30.宝の地図を書き留めた文
ひらがなをメモ用紙に書き写した篠崎は、それを畳の上に置いてあぐらをかき、腕組みをしながら考え込んだ。菊川も曙橋も九段下も、メモ用紙を取り囲むようにしてしゃがみ込む。唯一、西大島は、部屋の隅に立ったままだった。
しばらくの沈黙の後、菊川が「そういえば」と切り出した。
「宝の地図を書き留めた文あり、って書いてあったよね? これがそう――よね」
「たぶん」
篠崎は、メモに目を落としたまま、そう答えた。
「これ、どこが地図なの?」
「いや、訊かれても困るけど」
すると、曙橋が、畳の上にあるメモ用紙を90度ずつクルックルッと回転させた。
「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
九段下が首を傾げた。
「ええ。これが宝の地図という以上、場所が書かれているはずなのですが、その単語を探すために見る方向を変えています」
しかし、単語が見つからなかったのか、彼女は回転をやめた。
再び訪れる沈黙。息が詰まるような時間が流れていく。
それを破ったのは、菊川だった。
「ねえ、そのひらがなの左端。縦方向を読むと、『ななほゆんで』って書いてあるけど『七歩あゆんで』の書き間違いかしら?」
菊川がメモの該当部分を指差すので、篠崎はそれをジッと見つめていたが、何やら別の発見をしたらしく、ニヤッと笑った。
「おい、一番下の行、左から右に向かって読むと『はちほまて』だから、『八歩待て』だぞ」
すると、曙橋が「いや、たぶん違う」と割り込んできた。
「何が違うって?」
篠崎が眉をひそめて、曙橋の顔を覗き込んだ。




