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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


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第39話 ボスと必ず殺す技

 このダンジョンはそこまで大きくはないらしい。

 宝箱が出て以降、分岐の先を確認しても全部行き止まりだった。


「これで最後か」

「そうね」

「にゃ」

「ちゅう」


 そして最後に確認した分岐の先、俺達の目の前には両開きの大扉があった。


「ここがボス部屋かな」

「そうだと思うわ」


 マァが俺の呟きに返してくれる。

 探索中に教えてもらった。

 モンスターがいるタイプのダンジョンにはボス部屋があると。


「ここまでモンスターは全部倒してきたし、後はここだけだ」

「ええ、ボスを倒せばダンジョン踏破ね」


 モンスターの全討伐、宝箱の全回収。

 それらをもって初めてダンジョン踏破となる。

 なぜなら、この両方を達成することでダンジョンが消滅するからだ。


「じゃあ準備はいいな」


 ここまでモンスターを倒してきたけど、そこまで数は多くない。

 全部で十体程度だ。


「ええ、行きましょう」

「にゃん」

「ちゅう」


 体力はまだ十分ある。

 ダンジョンでの戦いを経て短剣の扱い方も分かってきた。


「よし! 行くぞ」


 俺は目の前の扉を押し開けていく。隙間から中の様子が見えた。

 まず目に付くのは部屋の中央にいる土色の人型だ。扉の方をその黒一色の目で睨んでいる。これまで出てきた土鬼よりも明らかに大きい。

 マァと同じくらいの身長だったのが、視線の先のあいつは俺と同じくらいか少し上回っているように見える。筋肉隆々で威圧感も桁違いだ。

 俺は手に握られている大剣を見た。装飾はなく、ただ相手を叩き斬れればいい。そんな印象を受ける肉厚な剣だ。

 部屋の中はテニスコート二面分くらいの広さだけど、それでも感じる圧が俺を前に進ませない。


「くっ」


 俺はどうにか足を動かし、両手で扉を開け放つ。

 もう見られたんだ。逃げる事は出来ない。


「行くわよ!」


 俺はその声と同時に横に避けると、マァのスキルである水龍が敵目掛けて飛んでいく。今までの必殺パターンだ。


 バシイィッ!!!


 モンスターの目の前で飛んで行った水龍が散る。

 あの大剣を一瞬で振り切ったのか!


「速いっ」


 大剣なのにまるで小枝を振るうように簡単に振り下ろしている。

 俺の武器は短剣だ。ただでさえ重さやリーチが違うのに速さまであったら迂闊(うかつ)に飛び込めない!


「避けつつ隙を探る!」


 大剣の間合いの外からどうにか活路を見出す。

 俺はそれに賭けてマァを後ろに庇いつつ前に出た。


「ギガアアァァァッ!!!」


 身が竦むような大音声(だいおんじょう)

 土鬼に似ているが似ていない声を近くで受けて一瞬身体が硬直する。


「メグル!!!」

「くっ!」


 俺の身体はマァの声に反応し、頭上に迫っていたボスの剣撃をどうにか躱す。


「このっ! 水龍!!」


 マァが体勢を崩した俺のフォローに入る。

 ここまでの戦いでマァの【水龍】は二回連続で撃てるようになった。

 恐らくモンスターを倒す事でSPが上がったんだ。

 操作にもSPを消費するタイプのスキルだから、SPはどれだけあってもいい。聖水を飲むのも限界があるからな。

 飛んで来た水龍が大剣でかき消されたのを確認すると、俺は覚悟を決める。


「あれを使う!!」


 俺は事前に決めていた言葉を言うと短剣を構えた。


星虹(せいこう)の一撃!!!」



星虹(せいこう)の一撃】クラス:Ⅴ

・装備スキル。スキル発動を願い発声する事で亜光速の突きを放つ。発動には100SPが必要。何人(なんぴと)たりともその一撃を妨げる事は出来ない。亜光速時には発動者及び発動者の所有する物品は星の力で保護される。



 加速した意識の中で、俺は鑑定内容を思い出していた。

 俺は今亜光速の中にいる。星の力に守られているおかげで消し飛んだりもしていない。視界いっぱいに様々な色の破片が散らばり、まるで万華鏡の中にいるようだ。

 俺の短剣を持つ腕がボスの胴体へと突き出されていく。突きの動作が終わったと同時にこの状態は解除される。問題は突きの動作が終わるまではずっと亜光速の状態でいる事だ。

 要は突きが終わるまでは相手に近寄る動きも亜光速になる。何人(なんぴと)たりともその一撃を妨げる事は出来ないというのはつまり、周囲の人間や相手にさえも亜光速の中での攻撃は認識されないという事。

 絶対に躱せないし、星辰の短剣が刺さる相手であれば最強のスキルだ。

 だがこのスキルには一つ欠陥があった。俺の通った後が滅茶苦茶になるんだ。

 俺はいい。星の力とやらに守られているからだ。でも周りはそうじゃない。

 一度草原で試したときは酷かった。いつまでたってもスキルが解除されずに慌てた俺は、少し先にある木に短剣を刺した。

 その後が大変だった。木までの道程は草ごと土が抉れて地面が剥き出しになったし、音も凄かったのか鳥が一斉に飛んで逃げた。


「周りへの被害が大きすぎる」


 ボスの胸を短剣が貫く。

 その瞬間亜光速は解除され、周囲に衝撃が解放される。


 パアァァァァンッッッ!!!


 吹き荒れる風。舞い上がる俺の前髪。

 そしてその先、目の前のボスもまた塵も残さず消え去った。

 あの日、俺の突きに耐えきれず消し飛んだ木と同じように……。

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