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千年後の勇者召喚で再会した初恋の少女、だが本当に世界を救ったのは俺だった  作者: 暁牡丹


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第29話 重なりきる


# 第29話 重なりきる


 静かだった。


 何もない空間。


 何も起きていないはずなのに。


 誰も動かない。


 唯愛は、呼吸を整える。


 落ち着いている。


 おかしいくらいに。


 怖いはずなのに。


 逆に、静かすぎる。


 トバリも、動かない。


 見ている。


 ただ。


 見ている。


 時間が、止まる。


 その時。


 小さな音がした。


 唯愛の手から、何かが落ちる。


 石に当たる。


 転がる。


 反射的に、手が動く。


 トバリも、同時に。


 完全に。


 同じ動きで。


 触れる。


 その瞬間。


 世界が、重なる。


 視界が、完全に一致する。


 音が、重なる。


 思考が、重なる。


 ――分かる。


 全部。


 距離も。


 感情も。


 呼吸も。


 唯愛が、トバネになる。


 一瞬だけ。


 完全に。


 トバリの視界に。


 トバネがいる。


 そこに。


 確かに。


 存在している。


 呼吸が、止まる。


 思考が、止まる。


 そして。


「……トバネ」


 声が、漏れる。


 自然に。


 当たり前みたいに。


 その名前が出る。


 手が動く。


 抱き寄せる。


 迷いなく。


 あの時と同じように。


 でも。


 次の瞬間。


 崩れる。


 視界が、戻る。


 呼吸が、ズレる。


 距離が、戻る。


 唯愛に戻る。


 トバリが、固まる。


 そのまま。


 動かない。


 数秒。


 何も言えない。


 そして。


「……違う」


 小さく、呟く。


 自分に言い聞かせるみたいに。


 唯愛は、息を荒げる。


 何が起きたのか。


 分からない。


 でも。


 分かる。


 何かが、いた。


 一瞬だけ。


 確かに。


「……今」


 声が震える。


「誰だった?」


 答えは、ない。


 でも。


 全員、分かっている。


 言わないだけで。


 静かに。


 確実に。


 もう。


 戻れない。


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