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第19話:『修理』×『更新』。――ダブル・デバッグで世界を救え!

1. 絶望の「バグ・ストーム」

 奈落の最深部、通称『特異点』。

 そこは、物理法則も魔力も通用しない、真っ黒なノイズが渦巻く「混沌の嵐」だっ第19話:『修理』×『更新』。――ダブル・デバッグで世界を救え!た。

「くっ、僕の最新パッチ(修正プログラム)が、インストールされる前に消去される……!? この領域のバグ密度、バージョンアップの限界を超えているぞ!」

 カイの操る自律ドローンが、次々と火を噴いて落下していく。

 彼がどれだけ「最新のシステム」に書き換えようとしても、土台となる空間そのものが壊れているため、データが定着しないのだ。

「カイさん、下がってください。……土台ハードウェアが壊れてるのにソフトを入れ替えても、クラッシュするのは当たり前です」

 サトシが前に出る。

 彼の腕時計型レーダーは、激しい警告音と共に、空間に漂う「欠損した数式」を空中に投影していた。

2. 修理と更新の「マリアージュ」

「カイさん、僕がこの空間の『器』を一時的に修理(固定)します。その瞬間に、あなたの最新システムを流し込んでください。コンマ一秒のズレも許されませんよ」

「……フン、僕の処理速度を誰だと思ってる。一ナノ秒(10億分の1秒)の遅れも出さないさ」

 二人は背中合わせに構える。

「【概念修復リペア・ワークス】――対象:特異点の空間構造。修復定義:『現実維持の基本骨格』!」

 サトシの放った金色の光が、荒れ狂うノイズを強引に「静止」させた。

 それは、壊れたキャンバスを無理やり繋ぎ合わせるような、力技の修理。

「今だ、カイさん!」

「待ってました! 【システム更新オーバーホール】――プロトコル:『世界新基準ワールド・スタンダード3.0』適用!」

 サトシが作った一瞬の「隙」に、カイの放つ青い電子の奔流が流れ込む。

 修理された「器」の中に、最新の「ことわり」が満たされていく。


 システムログ:

 Repair(Reality) + Update(Logic) \rightarrow Stability(100\%)


ステータス:世界の再起動リブート完了

3. 女神、奈落の「珍味」に吠える

 光が収まった後。

 そこには、ノイズの塊だったはずの場所に、クリスタルが群生する幻想的な地底湖が広がっていた。

「……はぁ、はぁ。……やったのか? 僕たちの力が、噛み合った……?」

 カイが信じられないものを見るような目でサトシを見る。

 だが、その感動を打ち消すような声が、湖のほとりから響いた。

「サトシ! カイ! お主ら、よくやったぞ! その『ぴかぴか』のおかげで、この岩の隙間に隠れておった**『地底大トリュフ』**の姿があらわになったではないか!」

 リィエルが、ラグビーボールほどもある黒い塊を、土まみれになりながら抱えていた。

 それは地底の濃密な魔力が数万年かけて結晶化した、世界で唯一の、そして最高に「酒のつまみ」になるという伝説の食材だ。

「リィエル様……僕らが命がけで世界を直してる時に、何してたんですか」

「何とは不敬な! わらわがこのトリュフを『神威』で引き寄せなければ、お主らの修復作業など途中で魔力が尽きておったわ!(※嘘ではないが、動機は100%食欲である)」

4. ライバルの『デバッグ』

 地上へ戻る道中。

 カイは、自分のドローンを修理するサトシの手元を、無言でじっと見つめていた。

「……サトシ。さっきの、認めてやるよ。君の『修理』は、ただの懐古趣味じゃない。……僕の『更新』を支えるために、不可欠な工程だった」

「そう言ってもらえると助かります。……でも、カイさんの『最新』がなければ、あの穴を塞ぐことはできなかった。僕ら、案外いいコンビかもしれませんね」

「……ふん。勘違いするな。僕は君が直した世界を、片っ端から僕の色に塗り替えていくライバルだ。……でも、まぁ、その……」

 カイは顔を背けながら、リィエルから(渋々)分けられた地底トリュフの欠片を口にした。

「……美味いな、これ。悔しいけど、最新の合成食糧じゃ逆立ちしても勝てない味だ」

『【尊い】ライバルとの共闘、熱すぎるだろ!』

『カイ君、絶対ツンデレじゃんww』

『女神様、トリュフをスナック菓子みたいに食べてて、1粒数千万の価値が溶けていく……』

5. 結末:バグメーカーからの宣戦布告

 温泉街へ戻り、祝杯を上げる三人。

 だが、サトシの新しい腕時計が、かつてないほど不気味なメッセージを受信した。

『素晴らしい連携だった。ご褒美に、次の「バグ」は君たちの目の前に用意したよ。――君たちが今信じている「女神」の定義、修理できるかな?』

「……女神の定義……?」

 サトシが隣を見ると、リィエルがトリュフを口いっぱいに頬張り、幸せそうに寝落ちしていた。

 一見、いつも通りの自堕落な光景。

 だが、彼女の銀髪の端が、一瞬だけ**『真っ黒なノイズ』**に染まったのを、サトシは見逃さなかった。

 物語は、リィエル様自身の「正体」に迫る、シリアスな新章へと突入していく――。


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