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後から話を変えてくるのはどうかと思いますが……言ってもきっと無駄なのでしょうね。  作者: 四季


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前編

 城で書類などを扱う仕事をしている私リリアは、一日十時間以上働く毎日で、それゆえ大変忙しい日々の中に身を置いている。


 だがそれが嫌なことかといえばそうでもなくて。

 むしろやりがいを感じられている。

 なのでこの仕事をやめるつもりはなかったのだが。


「リリア、お前とはもう無理だ」


 二つ年上の婚約者ルヴェンズからそんなことを言われてしまい。


「なので婚約は破棄とする!」


 はっきり告げられてしまった。


「婚約破棄、とは……また、どうして急に」

「お前はいつも仕事ばかり! 毎日仕事仕事で俺のことなんて少しも見てくれないじゃないか!」

「あの……婚約する時、言ってくださったではないですか。やりたいことに、仕事に、打ち込んでほしいって……」


 ルヴェンズと婚約するという話が出てきた時、私は、はっきりと言った。仕事で忙しい日々になるだろうから関わっていけないかもしれない、と。すると彼はそれでもいいと言ってくれて。仕事はやりたいうちは続ける、ということを一つの条件とした上で、婚約という契約へと進んだ。その時のルヴェンズは確かに応援してくれていた――だから今、正直、戸惑っている。


「このことは婚約時に作成した書面にも記載していたはずです」

「は、はあ?」

「ルヴェンズさんもサインしてくださいましたよね。あの十ページくらいの」

「なっ……あ、あれか」

「してくださいましたよね?」

「たし、かに……サインした、とは思うが……」


 気まずそうな面持ちになるルヴェンズ。


「ですから、それを理由に婚約破棄ということは認められないと思います」

「だ、だが! ここまでとは思わなかったんだ! こんなに放置されるなんて! 夢にも思わなかった!」

「そういった点もすべて書類に記載していたはずです」

「お、おい! いい加減書類のことばっか言うなよ! 頭固すぎだろ! 女とは思えん!」


 ……そんなこと言われても。


 これが私なのだから仕方がないではないか。


「なんにせよ、決定は決定だ。婚約は破棄とする。婚約者を放置するような女に価値はない。お前とは永遠にさよならだ!」


 こうしてルヴェンズは一方的に関係を終わらせたのだった。


 彼は私の仕事のことを理解してくれていると思っていた。だからそれを理由として関係を無理矢理終わらせられたことは悲しかった。彼のことを信じていたからこそのがっかり感があった、というか。何とも言えない思いが胸につっかえて。婚約破棄を告げられた日からしばらくは四六時中もやもやにつきまとわれているような感覚で。仕事はやるべきことなので何とかできたが、それ以外のことには少しも頭が回らなかった。


 だが、それから少しして、ルヴェンズから契約違反を理由にお金を取ることに成功。それによって救われたような感覚はあった。


 お金が欲しかったわけではない。

 給料は十分貰っているから。


 ただ、そのややこしい戦いに決着がついたことで、私は間違っていなかったのだと思えたことは大きかった。


 ルヴェンズとは大事にするものが違っていたのだろう。


 そう思えるようになって。


 それによって集中力ややる気が復活。徐々に元の自分が戻ってきた。色々あったけれど、乗り越えられたので、ここからまた頑張っていこうと前向きになれて。過去の私よりも成長した私になって、より一層熱心に仕事に打ち込めるようになっていった。


「リリアさん、最近前よりもっとすごくなってるわね」

「あの方は本当に優秀です」

「前もすごかったけど、最近はもっとすごくなってる……まだ成長してるってすごすぎるわね」


 おかげで評価も上がり。


「あー、あたしもあんなふーに、賢い人になりたーい。憧れるぅー。ばりばり仕事してみたーい」

「……あなたはまずその喋り方どうにかした方がいいんじゃない?」

「はぁーい。気をつけまーす。ってか、そんなこと言われてもさー、どうにかなる気がしないよー」


 憧れてくれる人まで出てきて。


「少し、良いですかな?」

「はい」

「実は……リリアさんには、もっと、レベルの高い持ち場についてもらえないかと思いましてな」


 出世の話まで舞い込んできた。

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