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魔術師リアムの中級編初日の夜はおしまい

挿絵(By みてみん)

 食後、蕩けそうになりながら髪の毛を乾かしてもらった後、念願のマッサージなるものをしてもらうこととなった。


 祐介の手は暖かく大きくて、非常に気持ちがいいことが分かった。


「細いねえ。これじゃ肩も凝るよ」

「早くもう少し筋力を付けたいのだがな、疲れが」

「やることや覚えることだらけだもんね、今は仕方ないよ」


 二の腕を揉まれた時は、飛び上がる程痛かった。耳を持ってぐにぐにされた時は、溶けてしまいそうだった。


 今は手のひらを広げて指の腹で押されており、非常に気持ちがいい。


 しかしこのやり慣れた感。一人暮らしの若い男が、何故ここまで出来るのだろうか。少なくともリアムは若くもなかったが出来ない。


「祐介、お前は何故こんなに揉むのが上手いのだ?」


 リアムが尋ねると、祐介はフッと遠い目をした。


「実家にいる時はもう散々家の女性陣に奉仕させられてたからね……」


 元気で勢いのある郁姉を思い出す。リアムもあれには逆らえなかった。そんな隙は一切なかった。なので深く同意する。


「成程、確かに郁姉を見る限り、祐介の家族は女性の方が強そうではあるな」

「もうね、僕奴隷ですか? って位ひたすらこき使われてたから、就職決まってからは飛び出す様に一人暮らし始めちゃった。だから社宅がある会社を選んだんだ。はは」


 何気に苦労してきた様だ。


「まあお陰で女性特有のあれこれは詳しい方だと思うから、今はサツキちゃんのお役に多少なりとも立ってるんだと思うけど」

「本当に、祐介がいなかったら今頃どうなっていたのだろうか……」

「とりあえず電車に撥ねられてるよね」

「はは、生きてもいないか」


 あまりにも気持ち良過ぎて、じん、と変な感覚が襲う。


「横になってくれたら、足裏とふくらはぎやるよ」

「ありがたい、もうあの靴はとにかく足がパンパンになってな」

「サイズ合ってなさそうだよね。また靴屋に近々行こうよ」

「うむ、それは是非頼みたいところだ」


 祐介がソファーベッドをベッドにした所に寝転び、うつ伏せになると、祐介が足首を持った。にこりと笑う。


「! うおおっ! いたっいたたたた!」

「はは、固いねえ」


 祐介が足の裏を押すと、とんでもない激痛が走った。これはいかん、殺されるやつだ!


「やめっ祐介っあっそこはっ」

「サツキちゃん、その声はなしにしようよ」

「無理っだっああっいたっやめ、祐介っ」

「……これが周りに聞こえ……拙いな」


 祐介は足裏を押すのを不意に止めた。死ぬかと思ったリアムは、どうしたのかと祐介を振り返る。


 祐介は不貞腐れた顔をしていた。突然どうした、祐介よ。


「どうした?」

「この家壁薄いから、サツキちゃんの声が周りに聞こえたら嫌だなと思って」

「あ……うるさいか、済まぬ。どうしてもな……」

「そうじゃなくて」


 祐介はふくらはぎを揉みながら続けた。


「その、そういう声だって思われながら他の奴に聞かれるのは、僕が許せないから」

「へ?」

「何でもないです。あ、ここリンパ詰まってる」

「いっっうおおお!」

「そういう声なら大歓迎」


 今日の祐介はやはりおかしい。半泣きになりながらそう思ったリアムだった。

次話はサツキバージョン。

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