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カキンオー(課金王)~コミュ障の俺が魔王扱いされ、世界が勝手に震えてる~  作者:


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106/147

106,修理と帰還

 翌朝。


 謁見の間は酷いことになっていた。


 壁にひびが入っていた。


 床が焦げていた。


 天井の一部が落ちていた。


 タルドが見渡した。


「なんとかしないと」


 腕まくりをした。


 工具を持ってきた。


 壁のひびに工具を当てた。


 ひびが広がった。


「あ」


 また当てた。


 もう少し広がった。


「あ、あ」


 天井を見上げた。


 また少し落ちてきた。


「あああ」


 タルドが工具を置いた。


 部屋から出た。


───



 セバチャの部屋に飛び込んだ。


「セバチャさん! 謁見の間が」


「存じております」


「壁が、天井が」


「存じております」


「俺がちょっと触ったら」


「存じております」


 セバチャが報告書を書いていた。


 タルドが覗き込んだ。


「なんと書いてあるんですか」


「カキンオー様が謁見の間の改装を決意された、と」


「改装?」


「左様でございます」


「でもあれは戦闘で」


「改装でございます」


 タルドが困惑した。


「セバチャさん、謁見の間どうするんですか」


「カキンオー様にお任せするのが最善かと」


───



 カキンオーが謁見の間に来た。


 見渡した。


 ひどかった。


 タルドが隅に立っていた。


「すみません、少し触ったら」


 カキンオーが手を上げた。


 流れを作った。


 壁のひびが埋まった。


 床の焦げが消えた。


 天井が戻った。


 元通りになった。


 タルドが目を丸くした。


「なおった」


 カキンオーが頷いた。


「す、すごいです」


 カキンオーが部屋を出た。


 タルドが謁見の間を見渡した。


 綺麗だった。


「すごい」


 誰もいなかった。


───



 セバチャが報告書に書き添えた。


 本日、カキンオー様が謁見の間を即座に修復された。


 これが意味することは一つである。


 いかなる破壊も、カキンオー様の前では些細なことに過ぎない。


 世界が壊れようとも、カキンオー様であれば修復可能であろう。


 つまり。


 この世界はカキンオー様なしでは存続不可能である。


 セバチャはそこでペンを止めた。


 いや、しかし。


 そうなるとカキンオー様の負担は。


 心労は莫大なものになる。


 世界中の破壊をお一人で修復されるとなれば。


 これは世界に警告を発すべきではないか。


 いや、さすがにそれは。


 しかし。


 ああ、どうすれば。


 セバチャはしばらく頭を抱えた。


 それから、ゆっくりと顔を上げた。


 答えは一つだった。


 報告書の末尾に、丁寧な字で書き添えた。


 全身全霊でお支えする以外にない。


 粉骨砕身、尽くしますぞ。


 一切合切が、全力でズレていた。


───



 ファルネイスの宿舎で。


 夜遅かった。


 レリスがまだ練習していた。


 黒いモヤモヤが出た。


 丸くしようとした。


 崩れた。


「うーん」


 また出した。


 また崩れた。


 そこに。


 窓から何かが入ってきた。


 小さかった。


 アモンだった。


「かえったチュ」


 レリスが振り返った。


「アモン!」


「うるさいチュ」


 アモンが枕の上に乗った。


 レリスの手を見た。


 黒いモヤモヤが出ていた。


「練習してたチュか」


「うん。でもまだ丸くならない」


 アモンが少し見ていた。


「手を出すチュ」


 レリスが右手を出した。


 アモンが前足で軽く触れた。


 何かが、流れた。


 レリスがビクンと反応した。


「なに?」


「感覚を覚えろチュ」


 レリスが目を閉じた。


 呪文を唱えた。


 モヤモヤが出た。


 丸くしようとした。


 さっきより、少しだけ丸かった。


 崩れた。


「あ」


「近いチュ」


 レリスが目を開けた。


「ちかい?」


「もう少しチュ」


 レリスがまた目を閉じた。


 また出した。


 また丸くしようとした。


 また崩れた。


「うーん」


「続けるチュ」


 アモンが枕の上で丸まった。


 レリスが続けた。


 夜が更けていった。


 アモンが小さく欠伸をした。


 レリスはやめなかった。


 部屋が静かだった。


 悪くなかった。



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