表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
187/728

魔術師リアムの中級編二日目のユメちゃん

挿絵(By みてみん)

 混雑した電車に揺られること一駅。


「慣れないと、これからもっときついよ。他人同士の汗かいた腕と腕が触れ合うあの不快感」

「やめろっやめてくれ祐介!」


 あはは、と祐介が楽しそうに笑った。今日も昨日と同じカフェに入る。


「ブラウスって結構透けるから、女性陣は会社に着いてから肌着を着替えたりしてたみたいだよ」

「成程……皆色々工夫をしているのだな。木佐ちゃん殿にも聞いてみよう」

「そうだね。あの人そういうところはきちっとしてるから。でもさ」


 珈琲を席まで持ってくると、祐介がリアムをじっと覗き込んできた。祐介の真顔は、正直居心地が悪くなるのだ。何というか、本人にそのつもりはないのだろうが、隅に追い詰められている様な錯覚を覚えてしまう。


「な、何だ」

「僕をくれぐれも(ないがし)ろにしないでね」

「蔑ろになどしていないだろう?」

「いーや。僕と目が合うと面倒臭そうな顔をする時がある」

「それは祐介が私が顔を上げる度に見ているからではないか」

「人が心配してるのにな、ていうかやっぱり面倒臭いって思ってるじゃない」

「あっ」


 祐介がむすっとする。大人かと思えば子供の様にいじける。


 可愛いものだ。


「よしよし、そういじけるな」


 祐介の頭に手を伸ばすと、ワックスなるもので固められた少し固い髪に手が触れた。撫でては潰れそうだ。リアムが手を途中で止めると、祐介が手を掴んで自身の頬に付けた。


「今日さ、帰りにまた何かDVD借りようよ。あれがいいな、素直になれない魔女が人の優しさに触れて前向きになるやつ。今のサツキちゃんに是非観せたい」

「大佐は出るか?」

「大佐は出ない」


 即答された。


「というか大佐はあれにしか出ない」

「なんと」

「あ、格好いい豚の男が出る映画もあるよ。多分サツキちゃん大好きだと思う」

「ではそれを先に」

「魔女が先」


 にっこりとされた。もう分かる。絶対譲らないやつである。


「わ、分かった。ではその魔女のやつが先でいいから、そろそろ手を」

「会社で僕と目が合ったらさ、笑ってよ」

「へ?」


 チラチラチラチラしょっちゅう見てくる度に笑えと言うのか?


「そうしたら、僕安心して仕事に集中出来るから。サツキちゃんが木佐さんとうまくやれてるかなーとか心配しないで済むし」

「祐介……」


 あの視線はそういう視線だったのか。済まぬ、祐介よ。自分の思慮の浅さが情けなく感じる。


 すると。


「うわだっさ」


 横を通り過ぎようとした声が言った。


 リアムが何事だろうかと見ると、一人の少しけばけばしい、だが甘い雰囲気の若い女性がこちらを見て笑っていた。


「山岸くん、昨日噂になってたけどマジでその子と付き合ってんの? 地味子好きなの? あ、何でも言うこと聞いてくれそうだもんねーあはは」


 この顔は写真で見た記憶があった。早川ユメ。総務兼人事兼社長秘書で愛人だ。


「放っといて下さい」


 祐介の声は、初めて羽田に会った時の様な冷たい声だった。

次回はサツキバージョンです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ