13 隣村
「おじさーん」
伯父は家にいないようだ。甕に川魚があるから、夕餉には帰るのだろう。重い荷物を置いて、ふと思った。このまま一目散に帰ったら伯父さんに捕まらずに済むかな…。よし、そうしよう。今晩は山陰で明かせばいいや。
水を一口いただいてから、さっさと家を後にした。
「あら。お遣いご苦労だね、リュウくん」
「おばさんも洗濯ご苦労さま。伯父さんに会ったら、よろしく伝えてくれる?」
「あらあら、会っていかないのかい?あれだけ楽しみにしているのに」
苦笑いで「うん」と言って辞そうとしても、「グレンさんにはいつもお世話になってるからねぇ。ちょっと寄ってっておくれ」と、美味しい団子をもらってしまった。
隣村を出る頃になって、小さく聞こえる声に呼び止められた。
「リューーウ!」
紛れもなく、伯父の声だ。声のした方を嫌々見ると、遠くの山裾に伯父が人を背負って立っているのが見えた。周りには子供が二人、不安そうに付いている。一人は泣いているようだ。ため息をついてから、僕は伯父の方へ駆けた。
「すまないね、リュウくん。ありがとう」
伯父の背に居たのは若い父親で、太ももを負傷していた。猪に襲われたらしい。既に簡単な手当がされており、顔は青白いが元気そうだった。僕は息子二人を連れて先に山を降りて治療の用意を整えると、山中に残してきたというウリ坊を取りに行った。年上の子が手伝いに付いてきた。
「ねぇ、リュウ兄は一人で捌いたことがあるの?」
「あるよ」
「今日は3匹とれたんだよ。いつもは父さんがやるのを手伝ってるんだ」
「そうか、じゃあ今日はリクが一人で捌いてみるか」
「えっ!本当?!…できるかなぁ?」
「できるさ」
父親負傷で不安そうにしていた少年も、それを聞くと楽しみで仕方ない様子だった。




