表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結までほぼ毎日更新】超巨大テーマパークで働いたら連続殺人に巻き込まれました。怪奇と幻想『ストレンジ・ワールド』へようこそ!  作者: 森月真冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/145

ズレている

 ややあって、静かな声で睦月は言った。


「……じゃあ、橘さんは、今、どこにいるんですか?」


「そ……それは……その。……まだアレっていうか……ちょっとダメなんだけど」


 ブツブツ呟き、言葉に詰まる。

 ふぅー、と。睦月は、己の腹の中から湧き出てくる正体不明の感情を押し沈めるため、深く、それはもう深く息を吐いた。


「……先輩。ひょっとして、俺が嘘を吐いたと思ってますか?」


「思ってない! 思ってないわ! ムーちゃんが嘘を吐くわけないもの!」


 首をぶんぶんと振る。それから、にっこりと笑って言った。


「でも、大丈夫なの! ムーちゃんは、なーんにも心配しないでいいわ。だから、安心して!」


「…………はあ?」


 人がバラバラにされて死んだと、睦月が言う。それを信じると、華音は言う。

 なのに、心配しないでいいだとか、仕事に出て欲しいだとか……何かが、根本的に間違ってる気がした。

 だけど、この状況を言い表す的確な言葉が思いつかなくて、睦月は黙り込む。


(なんだろう……? これは一体? ズレてる。何かが、決定的にズレている)


 と、華音は上目遣いでズリズリと近寄り、彼の手を握りながら言った。


「ムーちゃん。大変だったよねぇ! でも、もう大丈夫よ。なんにもないんだから、橘さんのことは気にしないでいいの!」


 そして、華音は恐る恐ると言った様子で続ける。


「もちろん、嫌だったら、お休みしてもいいのよ。でもね、今、すごーく人手が足りなくて……出てくれたら助かるんだけど……」


 そしてまた、にっこり笑う。

 睦月は、目の前がクラクラするのを感じた。


「嫌とか、嫌じゃないとか……っ!」

(そういう問題じゃ、ないでしょう!)


 思わず大声で怒鳴りつけてしまいそうになる。だが、華音に悪気はないのだろう。

 その真剣な眼差しを見れば、本気で睦月を心配しているのがわかる。

 わかるだけに……天真爛漫な彼女の笑みが、今は悪魔か死神の被った仮面のように見えた。


「……ちょっと、すみません。あの。考えさせてもらえませんか」


 ようやく、それだけ絞り出すのが精一杯だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ