来たはずなんだが・・
どういうわけだか人が居ない。
《どういうわけだ?俺はここからどうしたらいい?》
届くかはわからないが、俺はここに送ってきたと思われる”何か”に届けと念じてみる。
《おや?よく【念話】のやり方がわかりましたね? 今から説明しに行こうと思ったのですが》
《そんなもん意識に指向を持たせて念じただけだ、届く保証も無かったしな、生身で大声張り上げたのと変わらん》
《なるほど~、そういうものですか》
《それよりこの状況だ。 俺は誰かの守護霊になりに来たんだよな?何故相手がいないんだ? それと【念話】だったか?それもだが俺が扱える能力とか使い方はどうやって知ればいいんだ?》
・・・・・・
なんだこの沈黙。
《えっと・・・いないんですか?》
《ああ、人っ子一人見えないな。 俺の目に見えないだけかもしれない、感知の方法なんかあったら教えてくれ》
(・・・パラパラパラ・・)
おい、なんだその取説めくる音。
《お待たせしました、まずあなたの【能力】を把握する必要があります、とりあえず頭の中で【スキル】と意識してください》
頭の中で強く【スキル】と意識してみる・・・見えた。
【スキル】
:【念話】
:【生命感知】
:【浄化】
:【操躯】
【浄化】?【操躯】?よくわからん【スキル】もあるようだが、とりあえず【生命感知】?これを使えばいいんだろうか?
《【生命感知】というのがあるが、これを使えばいいのか?》
《・・・そうですね、それでいいと思います、使い方はその【スキル】を意識して説明を要求すればいいだけです。》
《説明を要求って・・・》
とりあえず念じてみるか・・・【生命感知】!!
【生命感知】
効果:【幻想生命】を含むあらゆる【生命】を種族別に感知する事が出来る。
用法:効果対象範囲を認識し、【発動】を意識する。
なるほど・・・
よし、では範囲は俺の周囲100mくらいで【発動】!!
頭の中にさまざまな【色】の点が見える・・・これは微生物や虫か?そこまで見えるのかよ。
よく見ると、俺の「真下」に人間の大きさの【色】が見えた・・・埋まってやがる。
《こいつか・・・どうする?意識無いどころかこのやり取りの最中もどんどん体力消耗してるぞ?》
《・・えっと、え?どういう状態なんですか!?》
《砂に埋まってる、どうも力尽きて倒れた上に砂が乗ったようだな、砂嵐でもやり過ごしてたか?》
《大変じゃないですか!!早く起こさないと!!》
《どうやって?》
(パラ・・パラパラ!)
だからなんだその取説の音!!
《あなたには意識の無い人を動かす【スキル】が備わっているはずです!! その【スキル】でとりあえず人里まで運んであげてください!!》
・・・【操躯】か?
【操躯】
効果:意識の無い物体に乗り移り、その動きを支配する。その物体が持つ能力全てを扱う事が出来る。
用法:対象に触れて【発動】を意識する。
・・・「意識の無い物体」に砂は入りますか?
とりあえず本人を強く意識して・・・【発動】!!
体が吸い込まれるイメージに襲われる・・・!?
「ぶは!!」
完全に意識と身体を支配したらしい・・・と言うかこれ身体を動かすどころか完全な乗っ取りじゃね?
「これで・・・とりあえずこいつのことを知らないとどうにもならないな、どうすればいい?」
・・・・・・
反応が無い。
《おい、何で応えない》
《念話のチャンネルが変わっちゃったんですよぉ、対象のチャンネルがわからないとこちらから繋ぐ事が出来ないんです》
《じゃあ、どうやって連絡するつもりだったんだ?》
《本来、あなたは霊体のまま彼を守るはずだったんですよ。それがこんな事になるとは・・・イレギュラーにもほどがあります》
《で、どうすればいいんだ?》
《ちょっと待ってくださいね・・・》
(パラ・・パラ・・)
《えっと、なんて名前の【スキル】でした?》
《(やっぱり取説じゃねぇか!!)【操躯】というらしい》
《【操躯】ですか・・かなり優秀な操作能力ですね、相手の意識が無い状態で【発動】すれば、意識が戻ってもなかなかコントロールを取り返せませんよ?》
《いや、そんな事はどうでもいいから・・》
やっぱり優秀なのかこれ・・・能力まで使えるとか、対象によってはチートにもほどがあるぞ。
《まずは【ステータス】と意識して呼び出してください》
【ステータス】・・ね。
《そうすると対象のステータスを見る事が出来ます、そこで【スキル】を呼び出せば、対象の習得している【スキル】を知る事が出来ます》
ふむ・・・
【ステータス】
名前:ユウリ
年齢:16
職業:ノービス Lv.10
筋力:50
知力:20
魔力:500
体力:10
生命力:100
敏捷度:30
【スキル】
:【剣術】Lv.2
:【格闘術】Lv.3
:【魔術】Lv.1
:【弓術】Lv.1
【魔術】
:【回復術】
:【火球投擲】
:【着火】
数値の基準がわからんがなんか・・・
《ゲーム・・・みたいだな》
つい口をついた。
《ええ、簡単にわかりやすく表現すると、ここはゲームの世界のような物です》
《何だと? 俺は異世界に呼ばれたはずじゃなかったか?》
《だから、「ような物」なんです》
どういうことだ?
《ここはあなたの居た世界の平行世界で間違いありません。ただ、ここはあなたたちが想像してきたifの世界でもあるのです》
《if・・・もしもか》
《そうです
あなた達はいつも夢見ませんでしたか?
勇者を呼び出される現実世界と、勇者を呼び寄せる魔法世界を
そんなことは夢だと思いながら、多くの人たちが考えました、
「自分たちの世界から異世界に飛ぶ人はいないのか?自分の知人がそうじゃないのか?あわよくば自分が・・・」
そんな「もしも」の世界がここなのです。
ここにはかつて勇者の供給先であった魔法世界が存在しました。
そして、その二つがとある事故で融合してしまった・・・それが今のこの世界なのです。
ステータスは、その魔法世界に存在したシステムであり、この世界で魔法やスキルを使うために残されたものなのです。》
非常に難しい話だ。
確かにそう言った事を考えた事が無いとは言わない、だがそれらの概念だけが共通してひとつの世界が出来たとでも言うんだろうか?
いや、ここはあくまで平行世界だ、平行世界とはifの世界の総称・・・ありえなくは無いのか?
ここはそれらifの中のひとつで、ゲーム的に見える世界なのかもしれない。
《ステータスの基準ですが、大体15歳くらいを基準にするとわかりやすいでしょうか?
15歳の人間を基準と仮定して、数倍と言うのがステータスの読み方です
一人立ちの年齢が大体15歳なので、それまでに殆どの場合大体のステータスが30となります》
だとすると、こいつは所謂脳筋・・・というには体力も低いし異様に魔力が高いな、どういうことなんだ?
《こいつ、他のステータスに対して魔力が異常に高いようなんだが・・・何かあるのか?》
《彼は【器】なのです。この世界をあるべき姿へ戻すために必要な物の【器】として、その【容量】を増やす運命にあるのです》
【器】・・・か、王道なら役目が終わったら死ぬか消滅といったところだな。
《そして、こいつが育ちきるまで守護すればいいのか?・・・と言うか、下手すると一生面倒見ることになりそうだぞ、乗っ取りながら》
《本当ならこの世界の行く末を本人に選択させたかったのですが・・・仕方ないですね、世界にとっては【器】こそ優先すべきなのです》
《世界にとっては・・・か。それが善か悪かまでは今の俺には判断がつかんな》
《おいおい知っていく事です、この世界の事を・・・ ではあなたに案内係をつけましょう》
「クエェェェーーー」
・・・あれか?
《あの鳥を目指して歩いてください、半日も進めば町があります》
とりあえず・・行くか。
こうして、俺の守護霊生活は最初から盛大に躓いた感が漂っていた。
・・・って言うか既に憑依霊だよな、これ。
次回は11/3の予定です