表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『  』と呼ばれた少年  作者: リフ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/46

第37話 なでなでと宝箱と罠

「はあっ!」

「いくわよ!」


 俺達は通路を進みつつ何度か戦っていた。


「ふぅ、これで五体目か」


 目の前で消えていく光を見ながら呟く。


「ええ、今のところ順調ね」

「にゃ」

「ちゅ」


 出てきたモンスターは全て同じ、土色の化け物だ。

 ま、仮に土鬼としよう。その土鬼ばかりが出てくる。

 これはやっぱりそういう事かな。


「さっきから同じモンスターしか出ないな」

「そうね。最初に外で襲われた時も同じ種類だったし、やっぱりここから出てきたんじゃないかしら」


 そう、予想はしていたが恐らくマァの言う通りだ。

 つまり一度誰かが入っていて、そいつがモンスターに追われたまま逃げたんだろう。


「追われた人は逃げ切れたのかな」

「分からないわ。ただ血の跡や死体がダンジョンの近くに見当たらなかったのは幸いね」


 上手く逃げ切れたんならいいんだ。

 勝手に入ったんだとしても、人が死ぬのはやっぱり嫌だ。


「これ以上モンスターが外に出ていない事を祈るか」

「あれから時間も経っているし、もし出ていたとしても戻っていると思うわ」


 マァによるとモンスターには帰巣本能というものがあるらしい。

 一旦外に出たとしても、時間が経つとダンジョンへ戻っていく。

 理由は解明されてないらしいけど、ダンジョン内の何かの力が生きていくのに必要だからという説が有力だとか。


「よく知ってるね」

「いつかダンジョンに入るときにね、困らないように調べてたのよ」


 星の贈り物として様々な物語に出てくるダンジョン。

 激しい戦いや出てくるアイテムに心を奪われる幼き日のマァ。

 顔を俯かせ早口で話すマァの姿にそんな在りし日の姿を見た。


「そっか。偉いな」


 俺はそんな姿に思わず頭を撫でてしまう。


「なっ!」


 マァは驚いた表情で俺を見上げる。


「あ」


 しまった!

 懐かしさで妹のように接してしまった。

 頭を撫でると喜ぶんだ、あいつは。


「ごめん!」


 俺はすぐに手を退ける。


「あっ……」


 マァは一瞬残念そうな顔をしたように見えたが、キッと目力を強くすると俺を睨む。


「もう! 何をすりゅのっ」


 顔を赤くして俺に詰め寄る。

 噛んでいることには突っ込まない。


「ごめんごめん、つい」

「ついじゃないわ! もぅ……」


 マァはそう言うとむくれてしまった。


「本当にごめんって。次からは気を付けるから」


 俺は手を合わせながら頭を下げた。


「……ならいいわ」


 しばらくそのままでいたが、気持ちが伝わったのか許してもらえた。


「ありがとう」


 俺は頭を上げるとマァを見る。


「もう、早く行くわよ!」


 マァはふいっと顔をそらすと歩き始める。


「ちょ、ちょっと待って!」


 俺はその後を小走りで追いかけた。


「にゃ」

「ちゅ」


 そんな俺達二人の姿を二匹は温かい目で見ている気がした。


 

「宝箱だな」

「宝箱ね」

「にゃ」

「ちゅ」


 俺達は行き止まりの小部屋にいた。

 目の前には宝箱が一つ。

 部屋には特に罠もなかった。


「ちょっと待って」


 俺は鞄に手を入れると鑑定玉を触る。


「鑑定」



《宝箱》クラス:Ⅲ 品質:優

・天然ダンジョンで稀に見つかる宝箱。ダンジョン内のリソースを注ぎ込んで作られた品。簡単に開ける事が出来るが、開けた者は気絶の呪いを受ける。



「なるほど」


 宝箱の装飾が控えめだったから、クラスⅤよりは低いかもしれないとは思っていた。

 それでも十分豪華なんだけどな。

 それより気絶の呪いの方が問題だ。


「どうだったの?」

「にゃん」

「ちゅう」


 俺は鑑定結果を伝える。


「そう、呪い……」

「にゃにゃ」

「ちゅうぅ」


 マァは考え込んでいる。


「気絶だしそこまで酷くはならないと思う」


 俺は言った。


「それでも十分危ないわよ」


 マァは俺の顔を見て言い返した。


「呪いがあるなら俺が開けるよ」


 マァにとっては初めての宝箱だし開けてもらいたかった。

 でも呪いがあるなら俺が引き受けたい。


「いいの? 私が開けてもいいのよ」


 マァは俺を心配そうに見つめる。


「いや、今回は俺に開けさせてくれ。次はマァに譲るよ」


 流石にここでマァに開けさせるのは俺の良心が許さない。

 次の宝箱に罠がなければ存分に開けてもらおう。


「それにマァには聖水を準備してて欲しいし」

「……確かに聖水なら呪いを解けるわね」


 マァの持つヌウンの水筒は聖星水を生み出すが、それはマァの意志によって聖水に変化させる事が出来る。

 クラスⅤの聖水に浄化できないものはないはずだ。


「今から開けるから準備を頼む」

「分かったわ、気を付けてね」


 皆には念のため宝箱から離れてもらう。

 俺は宝箱の前にしゃがむと、皆が十分離れたのを確認してから言う。


「じゃあ、いくよ!」

「ええ!」


 俺は両手を宝箱の蓋にかけた。

 後ろではマァが聖水を準備してくれているはずだ。

 あの水筒は蓋がコップになっていて、そのコップ越しであれば直接触れなくても聖星水を変化させられる。


「ん?」


 待て……蓋のコップ?

 俺は重大な見落としをしている気がする。

 待て待て、何を見落としてる?


「あ」


 そうだ。

 ここまで何度かマァは聖水を飲んでる。

 水龍を連発するために必要だからだ。

 聖水の効果は……。



《聖水》クラス:Ⅴ 品質:優

・原初の水より作られた聖水。触れたものを浄化し、服用した者を復活させる。



 これだ、触れたものの浄化と服用した者の復活。

 大事なのは復活の方だ。これはSPも回復する。

 ちなみに俺は今日まだSPを消費するスキルを使ってないから飲んでない。

 複数人で動く都合上【気配遮断】は使っても意味がないし、【星虹の一撃】はある理由でギリギリまで使わない予定だ。


「あぁ」


 だから今日は飲むために必要な俺用のコップをまだ渡してない。

 つまりマァが使ったコップに口を付けないといけないのでは……。

 手はもう宝箱の蓋を開いてしまった。


「今度は怒られませんように」


 俺は祈るようにそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ