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蒼き臨界のストルジア  作者: 夜神 颯冶
海から来た少女
9/37

                                9        

 

それまで無秩序むちつじょに回っていた背びれが仲良く整列せいれつし、

僕達の前で止まった。



次の瞬間、

波しぶきと共に二頭のイルカがその姿を表した。



ポッドに身を乗り上げ、

日向ひなたぼっこするように体をあずける、

かわいい二頭のイルカ。



ピンクと青のつがいの二頭のイルカだった。



「何かしたの?」



僕が少女にそうたずねると、

少女は首をかしげ、笛を差し出しつぶやいた。



『アクメホイッスル』



これを吹いたと言いたいのだろうか?



「でも何も聞こえなかったよ?」



少女はもう一度その笛を口にくわえると、

吹く素振そぶりをしながら僕の顔を見つめた。



そして不思議そうに僕を見つめふたたびたずねた。



『聞こえない?』



「うん。

 何も聞こえないかな?」



『そう。残念ざんねん



残念?



何が残念なのだろうか?



再び僕は彼女にたずねる。



「どう言う事なのか、

 お兄ちゃんに教えてくれない?」



彼女は不思議そうに僕を見つめささやいた。



『お兄ちゃんちがう。

 おじいちゃん 』



おじいちゃんって・・・



たしかに彼女よりは少しだけ年上だけど、

おじいちゃんって呼ばれるほどは離れていない。



多分・・・



「僕はおじいちゃんじゃないよ、

 ()()()()だよ!」



『高い音は歳をとると聞こえなくなる』



彼女はポツリとそうつぶやき再び笛を見つめる。



「君にはその笛の音が聞こえてるの?」



『うん』


コクリとうなづき彼女はふたたび笛を吹き僕を見つめた。



僕を見つめる彼女の目は、

どこまでも透明で深く吸い込まれそうだ。



「やっぱり聞こえないかな」



童話の中から抜け出して来た少女は、

僕を見つめたままつぶやいた。



『おじいちゃん』



大迷子オオマイゴー!?



そうか、そうなのか・・・



僕はおじいちゃんなのか!?



間違まちがっている・・・



世の中すべて間違っている・・・



一人苦悶(くもん)する僕にとどめとばかりに

かえす少女。



『おじいちゃん』



子供のころ憧れた童話の中のお姫様は、

どこまでも透明で純真じゅんしん着飾きかざらない。



・・・



何か違う・・・



なぜ人類ははるか昔より物語を必要としたのか。



それは現実があまりに残酷ざんこくだからだ・・・


 

 

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