OLサツキ、怒られる
日本の様に水道管は引かれていないので、トイレの中にて洗い場がないのは当たり前のことだった。
ウルスラもこの家は初めてらしく、あちこち探し回ってようやく裏口へと繋がるドアを発見すると、そこにある井戸から水を汲んで、それをサツキの手の上から流してくれた。ようやく手に残っていたあの感触が消えた気がした。
「ありがとうウルスラ……私もう、パニックになっちゃって」
半べそをかいているサツキを見上げるウルスラの顔に浮かぶ表情は、一体どういったものなのだろう。これまであまり人と深い付き合いをしてこなかったサツキには、分からなかった。
「とりあえず、お茶でも飲みつつ話しましょうか」
「うん。コップとかあるのかなあ?」
二人共、この家のことは全く分かっていない。すると、ウルスラが悪戯っ子の様な笑顔を浮かべて提案してきた。
「じゃあ、私とサツキ、どっちが先に見つけられるか競争ね!」
そう言った直後、ウルスラは家の中へと駆け足で戻って行ってしまった。
「あっウルスラ、狡い!」
サツキも慌ててウルスラの後を追う。先程一通り家の中を見て回ったからだろう、ウルスラの動きは早く、もう目に見える所にはいなかった。
しかし広い家だ。サツキのおんぼろアパートのワンルームとは大違いだ。他に人が居た様な気配はなく埃っぽい匂いがしているので、恐らくリアムは一人暮らし。奥さんがいたらもう少し埃は被ってないだろうし、子供がいたらもっと汚れているに違いないから。
始めにいた書斎、その隣がリビング、寝室には一人分のベッドがぽつんと置いてあった。それにキッチンに、バス・トイレは同じ部屋。階段らしきものはなかったので恐らくは平屋、そして一軒家っぽい。裏手にあった井戸は共同のものなのか、他の家の裏口と思われる壁面と数件分隣り合っていた。
それにしても贅沢だ。
サツキはキッチンに入ると、背の高い棚の上段に手を伸ばし、小さな台座に乗り必死でつま先立ちをしているウルスラを発見した。くす、と笑うと背後からひょい、と陶器のコップを二つ取り、にっこりと笑ってウルスラに言った。
「えへ、私の勝ちね」
すると、ウルスラが面白い位ぷうっと頬を膨らませた。
「狡いよサツキ! 先に見つけたのは私なのに!」
「先に取ったのは私だもん」
すると、ウルスラが台座を踏み外した。
「うわっ!」
「危ないウルスラ!」
咄嗟にウルスラを抱きとめる。それにしても凄い筋肉だ、女性一人を持っても全然余裕だった。
ウルスラが足をパタパタさせながら怒った。
「ちょっちょっと! いくらサツキの中身が女子だからって、胸を掴むのはなしでしょうがっ」
「あ」
サツキの手の中にぴったりと納まっていたのは、自分の物よりは大分こじんまりとしたウルスラの胸だった。
次回はリアムバージョンです。
書いたら投稿します。




