荒鷲団、危機一髪☆ 我らが暁光帝は大切な仲間を救えるのか!?
フォモール族が大暴れ!
平和な街が荒らされて、住民が困っています。
いや、困るどころか、命の危険さえあるのです!
大変です。
冒険者パーティー荒鷲団とお金持ちのおっさん達が何とかフォモール族を食い止めていますが、それもいつまで保つか。
城の兵士達が来るまで保つのでしょうか。
この危機に我らが主人公、暁光帝♀は!?
あ、人間達に騙されていい気分に浸ったまま突っ立ってますねwww
為政者達は住民の生命よりも暁光帝♀の被害を懸念しているのです…何という理不尽!
これも政治の腐敗なのでしょうか(>_<)
いえ、実際、暁光帝♀が顕現しちゃうと街が滅んじゃいますからね。
仕方ありませんね(ToT)
さぁ、この理不尽に我らが主人公、暁光帝♀はどう立ち向かうのでしょうか。
お楽しみください。
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凶悪な怪物どもの襲来で平和な浜辺には阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。
「うわぁっ!! 誰かっ!! 誰か、助けてくれぇーっ!!」
でっぷり太った中年男が悲鳴を上げていた。
水玉模様の海水パンツと肥えてたるんだ腹、みっともない悲鳴だが、生命の危機に陥っていることは明らかだ。
焚き火の跡からだいぶ離れてはいたが、未だにアスタが警戒を解いていない歩く手首の異形妖族が金持ちの男を追い詰めていたのだ。
短い2本足の上にアンバランスな巨大手首が乗っている。手のひらの中央には牙の生えた口が覗き、ボタボタと涎を垂らしながら男に近づいて行く。
人差し指と薬指の先に開いた目玉は金持ちの男をしっかり見つめているから怪物が空腹を満たそうとしていることはわかりやすい。
「いひぃっ!! お助けぇっ!! 食われちまうよぉっ!!」
更に情けない悲鳴を上げるものの、この浜辺に哀れな男を助けてやれそうな者はいない。
荒鷲団は双頭の巨人フォモール族に掛かりきりだし、他の海水浴客達は大頭フォモール族への対応で精一杯。ナンシーはアスタを守って身構えており、当のアスタは観察するだけで男を助けてやる気配はない。
「むぅ…こればかりは助けようが……」
ビョルンは歯噛みするしかない。
悔しいが、現状の戦力は限られている。自分の魔法は光の精霊魔法と回復魔法だけで、学者らしく戦いは苦手だ。
金持ちの有力者を失うのは手痛いが、ここでアスタに動かれる方が恐ろしい。
万が一、『じゃあ、あのおじさんがかわいそうだから助けてくるねー♪ 人化を解除ぉー!』とかやられたら、その瞬間に街が終わる。暁光帝が現われて、あっという間に博物学者も妖精人も踏み潰されてしまうし、ついでに助けるはずの金持ちの有力者も消し飛ぶ。
あくまでも可能性の話だが。
もしかするとアスタは人化を解くことなく、そのままの姿でフォモール族を圧倒してくれるかもしれない。
逆に同じ幻獣であるフォモール族の味方をして金持ちの男を一緒に頭からボリボリ食べてしまうかもしれない。
そう。あくまでも可能性の話だ。
しかし、そんな可能性は試せない。
そんな危険は冒せない。
だから、見捨てる。
巨腕の怪物に狙われている有力者は金払いのいい男だった。
優秀な冒険者の仕事には惜しみなく報酬を支払う、とても立派な人物だった。
惜しい人間を亡くした。
「うぅ……」
すでに諦めて泣き出すビョルンの前から奇怪な言葉が聞こえてくる。
「Re=ρND²/μ」
常人が聞いたら意味不明の言葉。
だが、博物学者にはわかった。
風の精霊魔法を発動させる凝縮呪文だ。流暢な妖精人語は母国語だからだろう。
「ナンシーさん!?」
驚いたビョルンが声を上げる。すでにエルフの背後には浮遊魔法陣が発現していた。
「空気爆弾!」
ナンシーが携帯用魔術杖を振る。
ボシュゥッ!!
魔力が時空間に作用して現実を歪め、超圧搾した空気の塊を怪物に押し付けて。
バァン!!
盛大に炸裂させた。
「グギャァァァッ!!」
絶叫上げて倒れ、苦痛にのたうち回る巨腕の怪物。分厚い皮膚も空気で強かに打たれて青黒く内出血している。
「うわゎっ!? これは…いや、チャンスなの…か!?」
倒れたフォモール族を前に、追い詰められていた男は大あわてで逃げ出す。
とりあえず、危機の1つは去ったようだ。
「グギィィ……」
歩く手首のフォモール族はもう歩けないし、起き上がれない。苦悶の呻き声を上げ、転がっている。
「こ、これは……」
博物学者は唖然としている。
限られた戦力の1つ、ナンシーが戦闘に参加してしまった。
これの何が不味いのか。
思考をまとめる前に。
「ごめん。お得意さんが危機だったからつい…後、魔力がほぼ尽きちゃったわ」
エルフが行動の動機と状況を説明してくれた。
「それは…まぁ、お得意さんでは仕方ありませんね」
ビョルンも理解を示す。
あの金持ちはしばしば冒険者を雇って仕事をさせていた。ナンシーも冒険者パーティー“紫陽花の鏡”のメンバーだ。金払いのいい得意客が危機に陥っていたのだ、仕方あるまい。
それは助けもするだろう。
しかし。
「魔力切れというのは?」
心配になって尋ねる。
ナンシーは超特級魔導師であり、単独で非常に強力な魔法を放てるほどの魔気容量を誇る。エアリアルボム程度、中級の精霊魔法を放ったくらいで魔力切れを起こすはずがないのだが、どうしたことだろう。
「さっき、話したでしょ。エライヒトのドラ息子どもを黙らせるのに最大級の風魔法を使っちゃったのよ。それで魔力を切らしかけてたところへ今、エアリアルボムを撃っちゃったからもう空っぽ。しくじったわー」
顔をしかめるエルフ。
何が問題か。
最後の切り札である自分がこの緊急時に魔力切れを起こしてしまったら、博物学者に切れる手札がずいぶん減ってしまうのだ。
残るは荒鷲団の3人と下級の魔法しか放てないナンシーだけだ。
何とも心もとない。
「むむむ…こうなると荒鷲団に頑張ってもらうしかないんですが……」
ビョルンは胃が痛くなる。
どんなに急いでも城から兵士を寄越してもらうにはまだまだ時間がかかるだろう。
「厳しいかもしれませんね」
今のところ、人死には出ていないが、それも時間の問題かもしれない。
龍の巫女クレメンティーナがいれば一瞬でフォモール族どもを撃退してくれるだろうが、いつ戻ってくるのやらさっぱりわからない。
アスタがフォモール族と戦ってくれればこれまた一瞬で解決するだろうが、そうなったら同じく一瞬で瓦礫街リュッダが終わりそうだ。
この2人に頼れない以上、荒鷲団と出涸らしエルフに働いてもらうしかない。
「魔力回復薬は?」
「1本しかないわ」
「むぅ…」
エルフの切り札について尋ねてみると何とも心もとない返事だった。それをつかえば魔力が回復するから、この出涸らしエルフだってもう一発くらいはエアリアルボムが放てるだろう。
けれども、それを使ってしまえば本当に戦う手段を失ってしまう。
敵の一体は倒したものの、息の根までは止めていない。海から上がってきたフォモール族はこれで残り3頭。しかし、敵の増援がないとは言い切れないし、よしんば、荒鷲団が1頭を仕留めても残る2頭がどう動くのやら。
現在の状況が流動的であることを考えれば、ここで切り札を切ってしまうことは危うい。
「どうしたものか……」
思い悩む。
たった1本の魔力回復薬を飲んでもらい、ナンシーに戦ってもらうか。それとも温存して戦況の変化に備えるか。
悩んでいると。
「どうしたの? 何か、問題かな? このブタよりも小さいボクが助けてあげようか?」
ナチュラルに偉そうな童女の声が聞こえてきた。平らな胸を思いっきり張って自信満々で尋ねてくる。
「あっ、その、えーっと……」
とっさの問いに答えられず、しどろもどろする博物学者。思いっきり、目を泳がせている。
情けない学者である。いや、学者は情けなくてもいいのだが。
領主の懐刀としては駄目だろう。
「アスタさんは今、守られているのですから」
エルフがサラッと流して前に出ると。
「何もしてはいけませんよ」
スッと手を後に回してアスタを制する。
一言も嘘を吐かずに、童女の動きを制限しつつ、フォモール族から守るふりをしてみせた。
さすがは長く生きてきた不老のエルフ、実に見事な手際だ。
「うむ、うむ、うむうむうむ! そう言えばそうだったね☆」
守られているという感覚が新鮮で実に楽しい。うなずくアスタは上機嫌で悦に入り、両手を腰に当ててふんぞり返る。
「そ…そうですね。美女に守られるお姫様はおとなしくしていなければなりません」
嘘を吐かずに童女を騙すナンシーの手管におののきつつ、ビョルンはエルフの言葉に倣って諭す。
何でもいいではないか。
完璧に騙されている童女が上機嫌なのだから。
「残るフォモール族は3頭。海水浴客の皆さんと荒鷲団の3人に期待しましょう」
指揮官が動じてはならない。自分も冷静なふりをする。
「グワァッ!!」
強敵、大頭のフォモール族はでっぷり太った男達が必死で牽制している。あの怪物は頭こそデカいものの、脳みそは小さいようで、金持ち達がローテーションで囮役を演じていることに気づかない。
「くっ、きついですね!」
「アンタは休んでろ!」
「やーい! 頭でっかちの化け物め! この私がお前をぶちのめしてあげますよ!」
上流階級のおっさんどもは利己主義者ではない。しかも博愛精神に富んでいるらしく、一人が疲れ果てる前に別の男が怪物を挑発して囮を引き継いでいるのだ。
妻や子供達の前で恥ずかしい真似をしたくないのか、それとも、行き過ぎた利己主義が今後の商売に差し支えると思ったのか、おっさん達は必死で頑張る。
「ふぅん…人間の習性は面白いなぁ……」
隣でアスタがしきりと感心している。
歩く秋刀魚のフォモール族はおとなしく地面に落ちた食べ物を広い漁っている。次の屋台をチラチラ見ているようだが、店員はすでに逃げ出して無人だ。こちらは人的被害を出さないだろう。
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一方、少し離れた浜辺では荒鷲団も奮闘している。
ドッガァーン!
海岸では双頭の巨人フォモール族が連接棍棒を叩きつけて轟音を響かせている。
「まだかっ!?」
「もう少し!」
ハンスが尋ね、キャロルが答える。
2人は懸命に怪物の動きを押さえていた。
正直、きつい。
武器は貧弱、鎧はない。今は水着だから素肌がむき出しだ。メンバーは半分の3人が欠けていて冒険者パーティーとしては非常に心もとない。
怪物の連接棍棒をまともに喰らったら即死だろう。
それでも、自分達の背後には守るべき無力な人々がいるのだ。
ハンスが近づいて巨人の右の頭を引きつけ、キャロルは左の頭に石礫を放つ。
「ウガァッ!!」
青白い禿頭から湯気を立てんばかりに怒るフォモール族だが、頭は2つでも身体は1つ。右の頭がハンスを叩こうとするとキャロルが左の頭に石礫を打ち込むので痛む。そこで左の頭がキャロルを追うと右腕をハンスに切りつけられてこれまた痛む。
「グギギギギ!!」
怪物は思い通りに動けず、悔しげに唸る。
今の所、時間稼ぎは上手く行っているが。
「畜生! 息が切れるぜ!」
先にハンスが音を上げた。
遊撃士ハンスは戦士としても魔導師としても斥候としても中途半端だ。それは仕方ない。そもそも、“遊撃士”という役割そのものが“とっさの代用”なのだから。
戦局が激しく移り変わる冒険者の戦いの中で臨機応変に専門職の役割を補う、それが遊撃士なのだ。
今はこの場にいない獣人の戦士マイケルの代わりに怪物を引きつけているわけだが、装備も技量も筋力も足りない。
つまり、弱っちいのに無理して巨人に立ち向かっている状態なのだ。
それはもう体力も気力も尽きかけている。
「私が引き付ける! “強化パンチ特級”を!」
キャロルが起死回生の策を提案するも。
「すまねぇ! 魔法陣を描いた紙も魔術指輪も置いてきちまった!」
ハンスは残念な回答を返すことしかできない。
「ちぃっ!」
何とか、『畜生!』の言葉を呑み込んだ童人。『使えないわね!』と罵りたかったが、それはわがまま。海水浴に仕事道具を持ってくる奴はいない。たとえ冒険者であってもだ。
ハンスが得意技を使えなくても仕方がない。むしろ、小型丸盾やショートソードを持ち歩いてくれたことを感謝せねば。
「ハァハァ…」
極度の緊張が続き、肉体を酷使しすぎて、ハンスは息が切れつつあった。せめて回復魔法で体力を補えればいいのだが、道具がないからそれも無理。非常に厳しい状況だ。
しかし、ちょうどその時。
「グギャッ! 間ニ合ッタ! 魔法ガ行ケル! 開ケロ!」
しゃがれたビ・グーヒの声が聞こえて。
「遅ぇぞ!」
文句をつけながらハンスは下がって、敵に通じる射線を開ける。
「グォッ!?」
双頭の怪物は目を見開いて侏儒を見つめる。幻獣は魔法に敏感だ。自分を狙う炎の精霊魔法に気づいたのである。
「今更、気づいても!」
キャロルが睨む。
「炎の矢!」
すでにビ・グーヒの足元に描かれた魔法陣から魔力場が伸びていた。魔法を発動させる魔幹だ。
ゴォッ!! ゴォッ!! ゴォッ!!
砂地からしっかり伸びた魔幹は揺れることなく魔法の炎で形成された矢をはじき出す。突如、可燃物のない大気中に現われた高熱の杭はまばゆい光を放ちながら3本、怪物に向かって跳ぶ。
怪物はとっさのことで避けられない。
「グヮォォォッ!!」
化け物の絶叫が轟く。
右の頭の側頭部、額、口に火炎の矢が突き刺さり、大ダメージを与えている。
気づいてはいたが、火炎の矢の弾速が速すぎて避けられなかったのだ。そもそも、ヒグマよりも大きな巨体なので動きはさほど速くない。
ガシャン!
あまりの激痛に双頭のフォモール族は連接棍棒を取り落とし、傷ついた右の頭を押さえてうずくまる。
「やったか!?」
ハンスの声に喜びの色がある。
ビ・グーヒは荒鷲団で唯一の上級魔道士であり、その魔法は折り紙付きの威力だ。1発で20人近い敵を葬ることができる。それを3発も喰らえば大抵の幻獣は立ち上がれない。
だから、油断があったのだ。
「ハンス、避けて!」
キャロルが悲痛な叫びを上げた時はもう遅い。
「ガァァッ!!」
怪物の左腕がハンスを襲う。
ドガァッ!!
スイカよりも大きな拳が哀れな男の頭を強かに殴りつけていた。
「へぶぅっ!?」
殴られる直前まで信じられないものを見つめるようにハンスの目は見開かれていた。
仕方あるまい。
今までビ・グーヒのフレイムアローを3発も喰らって動けた幻獣に出会ったことがなかったのだ。
理由の1つは魔法の相克関係である。水属性のフォモール族に火の精霊魔法が効きづらい。そのせいで頭という急所を焼かれても意外にダメージが低かったのだ。
もう1つの理由はこの怪物の特徴にあった。頭が2つあるのだ。右の頭を焼かれてうずくまったものの、左の頭が考えて行動できる。右手の得物は取り落としたが、左手が残っているのだ。左の拳で殴ればいいことぐらいはフォモール族でもわかった。
ガッ! ズダダン! ダン!
ぶちのめされたハンスは2度、3度と砂地をバウンドしながらふっ飛ばされて転がる。
ピクリとも動かない。
「ハンスゥゥゥッ!!」
「グギャギャー!!」
悲痛な声が上がる。
仲間がやられたことへの不安と絶望。
ハンスは兜をかぶっていない。剥き出しの頭部を直に殴られたのだ。
キャロルとビ・グーヒの感情は千々に乱れる。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
今回も主人公♀はいい気分で突っ立ってるだけでしたwww
暇です。
暇な主人公です。
もういっそのこと、タイトルを『追放された無能ドラゴン、実はSSS級の冒険者だったような気がして田舎に引きこもる♪〜暁光帝のスローライフ〜』に変えた方がいいのかもしれませんwww
さて、今回はナンシーさんが大活躍です。
活躍した結果、MPが尽きて本格的に出涸らしエルフになっちゃいましたが(汗)
頑張らないで突っ立ってるだけの主人公♀よりはマシですね。
そして、ついに荒鷲団に犠牲者が!?
大ピンチです。
さぁ、ついに主人公♀の出番ですね。
我らが暁光帝♀はスローライフを脱してSSS級の冒険者になれるのでしょうか。
さて、そういうわけで次回は『次々に倒れる仲間達! 真の危機に暁光帝が立ち向かう! 今こそボクが立ち上がる時だ!!』です。
請う、ご期待!




