真価
とてつもない力の衝突によって、空気が振動し、視界を遮るほどの砂埃が舞った。
「らあああああああああああ」
という鬼の唸り声の影に、浅田の
「おっおっおおおおおおお!!!」という地鳴りのような声を、僕ははっきりと聞き取った。
音が止み、砂埃が晴れると、そこには鬼の姿も浅田の姿も無くなっていた。
僕は何か、空っぽになったような気持ちでその場所を眺める。
少しずつ歩いて行って、浅田が本当に居なくなった事を確認する。
それでも、僕の心の中は、何も感情が湧かなかった。
晴れ渡った空を見上げて、浮かぶ雲を見つめていた。
僕は浅田との目まぐるしい日々の中で、いつしか重力を扱う事を忘れていた。
いつの間にか、浅田を師匠のように感じていて、そして、僕と浅田では能力の特性が違っているのに
浅田の能力に対して効果的な能力の訓練を、自分の能力に最適な訓練だと錯覚してしまっていた。
浅田の肉体強化の能力と、肉体の鍛錬は最高の相性だ。
いくら鍛えても、肉体強化の能力から際限なく、少しずつ能力の最大出力が強くなって行く。
強化能力に限界が来れば、能力抜きで肉体を鍛錬して、そうすると強化能力を使った時の肉体の強さの最大値が上昇する。
そして肉体と精神が強くなればまた強化能力も強くなる。
生身の能力に壁を感じれば、少しだけ能力を使って感覚を掴み、そしてそれを生身でできるように移行して行けば良い。
しかし、僕の体の鍛錬には限界があった。
能力を持ってはいても、肉体的には凡人である僕が、必要以上に肉体を鍛錬しても意味が無い。
自分の最大値まで精神と肉体を鍛えあげた後は、能力その物の強化に集中するべきだったのだ。
僕は今更ながらそれに気が付いた。
浅田が去った、今更気が付いた。
浅田が残した日本刀は、形にならない情熱を纏っている。
どことなく、何かが、ただの物とは違っていた。




