魔術師リアム、怒られる
リアムは今何故か、ペラペラの絨毯が敷かれたサツキ宅の床に正座させられていた。
祐介曰く、これが日本という今リアム達がいる国での由緒正しい叱責を受ける側の作法だそうだ。
その上で、パーカーなる羽織を前からかけられて首の後ろで結ばれていた。
たかが叱責一つを取り、こうも厳密な所作が求められるとは。侮りがたし。
「して、何故私は叱責を受けているのだ?」
「あのねえ!」
対面で同じ様に正座をする祐介が、目を泳がせながら興奮気味に言った。どうした祐介よ。
「落ち着け」
「ああっもう! ノーブラに白いTシャツはなしだから!」
意味が分からない単語が二つもあり、リアムは首を傾げた。
「もう少し分かりやすく言ってはくれないか? ノーブラと、て……Tシャツとは何だ?」
「ノーブラまで説明すんの、僕……」
ぶつぶつと祐介が言う。こいつはどうも独り言が多い気質の様だ。
「ノーブラっていうのは、ブラジャーをしていない状態のことです」
「ブラジャーとは何だ」
「その、さっきまでサツキちゃんが胸に付けていた物です」
あの胸を締め付けていた様で実は支えていた代物だ。肩に紐が食い込んで痛かったが、歩くと揺れてそれが微妙に痛かったりするので、実はなかなかに考えられている物だった。
「あれは侮り難い」
「何言ってんの」
「いや、こうも胸が重いと、歩く度に揺れて身体の軸がぶれるのだ。あれを身に付けているとそれがない。なかなかに素晴らしい代物だ」
ふう、と祐介が溜息をついた。
「あのねサツキちゃん。話が逸れてるけど、ブラジャーはまあ家だし寛ぎたいだろうし取ってもいいけど、せめて肌着を着てから白いTシャツは着てよ。Tシャツってその上に着てる服のことね」
ようやく得心がいった。
「ああ、透けるのか」
余りにも大きくて先端が目に入らず、つい無頓着になってしまった。しかもこの身体に入ってからというもの、そういった男性特有の興奮状態に陥らなくなっていることに今更ながら気が付いた。
サツキの身体を間借りしていることに原因があるのかもしれない。
しかし祐介に対し、確かに配慮は足りなかった。
「お前も若い男だということだな、許してくれ、ははは」
「はははじゃねえ……」
また独り言だ。これには慣れねばなるまい。
リアムは慰める様に言った。
「ミラージュの魔法をかけて見れば良かったのだろうが、いかんせん魔力がもう尽きてしまってな」
「み、ミラージュ?」
リアムが頷く。
「鏡を作り出す魔法だ」
「……サツキちゃん、こっち」
すっと祐介が立ち上がると、廊下にある半透明の扉を開け、リアムを手招きする。
「ユニットバスだから小さいけど」
リアムが痺れる足を我慢しながら祐介の元まで行くと。
そこには鏡があった。
次回はサツキバージョン!手は洗えたのでしょうか!




