第二十話 あしのこ
温泉の外に出た僕らは、そのへんで買ったアイスをほおばりながら箱根を散策する。
「なあ、少年。あの山に行ってみないか?」
「いいですね、でもどうやっていきましょう…」
そう悩んでいると、この先の突き当たりに、登山鉄道なる文字が見えた。
「おお、アレに乗ったらいいんじゃないですか?」
「おお!都合よくあるじゃないか」
その駅に入ってみると、ひどく斜めっているような電車が停車していた。こんな電車もあるのかと、少し感心した。
「こんなへんてこな電車があるとは…世界は広いねえ、少年」
「びっくりですよ、なんせ初めて見たのですから」
僕らが乗ってしばらくすると、その電車は大きな音を立てて動き始めた。窓から、外の寂れた景色や、美しい自然のようすが流れていく。
「こんな電車もたまにはいいね」
「ええ、なんか面白いです」
少しそのなかでのんびりしていると、「ゴウラーゴウラー」と、アナウンスが聞こえる。
「ここでおりようか」と、コトハさんが言う。
僕は箱根の土地は結構知っているが、この強羅という場所は知らない。
しばらく駅の周りをウロウロしていると、なにやら美しい公園を見かけた。真ん中には巨大な噴水があって、その周りに薔薇が植えられている。
「おお、なんかおしゃれだぞ、少年」
「ですね、なんか言語化しづらいけど、とりあえずおしゃれなことはわかります」
しばらく公園でゆったりして、ケーブルカーに乗ることにした。
「ケーブルカー…初めて乗るよ。」
「まあ、さっきの電車とあんまり変わらないと思いますよ」
そんなことを話している間に、ケーブルカーが着いた。
「確かに、さっき乗ったものとあんまり変わらないな…」
「でしょう!」
僕は自慢げにそういった。言った後で気づいたのだが、そこまで自慢できるようなことを言っていなかった。
ケーブルカーに乗って、早雲山に着くと、すぐに僕たちはロープウェイへと乗り換えた。
「ひええ、少し小さくて怖いね…しかもすぐしたがよく見える。私は高所恐怖症なんだよ」
「なんでジョットコースター好きで高所恐怖症なんですか」
「それら2つは同時に成り立つのだよ、少年」
「ほんとかなあ…」
コトハさんの理論は、毎回あんまり説得力が無い…
したをよく見てみると、崖が広がっている。煙のようなものも見えるから、温泉がわき出ているのだろうか…
そして遠くへと目をやると、遠くには日本最高峰、富士山が見えていた。その光景は、僕をある意味縛っていた故郷、大阪から離れたのだと強く実感する。
そんな事を考えている間に、ロープウェイは、桃源台駅へとついた。こっから芦ノ湖にも行けるらしい。何だがテンションが上がってきた。
桃源台駅へ降り立ち、改札をくぐると、まるで僕はアニメの世界に入ったように感じる。ここは、よく乗り換えに使われていたと記憶している。
「いやはや、そんなに興味深そうにあたりを見る少年は初めてみたよ」
「箱根はずっと行ってみたかったんです。そりゃ興味はたくさん出ますよ」
そうしてひとしきり見たあとは、芦ノ湖に向かって歩いていく。
芦ノ湖までの道は少々荒れていたが、特段気にならなかった。
「はあ、こんなに森があるのはこの時代に中々珍しいな」
「ですねー。空気もこころなしか澄んでいる気がしますし…」
そうして少々歩いていくと、とうとう芦ノ湖へついた。ああ、ここがあの決戦の地なのだと思うと、何だが感慨深い。
芦ノ湖は綺麗に澄んだ湖であり、琵琶湖しか湖を見たことのない人間にとってはある意味とても刺激的である。
「おお、こんなに湖とは綺麗なものなのか」
「ここが綺麗なだけかもしれませんよ。だって琵琶湖は汚かった」
コトハさんは軽く笑った。
「はは、それもそうだったな」
そうして僕らは近くのベンチへと腰掛け、芦ノ湖とその後ろにある二子山を見ながら、ひたすらぼーーとする。時刻はすでに17時になってきていて、夕暮れの日が芦ノ湖に反射していて、何だがとてもきれいである。




