29 商業ギルド受付嬢
お読みいただきありがとうございます。
扉を開けて入って来たのは、銀髪紫眼の美青年と金髪紫眼の美少女。親子の様に見える。
身形は貴族っぽい。
ちょっと陰のあるいい男。
そして、私をじっと見つめる淡い金糸の髪の美少女。その紫の瞳のあまりの美しさに少しドギマギしてしまった。
いかんいかん。ちゃんと仕事しなければ。
彼らは商人登録に来たらしい。
やはり貴族だった。フォンがついてるから男爵。
いい男で商会をつくるくらい裕福な貴族。
この子の器量から見るときっと物凄い美人の正妻がいるんだろうな。
私ももうそろそろ本気で結婚考えないと行き遅れてしまう。
15歳で成人。女性は18歳〜22歳が結婚適齢期。
ただでさえ、この商業ギルドはおっさんしか来ない。冒険者ギルドみたいに若者は来なくて、声を掛けて来るのは、太った成金趣味のおっさんばかり。
せめて、渋めのおじ様なら…。
私も冒険者ギルドの受付嬢になれば良かった。まあ、トラブルが少ないからこの商業ギルドを選んだんだけどね。
この際、妾でもいいから、この方が貰ってくれないかしら…なーんて。
はあ…今度、冒険者ギルドの友達に誰か紹介してもらおうかしらね…。
今年で22歳。私は絶賛悩めるお年頃なのである。
「あ、早速ですけど、買取査定お願いします。」
登録説明を終え、商業ギルドカードを渡すと、その美少女、フランデア様が言った。
見たところ何も持っていない様に見えるから、宝石とか小さな物の買取依頼かしら。
初の取り引きの場合は必ず、1番の商談部屋と決まっている。
そこで、まずこの商業ギルドの長、ギルドマスターと商談を兼ねた人物査定が行われる。
まさかの盗賊が登録しないとも限らないし、盗品を持ち込んだりしないか、鑑定眼を持つギルドマスターが、見定めるのだ。
素材鑑定、商品鑑定、人物鑑定など、ランクによってできる鑑定が変わって来るので、希少な人物鑑定までできるギルドマスターが、初見で商談する。
そこで犯罪者だと判れば、速やかに警備隊に通報、捕縛となり、登録抹消となる。
更正した元犯罪者なら、鑑定で職業が現在の職業で表示されて見えるらしいから、通報はされないけれど、要監視的な扱いになる。
なぜなら、昔の知り合いとかから誘われ、再び悪事に手を出してしまう場合もあるから。
犯罪歴のついてない代理人を立てて登録したりする抜け道もあるから、犯罪者が商会を作っていてもわからないこともあるんだけれどね。
この人物鑑定が可能だということは、公然の秘密で、ギルドマスターが王族に連なる公爵家の一員だからこそ、身の安全が保証されているのだ。
この国はかつて勇者が創った王国で、王族はその勇者の血を受け継いで、特殊なスキル保持者が多く生まれるらしく、ギルドマスターも最上級の鑑定眼を持っているのだ。
物凄いいい男なんだけど、公爵家だし、常に鑑定されちゃったりするのは怖すぎて、あんまりお近付きにはなりたくない。
はあ…今夜、友達と飲みにでも行こうかしら。
で、将来有望な冒険者でも紹介…してもらおうかと思ったけど、ダメね。
冒険者は…早死にする…。
やはりここは…仕事に生きるしかないのか。
まあ、この美親子は私的にも凄く気になるし、この商会が軌道に乗るのを少し応援してみようかしらね。
そして、あわよくばお近付きになれれば…。
明日も投稿します。
「老後を夢みる元聖女」の方も明日更新…できたらいいなぁ…なんて。
いえ、頑張ります…。




