幻想世界《ファンタジア》
【幻想世界フィアリアース】
その成り立ちはつい最近の事である。
今から約10年ほど前、【魔法世界フィアル】で発生した魔王を処理するため、【フィアル】では勇者召喚を行った。
しかし、それによって召喚された勇者はあろうことか魔王と全存在を掛け合って最終決戦をしてしまった。
それによって起こったのは存在力の対消滅・・・魔王と勇者の存在は完全に消えてしまった。
ここまではよくある話と断じてもよく、普通ならそれくらいでは何も起こらないわけだが・・・二つの世界の関係性がそれを許さなかった。
【リアース】ここでは便宜上【現実世界】とするが、ここと【フィアル】は双子の関係にあった。
【存在】を共有し、その結果【魔法世界】で生まれた負の災害に対して【現実世界】から正の存在である勇者を呼び寄せ、沈静を行う関係。
傍から見るとそれは一方的な供給関係でしかなかったが、この二つの世界の【存在】が共有されている事で、一概に一方的とも言えないものであった。
まず、【魔法世界】で起きた負の災害の影響は【現実世界】にも影響を及ぼす。
逆に、【魔法世界】で起きた負の災害が解消されると、【現実世界】にも揺り返しの影響が及び大豊作や好景気が起こる。
二つの世界は、何故か【魔法世界】でのみ負の災害が起き、それを正す存在は【現実世界】から呼ぶしかなかった、まさかそれこそが今回の現象の原因になるとはその時は全く気づいてもいなかった。
実は、負の災害とは【負の存在】が溜まる事によって起こる現象であり、それを解消するために【勇者召喚】によって【現実世界】の【正の存在】をバランスが保てるレベルで集めて勇者に全てを背負わせる。
同レベルの【存在】の生み出す【力】がぶつかり合う事でそれぞれの【存在】が世界に還元され、仮にどちらかが勝ったとしても、直接対決であればれぞれに溜め込まれた【存在】は霧散し、世界に還元されるはずだった。
しかし、このときの災害である【魔王】はあまりにも強大だった、そして【勇者】はあまりにも未熟であった。
強大な魔王を倒すため、全存在をかけた勇者に対抗し魔王も全存在をかけた、しかしそれは世界からは望まれない対決だった。
【力】の衝突ではなく【存在】の衝突だった為、【存在】そのものが相殺しあい、消滅してしまったのだ。
そして、このときの災害がもっと小さい、普段どおりのものであればまだどうにかなったのだが、【魔王】は【魔法世界】の負の存在殆どの塊だった、したがって、【勇者】も【現実世界】の正の存在殆どの塊であった・・・・
結果は互いの世界の【存在】の均衡が崩れるどころか、互いの【存在】そのものが危うくなるレベルだった。
二つの世界は元々一つと言っても過言では無い相互扶助の関係だった、その為、この事態に対し導き出される対処はひとつしかなかった。
世界の融合である。
最初、互いの世界の代表者は何が起こったのかわからなかった。
しかし、【魔法世界】の巫女が【世界の神】にした確認により真相がさらされる事となった、世界が融合した事実、そしてお互いの世界の関係がである。
最初は盛大に混乱した。
【現実世界】は俺たちの世界の平行世界であった為、科学技術が発展していた、そしてそこに魔法が加わったのだ。
お互いが互いの文化の扱いに戸惑った。
最初に順応したのは【現実世界】の人間だった。
元々ファンタジーにおいて概念だけは頭の端にあった為、精神的に子供(所謂中二病罹患者含む)な者から次々と魔力を扱えるようになり、大規模な魔法まで行使できるようになると、今度は科学技術との競合が発覚した。
コストこそかかるものの人間一人で数基分の現代兵器に匹敵する程の能力があるとなればその脅威は推して知るべしだろう。
用途の異なる戦術兵器を数種毎散発的に、ゲリラ的に展開できるとなれば兵器の存在意義そのものが崩壊する。
また、通信技術も対応した術者間でなければ行えないながらも、傍受が難しい念話術に取って代わられ、戦術・戦略が根底から覆されていき、軍属は泡を噴いたという。
逆に、【現実世界】の軍上層部においてメリットとなったのが索敵術だろう。
前述の「ゲリラ的展開」は【魔法世界】においても問題になるため、これらに対応した索敵術が存在した。
これによって、魔力を使わない現代兵器によるゲリラ戦さえも鎮圧が容易になり、軍部さえ暴走しなければ、世界は平和が保たれるとまで言われるようになった。
次いで、【魔法世界】の人間は科学文明に順応していく。
魔術を使わずとも火が容易につけることが出来、薪が無くとも継続的に火を行使する事が可能になる事で、竈から余分な荷物が消えた。
電気が通じる事で簡単な通信であれば念話を使わずとも遠方と連絡が取れるようになり、発達した郵便・運送技術は世界の裏側にすら数日で物や手紙を送る事が出来た。
魔法を使ってこれらを行うことも出来たが、それなりの術者と複数の中継点を使う為スケジュールの確保と多大な予算を必要としたので、【魔法世界】の人間は感心と歓喜に沸いた。
その他テレビ・冷蔵庫・電子レンジなどにお決まりのリアクションをしつつその便利さを享受し、エアコン・扇風機に至っては最後まで魔法だと信じ、科学技術であることを受け入れたのは、簡単な科学実験の授業をした後であったという。
何で冷蔵庫を受け入れたのに同じような仕組みのエアコンを受け容れられなかったのかは謎だったが、後日【魔法世界】にも氷を使った冷蔵庫があった事が発覚し、恐らくその物が冷やしているのではなく、氷より冷える何かが入ってると思われたのではないかという結論に至った。
まぁ、間違って無いっちゃ間違ってないんだけど何か腑に落ち無いのは仕方ない。
そんなこんなで、魔法より科学の方が労力が少ないとされる物は科学が、科学よりコストが低く安定運用できる物は魔法が使われる、実にファンタジックな世界が誕生した。
やがて、この世界は二つの世界の融合である事を示すためその名を【フィアリアース】と改める事となった、これが【幻想世界フィアリアース】の成り立ちである。
次回は11/5の予定です




