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プロローグ

 先に説明しておくと、私は現代日本から神様に誘われて転生をして、チート能力を手に入れた。

 どんな能力なのかといえば、保持する魔力の量によって毎月お金が支給される世界で、滅茶苦茶な魔力量を誇るのだ。


 どう? 最強でしょ? チートでしょ?


 幼い頃に魔力を測定したら飛び出した値に、両親の目ん玉は飛び出して。一夜にして私が家族を養う有様に。


 ……といったことはなくて、子供の将来の心配をしなくてよくなったと、肩の荷が下りた両親と仲睦まじく暮らし、そうして私は十六歳になる年を迎えた。


「かんぱーい!」


 乗合馬車にて。私は幼馴染の二人の女の子と一緒に、それに載っていた。


 この世界では十六歳になる年に旅に出る、と決められていて、最低でも一年の間は世界を巡らなくてはならない。


 その後に、親が行う家業を継ぐこともあるし、全く別の仕事を始める人もいる。旅を続けることも自由だ。


「トウカは、まず何処へ行くのか決めたのかしら?」


 話を振られて、私はうーんと唸って考える。


「領主の娘さんのアキナは、やっぱり家を継ぐために見聞を積むの?」

「さぁ、まだ判りませんわ。けれど、立派な人物になれるよう。研鑽を積むつもりですわ」


 自信満々な表情に見惚れてしまう。


「ハルコは?」

「ボクはとりあえず、お金を稼がないとなー。二人みたいに魔力量に余裕があるわけじゃないし、良い装備を買えるような余裕はなかったしさ。目指すは商人であーる。なんてね。あ、施しはいらないよ。癖になっちゃうからねっ!」


 朗らかに笑う彼女は、そうやって謙遜はするけど実力は折り紙付きだ。財力を見せつけるように高価で高性能な装備を身に纏う私とは違って、彼女はなまくら刀でも魔物を討伐してみせる。


 大量の魔力を使用するような、高性能な武器を使って敵を殲滅する私とは違って、その辺にあるものでも充分に戦えることが彼女の強みだ。


「そんな事言って、ハルコは傭兵としてもやっていけそうだよね。襲いかかる魔物の群れから街を守るの! 羨ましいなぁ。私なんて魔法を使うと滅茶苦茶な魔力の影響で広範囲に効果が及ぶから、絶対に人に迷惑をかける」

「あはは、ボクら以外が聞いたら嫌味に聞こえるセリフだ。友人としての忠告。気を付けなね?」

「はーい」

「ふふっ。いざとなったら、わたくしが護って差し上げますわ」


 そうならない様にがんまりまーす。と、私は竹筒に入ったジュースを煽った。

 私たちの出身地である村が誇る、自慢のサトウキビジュースだ。しばらくは味わえなくなるだろうからと、みんな揃って買った、お揃いの味。


 口に含むだけで、なんだか笑顔になってくる。


「なんだー、ニコニコしちゃって」


 私たちが座るのは、一番後ろの席。私は二人の間に挟まれている。ツンツンと、ハルコが私の頬をつつく。


「サトウキビジュースと一緒に、楽しかった日々が思い起こされちゃったの」

「学校でのことですか?」


 この世界には、魔物と呼ばれる凶暴な生物がいることを学んだ。ダンジョンと呼ばる魔物の巣があることも学んだ。


 人間の中には三つの種族がいて、魔法があって、魔法で作られた武器があって。


 夢にまで見たファンタジー世界を冒険する日を夢見て、私は常々、胸を躍らせていたのだ。


「みたいだねー。耳がピコピコ動いている。あはは、まさしく好奇心旺盛な猫ちゃん」

「ハルコはネズミちゃん」


 テーマパークのカチューシャみたいな耳が可愛らしい。


「ボクとしては、アキナの垂れた犬の耳が可愛いと思うけどねぇ」

「ふふ、ありがとうございますわ」


 獣の耳が生えた人がいて、体中に紋様が浮かぶ人がいて。さまざまな人が暮らすこの世界で、私は冒険に旅立つ。


「二人といつまで一緒に居られるか判らないけど、楽しい旅にしようねっ!」

「あ、わたくしは次の駅で降りますわ」

「ええっ!?」

「じゃぁボクも」

「ええっ!? じゃ、じゃあ私も降りるっ!」

「あはは、冗談だよ。最初の目的地は、トウカの好きなところに行く約束っ!」

「そうですわ。ちゃんと付き合いますとも。だって私たちは――」


 幼馴染だからっ!


 もう一度乾杯をして、サトウキビジュースを味わった。あの村から旅立つのは、私たちだけ。だからしばらくは、この馬車は私たちだけのもの。


 それがきっと、子供でいられる最後の時間だ。

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