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露天風呂だがなにか

 カポーン。


 露天風呂。源泉かけ流し……かどうかわからんが、刺激的な硫黄の匂いがする。紛れもなく温泉だろう。そして木でできた桶。雰囲気が醸し出される。


 体を軽く流し、湯船につかる。


「あぁ~~……」


 完全におっさんだけど、気にしない。肌の穴という穴から体にしみわたるミネラル。感じるわけではないか、そんな気分。


 そんな温泉。隣にいるのは、エルフリーデ……だったら良いんだけど、残念ながらそこにはミニョーさん。


「どうもっす」


「おう、タナカさんは温泉、初めてじゃないのか?」


「えぇ、自分の生まれたところにはあったもんですから」


「へぇ、それは珍しいな……そういうところがエルフリーデに興味を持たせたのかもしれんな」


 それは結構当りかもしれない。


「しかし、いち商人が国王の娘と同行するとは、すごい時代になったもんだな」


「本当です。今でも不安ですけど」


「でも、ベンが了承したなら、タナカさんはもっと自信もっていいと思うよ」


「それが唯一自分を安定させることができる理由ですね」


 他人から認められることで、やっと自分に自信ができる。いつまでたっても自分だけではこれで良いのか考えてしまう。


「ベン国王もそうですし、エルフリーデも俺を認めてくれているので、応えないとと思います」


「そうだなぁ……エルフリーデは、あれだけ腕があっても、まだ15歳だから、面倒見てやらんとな」


「はい」


 どうしてもまだ保護者的に考えてしまう。このミニョーさんも同じようなものだろうか。チラっと見ると目が合ってしまった。俺も見られていた。


「ど、どうしましたか?」


「う~んにゃ、あのエルフリーデに、恋人ができるとはなぁと。歳をとったなぁと思ったんだよ」


 しみじみと噛み締めている感じがある。そして、少しだけ過去の話をしてくれた。


 ミニョーさんは元々流浪の民の一人だった。大人たちの都合で戦場を渡り歩き日銭を稼いでいた。つまり傭兵のような感じだった。


 仲間が大量に死んでいくのを見た。そして怖気づき逃げた。しかし、稼ぐ方法が傭兵以外知らない。結局は一人で戦場を渡り歩き生きていくしかった。


 そして流れ着いて、たまたまオイレンブルクの陣にいた。そこで行われた模擬戦に勝つと賞金がもらえるということで参加した。そして優勝した。の腕を買われ、当時の第二王子だったベン=オイレンの指南役に指名された。


 ミニョーさんは身分を気にしたが、ベンは気にしなかった。そしてちゃんと年長者として敬ってくれた。


 戦争が終わり、食い扶持を求めオイレンブルクを離れたが、巡り巡って、ベン一家が貴族として下っていた時、森の中で出会い、息子・エリアスの剣術を教えることになった。


 その指南されている姿を、見よう見まねでエルフリーデも参加していた。気が付けば一緒に訓練していた。そこから2年ほど、王籍に戻るという時まで指南役をしていた。


 貴族や国王の剣術指南をしていたとなると、やめてからもそれなりに収入を得ることができた。身分の保証にもなり、生活は安定することとなった。


 だから、その後のベン一家について気になっていたそうだ。


「ま、何より、タナカさんが優しそうな男で良かったよ」


「なんだか照れ臭いですね」


「誉めてるんだから、照れておけ」


 ミニョーさんはそう言って、風呂を出た。俺は体を洗い、もったいないのでもう少しだけ浸かって出ることにした。



 柔らかい感触がある。あまり感じたことが無い。


 どこかで叫び声が聞こえる。アマンディーヌさん? 人の名前だろうか。


 しかし、とても良い感触だ。


 エルフリーデ? なんで叫んでるのだ?


 あぁ、これはエルフリーデのふとももなのか? 結構これは夢ごこち。



 パっと目が覚めた。


 ということは、当然夢だ!


 俺は……中学生かよ!


 エルフリーデのふともも枕で寝ていたとか。どれだけうっぷんがたまっているのか……。いやいや、正常な17歳と言われるとそうなんだろうけど。


 で、ここはどこだ?


「タナカ、起きたの?」


 見上げると、俺をのぞき込むエルフリーデの顔があった。


 湯上りなのか、ちょっと色っぽい……ってことじゃなく!


「え? どうしたの? イテっ!!」


 勢いよく体を起こしたら、おでこがエルフリーデの顎を強襲した。


「いたたた……バカ! 急に立ち上がるんじゃないって!」


「ご、ごめん!」


 事情がよくわからない俺に、経緯を教えてくれた。


 どうも俺は倒れてたらしい。いわゆるのぼせた状態。俺たち男の後に入ろうとしてたい女性陣に、助けられたそうだ。


 つまり全裸。そしてエルフリーデも全裸で。


「えぇっと……助けてくれてありがとう」


「……どういたしまして」


 俺は覚えていないのだが、すべて見られてと考えると恥ずかしく、見てしまってたエルフリーデも恥ずかしく、顔を合わせられない感じである。


 そんなところ、メイドの女性が「ごはん、できましたよ」と呼びに来た。


 二人はそのあとを気まずそうについて行った。

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