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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第一章 星渡巡と白猫とマァ

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第38話 なでなでと宝箱と罠

「はあっ!」

「いくわよ!」


 俺達は通路を進みつつ何度か戦っていた。


「ふぅ、これで五体目か」


 目の前で消えていく光を見ながら呟く。


「ええ、今のところ順調ね」

「にゃ」

「ちゅ」


 出てきたモンスターは全て同じ、土色の化け物だ。

 ま、仮に土鬼としよう。その土鬼ばかりが出てくる。

 これはやっぱりそういう事か。


「さっきから同じモンスターしか出ないな」

「そうね。最初に外で襲われた時も同じ種類だったし、やっぱりここから出てきたんじゃないかしら」


 そう、予想はしていたが恐らくマァの言う通りだ。

 つまり一度誰かが入っていて、そいつがモンスターに追われたまま逃げたんだろう。


「追われた人は逃げ切れたかな」

「分からないわ。ただ血の跡や死体がダンジョンの近くに見当たらなかったのは幸いね」


 上手く逃げ切れたならそれでいい。

 悪人でも死ねとまでは思わない。

 ただ、その罪に相応しい罰は受けてもらわないといけないが。


「他にモンスターが外に出てない事を祈るか」

「時間も経っているし、もし出ていたとしても戻っていると思うわ」


 マァによるとモンスターには帰巣本能というものがあるらしい。

 一旦外に出たとしても、時間が経つとダンジョンへ戻っていく。

 理由は解明されてないらしいが、ダンジョン内の何かの力が生きていくのに必要だからという説が有力だとか。


「物知りだな」

「いつかダンジョンに入るときにね、困らないように調べてたのよ」


 星の贈り物として様々な物語に出てくるダンジョン。

 激しい戦いや出てくるアイテムに心奪われる日々。

 少し早口で話すマァの姿に幼い妹が重なって見えた。


「そっか。偉いな」


 そんな姿に自然と手が伸びる。


「なっ!」


 気付けば頭を撫でてしまっていた。

 緩くウェーブした青い髪越しに青い瞳がこちらを見上げている。 


「あ」


 しまった!

 懐かしさで妹のように接してしまった。

 頭を撫でると喜ぶんだ、あいつは。


「ごめん!」


 すぐに手を退ける。


「あっ……」


 マァは一瞬残念そうな顔をしたように見えたが、キッと目力を強くすると俺を睨む。


「もう! 何をすりゅのっ」


 顔を赤くして詰め寄ってくる。

 噛んでいることには突っ込まない。


「ごめん、つい」

「ついじゃないわ! もぅ……」


 マァはそう言うとむくれてしまった。


「本当にごめんって。次からは気を付けるから」


 俺は手を合わせながら頭を下げた。


「……ならいいわ」


 しばらくそのままでいたが、気持ちが伝わったのか許してもらえたようだ。


「ありがとう」


 頭を上げるとマァを見る。

 顔がまだほんのり赤い。

 目も少し潤んでいるような……。


「もう、早く行くわよ!」


 マァはふいっと顔をそらすと歩き始める。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 俺はその後を小走りで追いかけた。


「にゃ」

「ちゅ」


 そんな俺達二人の姿を二匹は温かい目で見ている気がした。


 

「宝箱だな」

「宝箱ね」

「にゃ」

「ちゅ」


 俺達は行き止まりの小部屋にいた。

 目の前には宝箱が一つ。

 部屋には特に罠もなかった。


「ちょっと待って」


 自分の鞄に手を入れると鑑定玉を触る。


「鑑定」



《宝箱》クラス:Ⅲ 品質:優

・天然ダンジョンで稀に見つかる宝箱。ダンジョン内のリソースを注ぎ込んで作られた品。簡単に開ける事が出来るが、開けた者は気絶の呪いを受ける。



「なるほど」


 十分豪華ではあるものの、以前見たクラスⅤの宝箱に比べて装飾は控えめだ。恐らくクラスに合った装飾なんだろう。

 見た目である程度クラスを推測出来るのは分かった。それよりも気絶の呪いの方が問題だ。


「どうだったの?」

「にゃん」

「ちゅう」


 俺は皆に鑑定結果を伝える。


「そう、呪い……」

「にゃにゃ」

「ちゅうぅ」


 マァは考え込んでいる。


「気絶だしそこまで酷くはならないと思う」

「それでも十分危ないわよ」


 マァは俺の顔を見て言い返した。


「呪いがあるなら俺が開けるよ」


 マァにとっては初めての宝箱。出来れば開けさせたかった。

 ただ、呪いがあるなら俺が引き受けたい。


「いいの? 私が開けてもいいのよ」


 マァは俺を心配そうに見つめる。


「いや、今回は俺に開けさせてくれ。次はマァに譲るよ」


 さすがにマァに開けさせるのは俺の良心が許さない。

 次の宝箱に罠がなければ存分に開けてもらおう。


「それにマァには聖水を準備してて欲しい」

「……確かに聖水なら呪いを解けるわね」


 マァの持つヌウンの水筒は聖星水を生み出すが、それはマァの意志によって聖水に変化させる事が出来る。

 クラスⅤの聖水に浄化できないものはないはずだ。


「開けるから準備を頼む」

「分かったわ、気を付けてね」


 皆には念のため宝箱から離れてもらう。

 俺は宝箱の前にしゃがむと、皆が十分離れたのを確認してから言う。


「いくよ!」

「ええ!」


 両手を宝箱の蓋にかけた。

 そしてゆっくりと開けていく。

 後ろではマァが聖水を準備してくれているはずだ。

 あの水筒は蓋がコップになっていて、そのコップ越しであれば直接触れなくても聖星水を変化させられる。


「ん?」


 コップ?

 重大な見落としがあるような気がする。

 待て待て、何を見落として。


「あ」


 そうだ。

 ここまで何度かマァは聖水を飲んでいる。

 SPを回復させ、連続で水龍を発動するために必要だったからだ。

 確か聖水の効果は……。



《聖水》クラス:Ⅴ 品質:優

・原初の水より作られた聖水。触れたものを浄化し、服用した者を復活させる。



 これだ、触れたものの浄化と服用した者の復活。


「あぁ」


 聖水を掛ければ呪いは解けるだろう。

 だが、本当に気絶状態は回復するのか?

 解呪が出来てもしばらくは起きれないとしたら。

 次は直接聖水を飲まされるかもしれない。

 自分用のコップはあるが、渡していない。

 つまりこのままだとマァが使ったコップを使う可能性が……。

 宝箱の蓋は開いてしまった。


「怒られませんように」


 俺は祈るようにそう呟いた。

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