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転生先が、悪役アンデッド姫だなんて聞いてない!  作者: 夏野あさがお


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28. レセプション会場



 第1王女と名乗ったエレノア姫は、ほっそりとしていて背が高い女性だった。妹には似ていない細い目を吊り上げて、厳しい口調でオリアナ姫に問う。

「オリアナ! あなた、馬車の手配をしなかったの!? こちらの客人は、宿屋から農耕馬でここまで来られたそうよ。こまごまとした雑事は、あなたの担当でしょう!」

「え? え? あの…、宿屋?」

 オリアナ姫はキョロキョロと私とエレノア姫を見比べる。

 か、かわいい…っ!!

 この戸惑った顔、可愛いわー!!

 顔を動かすたびに、フワフワとしたキャラメル色の髪が揺れる。

 大きな丸っこい桃色の瞳に、小さなピンク色のつやつやとした唇。私よりも小柄で、でも胸は大きく、ウエストは細く、肌は美しい肌色。アンデッドよりは色づいているが、人間にしては白く、瑞々しいきめ細やかな肌で、頬は薄っすらとピンク色に染まっている。胸の前で握りしめている手の指は細くて、思わず両手で包み込んで、守ってあげたくなってしまう。


「まあっ! まさか、そんなことも把握していないの!? こちらの都合で、宿屋へ移っていただいた方がいるのよ。そういった方々のお世話も、あなたの役目なのよ。あなたがミスをすれば、我が国の名誉を傷つけるかもしれない。それを、ちゃんと分かってる!?」

「あの、でも、だって私、何も聞いていなくて…」

 オリアナ姫の大きな瞳に涙が溜まる。


 どうしよう…。泣いちゃうよ? 

 止める?

 でも、エレノア姫は私の為に怒ってくれてる訳だし、この国の内情を私はまだよく分からない。

 あれ?

 ゲームの中で、こんなシーンあったっけ?

 あっ! もしかしてこれって、イザメリーラの登場シーン!?

 あれ? でもあの時は、興奮したイザメリーラがオリアナに向かって一方的に喚き散らしていて、エレノアの存在はよく覚えていない。

 いたっけ…?

 いや、お姉さんがいたのは知ってるけど、彼女がオリアナ姫を叱責する場面は覚えていない。

 あのイザメリーラの登場シーンでは、オリアナ姫に向かって敵意むき出しで意味不明のことをキーキー喚いて血を吐いて、そんな彼女に思いっきりドン引いたんだった。

 本当、気が短い、癇癪持ちの気持ち悪い姫様だよなって。そもそもゾンビが大嫌いだったし。

 でも…と考える。

 アンデッド王国で、大事に大事に育てられてきた箱入り娘のイザメリーラ。だが、この国に来て、1人だけ宿屋へ移れと言われ、その宿屋がおんぼろの小さな宿屋で、しかも翌日迎えが来なくて…。今回、私は一応ギリギリ時間に間に合ったけど、確かゲームでは大遅刻していた。

 どういう手段で移動したか知らないけど、昼を過ぎてやっと到着した彼女に、「何故こんなにも遅れたのだ!」とこの国の国王が怒ったのだ。

 そして、オリアナ姫に向かって逆上、逆切れ、ぶち切れしたのだ。血を吐き散らしながら。

 あの時は、イザメリーラってとんでもない王女だなって思った。

 でも、ごめん。イザメリーラ、悪くない。

 そんな対応をされたのだから、怒って当然だと思う。

 ゲームの中のイザメリーラは頭に血が上り過ぎていて、必死に何か叫んでるんだけど、何を言っているのかよく分からなかったんだよなあ。


 そして、私はオリアナ姫の目線で見ていたから知っている。

 彼女は本当に何も知らされていなかった。イザメリーラが怒る理由が分からず、オロオロするしかなかったのだ。そうだった。やっと思い出したよ。

 とりあえず、エレノア姫を止めた方がいいね。オリアナ姫が可哀そうだ。

 「あの、お待ちください」と、私が口を開いたとき、後ろの扉がバーン!と勢いよく開いた。

 驚いて一同がそこに立つ人物に注目する。


「おいおい、可愛い娘をいじめるんじゃねえよ!」

 そう言いながら入って来たのは、橙がかった金髪をツンツン立たせた背の高い野性的な風貌の若い男性だ。鋭い目つきで会場内を見渡す男の頭には、動物の耳が生えている。

 う、うおっ!

 こ、こいつは…この耳と髪色!

 リパーフ・ベスティア! 攻略対象者の1人、獣人族の王子だ!!

 驚いて目を見開くと、その男性はオリアナ姫を庇うように、彼女の正面に立つ私の前に立ちふさがった。蔑むような目つきで私を見下ろしてくる。

 オリアナ姫の目には涙が滲み、そして、彼女と向かい合っているのは、意地悪で気の強そうな私だ。こいつは私の見た目がこうだから、オリアナ姫をいじめたのは私だと思い込んだのか!?


「ああ、くっさい、くっさい。この部屋の中には、くっさい臭いが充満してるぞ!? おいアンデッド、お前の臭いだろっ!」

 く、くっさい…だとお!?

「な…っ!」

 どう言い返そうかと思っていると、近づいてきたリパーフが体を屈ませて、私の耳、首筋、胸元の順に鼻を寄せてクンクンと臭いを嗅ぎだした。胸元の大きく開いたドレスを着ているため、直接、彼の顔が肌に触れてしまいそうだ。

 私は思わず「ひいぃっ!」と小さな悲鳴を上げた。

 ここまで、かなり急いで来たのだ。きっとたくさん汗をかいてしまっただろう。これでも一応乙女なので、汗くさくなった体の臭いを嗅がれるなんて耐えられない。

 だけど今は、それより何より、ゲームの中のある一場面が頭をよぎり、恐怖に震えた。

 そう! 獣と化したリパーフが逃げ惑う人々の喉元に食らいつき、貪り食う場面が!!

 リパーフのルートで彼は本来のライオンの姿となり、幾人もの人間を食い殺した。そして、イザメリーラもその犠牲者の1人なのだ!

 真っ青になって震える私に構わず、クンクンと臭いを嗅ぎ続けたリパーフは、「ん?」と言って首を捻る。


「どうしたと言うのだ、そんな所に集まって。もう始まる時間だというのに」

 ザッとエレノア姫が横へ移動し、小さく頭を下げた。

 私達の元に歩いてくるのは、オリアナ姫と同じキャラメル色の髪をして、顔に幾本もの皺を刻んだ強面の男性だ。頭には、黄金の冠が乗っている。

「…お父様」

 オリアナ姫の言葉に、私は一瞬固まる。

 男はオリアナ姫の横に並ぶと肩を抱き寄せ、彼女に微笑みかける。そして私に向かって硬い声で言った。

「何があったか知らんが、娘を責めるのはその位にしてもらおう。早々に席に着くがよい」

「え? あの、私は…」

 オリアナ姫を責めたのは私じゃないですよ? どうしてみんな私だと思うの?

 顔? やっぱりこの、意地悪そうな顔のせい!?


 男性は私の言いかけた言葉を無視してクルッと後ろを向いた。会場に集まった者達を一瞥すると、大きく両手を広げた。

「各国の王達よ、よくお集りいただいた! 世界樹の元へと集まった諸君らを歓迎しよう! まずは我が国が誇る宮廷料理でもてなすこととしよう。その味を、存分に堪能されよ!」

 会場中に威厳のある声が響くと、招かれた王族らは大きな拍手で答えた。


 みんなが笑顔の中、私は男の背中を睨みつける。

 この男の名は、ジェイド・ガルブレイス。

 オリアナ姫の父親で、このはた迷惑な交流会を開いた張本人、神樹レスポート王国の国王だ!

 まったく、この王様の思い付きのせいで苦労させられているんだから、恨みがましい目で睨んでしまうのは、しょうがないよね?

 なんて思って睨んでいたら、王が振り向いてこちらを見た。

 私は慌ててにっこりと微笑む。

 オリアナ姫をいじめてないって今さら主張する必要ないよね?

 会話は最小限にして、さっさと私のことなんて記憶から消し去ってもらいたい。ただでさえ敵が多くて問題が山積なのに、これ以上問題が増えたらたまったもんじゃないから。

 困ったときには日本人の得意技、にっこり笑ってごまかしておこう。

 微笑み顔を作って軽く会釈をすると、係りの者に案内してもらい席に着く。

 視線を戻すと、リパーフと王がまだジッとこちらを見ていた。

 あっ、ヤバい。ちゃんと挨拶をするべきだったか?

 今から戻って挨拶するか?

 私が腰を浮かせると、二人はクルリと背を向け、それぞれ別の方へと歩いていった。

 ホッ。ちょっと焦ってしまった。


 それにしても…と、会場内を見回す。 

 案内された席は、やけに暗い。このテーブルだけポツンと1つ、他のテーブルからはずいぶんと離された会場の隅っこに置かれている。会場内にはロウソクが何十本と立つ大きなシャンデリアがいくつもぶら下がっているのに、この付近には明かりがなく薄暗くて、同じ部屋の中に居ながら、まるでここだけ切り離され、隔離されているかに感じる。

 まあ、でも、別にいいや。

 暗いほうが他のテーブルからは見えにくく、反対にこっちからは良く見える。集まった人たちを観察するなら、この席はもってこいといえる。

 そうだ! まずは、マテウスはどこにいるのかな~っと。

 会場の中央辺りは、やけにキラキラしい人たちが集まっているみたい。もしかして、あそこ? マテウスもキラキラ系だし。


「災難だったわね」

 私のすぐ近くで声がして、驚いて声のした前方を注視する。

 えっえっえっ、どこ!?

 薄暗い中、金色の2つの光に気づいた。

 だんだん暗さに目が慣れてくると、褐色の肌と長い黒髪を持つ野性的な美女が、濃紺色のドレスを着て私と同じテーブルの正面に座っているのが分かった。金色の光は彼女の瞳であった。


「ごめんなさいね、あんな無作法者で…。彼には後で厳しく言って、二度としないよう躾けておくから」

 申し訳なさそうに美女は言った。

 彼…? 

 はて、この女性はどなたでしょう?

 注意深く観察すると、彼女の頭には黒い毛で覆われた動物の耳が!

 うわ~、気付かなかった。

 ホント、この暗闇、何とかしてもらえませんかねえ? 正面に座る人の顔や頭もよく見えないなんて。

 それにしても、この容姿…。会ったことはないけれど、知識として1人心当たりがある。


「もしかして、シュレイ様ですか?」

「ええ、イザメリーラ様よね! 会えて嬉しいわ! 私、あなたに会うためにここに来たのよ!」

 シュレイ様は満面の笑みで立ち上がって手を伸ばしてきた。私も立ち上がり、その手をしっかりと握る。

「私も会えて嬉しいですわ! お手紙なら何度もやり取りいたしましたけれど、こうしてお会いするのは初めてですわね。なんだか不思議です!」


 彼女の名前はシュレイ・ベイトソン。獣人族が住む国ベスティア王国の公爵家の娘だ。そして先程、私を「くさい」と言い、においを嗅ぎまくったとんでもなく失礼で恐ろしい男=リパーフのいとこで、彼の婚約者だ。

 どうして私と彼女が知り合いなのかというと、それは私が攻略対象者の周りにいる人達に、手当たり次第にバラ製薬の製品を送りまくったからだ。彼女は私が送った製品を使ってくれて、お礼の手紙をくれた。

 彼女は幼い頃から、獣人族には珍しくとても肌が弱く、些細なことですぐにかぶれて赤く腫れあがったり、獣の姿になった時も毛がまだらに抜け落ちたりと、肌のトラブルに悩まされていたらしい。

 昔、スティーバさんは獣人族には私の作った薬は売れないだろうと言っていた。

 確かにベスティア王国内では、あまり需要がないようだ。だから、スティーバ商会はベスティア王国内での販売はしていない。

 でもごくまれに、獣人族であっても薬が必要な者がいるらしい。それが、たまたま彼女だったのだ。

 私が送った薬で、彼女の肌はずいぶんと改善したと手紙で教えてくれた。それからは彼女に直接、必要分だけ販売している。

 しかし、私が初めて彼女に薬を送った時は、彼女はまだリパーフの婚約者候補で、婚約者ではなかった。それが約1年前、正式に婚約者となり、今こうして国際交流会で会うことが出来た。私の「薬を送って繋がりを持つ」作戦は、成功したと言えるんじゃないかな?


「手紙にも書いたけど、私、あなたから薬を初めてもらった2年前には、本当に酷い状態だったの。獣人たちは薬なんてほとんど使わないから人間の国から取り寄せて、あらゆる薬を試したのよ。でも、効果が薄くて、すぐに元の醜い肌に戻ってしまうの。でも、駄目で元々と思って使ったあなたの薬で、みるみる良くなっていったのよ! まるで魔法みたいに! ああ、こうして会って、直接お礼が言えるなんて、夢のようだわ!」

 シュレイ様は興奮が収まらず、椅子の上でお尻を弾ませる。

「それに、イザメリーラ様は私の想っていた通り…」

「え?」

「いえ、思っていた以上だったわ」

 シュレイ様はうっとりとした瞳で私を見つめる。

 んん? なにが?


 グラスに飲み物を注ぎ終わった給仕の男が、薄暗いテーブル席に座る私達にやっと気付いて、慌ててシャンパンを注ぐ。  

 ジェイド王が壇上に現れ、彼の掛け声と共に一斉にグラスを持ち上げ口を付ける。

 へえ、この世界にも乾杯みたいなものがあるんだ。アンデッド王国にはなかったなぁ。他国のパーティーに参加するのは初めてだから、恥をかかないようにしないと。

 乙女ゲームの中では、重要なとこ以外は出てこなかったから、知っているようで知らない事ばかりなのだ。

 

 それから運ばれてきた料理を食べながら、シュレイ様とお話をした。

 2年前、この容姿では嫁の貰い手がないと親に泣かれていたシュレイ様は、1年間薬を使い続けてすっかり肌が美しくなり、今では国1番の美姫と呼ばれるようになったとか。

 婚約者候補から正式な婚約者となれたのも私のお蔭だと、改めてお礼を言われた。

 いやあ、そんなに喜んでもらえると、送って良かったと本当に思うよ。

 堪え切れずニンマリと口元がにやけてしまう。

 人の役に立って感謝されるのって、私にとって一番嬉しいことなんだよねえ。

 ただ、ちょっと後ろめたい思いもある。思いっきり打算に満ちた贈り物だったからね。

 あれ? でも薬のおかげで婚約者になれたってことは、もしかしたら、乙女ゲームの中の交流会に、シュレイ様は参加していなかったのかな?

 そういえば、リパーフ王子の婚約者なんて登場しなかったような…?


 次々に運ばれてくるコース料理は、前世のフランス料理に近い。だが、うーん、いまいち。

 味が、全体的に薄い。

 香辛料の種類が少ないのかな? 味に変化がない。

 他国の料理をあんまり知らないけれど、シンマーに会いに行った時に食べたライツェント王国の料理は、庶民も行くお店だしそうお高くなかったけど美味しかった。

 そういえば、宿屋の料理も味が薄かったし、この国の人達は薄味が好きなのかもしれないね。

 周りを見回してみても、みんなおしゃべりしながら淡々と食べている。料理に文句を言う人もいなければ、喜んで賛辞を贈る人もいない。

「いまいちね…」

 分厚いステーキをむっしゃむっしゃと頬張りながらシュレイ様が呟く。

 ああ、やっぱり?

 

 2時間ほど経ち、ある程度お腹が膨れた時、ジェイド王が会場の中央に現れ、またも手を広げて大きな声を上げた。

「我が国自慢の料理を堪能された事と思う! ここからは自由に席を立ち、互いに交流を深められるがよい!」

 彼はそう言うと、会場内の一段上がった所に置かれた金の装飾がコテコテと豪華になされた椅子に腰かけた。

 前方に置かれたテーブルに座っていたどこかの王らが席を立ち、ジェイド王の前へと進み出た。そして、ジェイド王が座る下の段から挨拶をし、それにジェイド王が返す。

 なにこれ!?

 これじゃあ、まるで臣下が王に挨拶に来てるみたいじゃないの!

 そして、挨拶をするどこぞの王の後ろに、ぞろぞろと各国から集まった王や王子らが並ぶ。

 うげ。これ、私もやんなきゃいけないパティーンだね。あはは…

 ま、私はいいよ。やるよ。世界の中でも底辺国、アンデッド王国の王女ですからね。 

 …ということは、マテウスもやんなきゃいけないわけか。

 だいたいさあ、婚約者と来ているのに、テーブル別々ってどういうわけだ!?

 今さら気付いて、マテウスの姿を探す。

 うーむ、中心の辺りはやけにキラキラしていて、眩しくてよく見えないんだよね。

「何を探しているの?」

 シュレイ様に尋ねられ、婚約者を探しているのだと返す。

「ああ、それだったら、リパーフと同じテーブルよ。中央の大きなテーブルに、オリアナ姫たちと座っているわ。他の王子たちも一緒よ」

 やっぱり、あそこか! 予想通りだ。

「まあ、ありがとうございます! ここから見えているんですか?」

 シャンデリアの明かりと、集まる人たちのキラキラでかなり見づらいのに。

「ええ、視力がいいもので」

 金色の瞳を細めて頷く。

「なので、さっきから余計な物が見えて仕方がないわ。あのテーブル、女性はオリアナ姫1人で、後は全員独身王子たちなのよ。みんな彼女に取り入ろうと必死のご様子で。その中でも一番積極的なのが~!」

 美しいお顔の額に青筋が浮かぶ。

 あ、そういやあ、攻略対象者の中で一番積極的にオリアナ姫に迫ってたのって、確か…

「我が婚約者様ですわっ!」

「あ、あら…」

 そうだった。

 婚約者がいても同じなのか。


 しかし、怒りの表情から一転、シュレイ様は憂いを帯びた顔でため息をついた。

「でも、仕方がないですわね…。彼は、ベスティア王国の王太子ですもの」

「え? 仕方がない…とは?」

「だって、ベスティア王国は一夫多妻制ですもの。特に王となる者は、どれだけ大勢身分の高い妻を持つかで、己の権威を示すのですから」

「ええっ! 一夫多妻制!?」

「ええ、ご存じなかったですか? だから、オリアナ姫を娶ることが出来れば、彼の王国での地位は盤石のものになりますわ」

 そうだったんだ…。一夫多妻。調べておいたはずだけど、すっかり忘れてたわ。

 じゃあ、正式な婚約者がいても、彼のルートは潰れてないんだ…

 ズーンと重たい気持ちになった。


「あら、みなさまご挨拶が終わったようよ。私達も行きましょう、イザメリーラ様」

 シュレイ様に促され、彼女の後に続いてジェイド王の前に進む。

「ご招待ありがとうございます、ジェイド王」

 自己紹介に続き、シュレイ様が貴族の礼を取りながら王に挨拶する。

「うむ、よく来た」

 彼女が脇へ移動したので、続けて私も挨拶をした。

 王はマジマジと私を上から下まで、何度も目線を往復させて見つめてくる。

「まあ、ゆっくりしていくといい」

 頭を下げて、薄暗いテーブルへと戻る。

 はあ~、この席落ち着く。

 最初はのけ者にされてるみたいで気分悪かったけど、ずっとこの席でいいや。


 私達が席に戻ると、ふいに後ろから声を掛けられた。

 驚いて見上げると、そこには王子然とした長身のスラリとした美しい男性が立っていた。そして、背中には黒い羽。

「あ…あなたは!」

「初めまして。私はガオザン・ポイフェイ。弟がずいぶんと世話になったようだね。君にはぜひ1度会いたいと思っていたんだ」

 優しい言葉と笑顔を向けられた。

 しかし、細められた紫の瞳は少しも笑っていなかった。




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