浅田の跡
形ではない、浅田の熱い想いが、未だにこの刀に染み付いて、独自の空気を周囲に放っているように見えた。
僕は一つの決心をする。
浅田の想いを受け継いで、この刀を使う。
この浅田の刀に自分の能力を込めて、そして、練り上げ、今度は浅田のような人間を守れるように、強くなっていこうと、心の中に誓った。
僕はとりあえず、実家に帰る事にした。
浅田が帰るなとは言っていたが、浅田が居なくなった今、僕の居場所は実家以外に考えられない。
浅田の家で一人で暮らすのも、浅田の事を思い出してしまって辛いのだ。
電車を乗り継いで、しばらく歩いて実家に帰る。
家に入って、居間の扉を空けると、妹のあきらが何か手帳のような物に目を落としていた。
全てに失望しているような動きで僕の方を見ると、目の色を変える。
「あ……あ……」
持っていた手帳を太股の間に落として、肩を震わせて、瞳が潤む。
「け、けんっ兄……」
「あ、あきら」
あきらは椅子から転げ落ちて、手と膝で歩いて僕の方に来る。
「あきら、メイドカフェいけなくてごめん」
あきらは僕の足を伝って立ち上がり、僕の胸に抱き付いてきた。
「そ、そんな事いいよ、もう……」
僕は涙声になっているあきらの頭を撫でてやる。
「少し痩せた?」
僕が聞くとあきらは僕の胸から顔を離して、涙と鼻水で濡れた顔を笑わせて言った。
「かなり痩せたよ」
「そっか」
「うん」
あきらは安堵しきったような顔をしていた。




