11.暗号解読(その1) 続き(2)
曙橋が『あいうえお』と書き始めたので、篠崎が「まさか50音?」とつぶやいた。
彼女は彼のつぶやきを無視して、『かきくけこ』と続けて『ん』まで書き終えると、「50+1」と答えた。
「51音?」
その問いに彼女は応えず、単に「見てて」と言って、短歌を詠み上げる。
「む・ら・さ・め・や」
そう言いながら、50音+『ん』の中から詠み上げたものと一致するひらがなを一つずつ×印で消していった。
「何してるの……って、あああっ! わかった!」
「き・つ・ね……うるさい」
「ごめん」
「この暗号、ひらがなしかなくて、しかも、文字が1種類ずつしかない。だから、登場する文字をここから消していく」
「つまり――」
「残った文字が本当の暗号――のはず。やり方は間違っていないと思う」
そう。曙橋は、短歌めいた暗号で51音の消し込み作業を行っているのだ。
「なんでわかるの? 直感? 女の勘?」
「せ・い・し・て……うるさい」
もし『い』と『え』の時は、あ行とや行を消し、『う』の時は、あ行とわ行を消す。
すると、残った言葉は、あいうえお順で以下の文字になった。
『か け と な の ほ ヰ ヱ』
篠崎が「賭けと菜の帆ヰヱ?」と言うと、曙橋が「多分、ちがうことを考えているはず」と彼の心の中まで見抜いたような発言をする。
「このまま呼んでも意味がわからないので、単語に使いそうにないわ行の『ヰ』『ヱ』をいったん保留扱いで外してみる。もし、意味が通じなければ復活させるけど」
彼女が三角マークで『ヰ』『ヱ』を保留扱いにすると、以下の文字に絞られた。
『か け と な の ほ』
「これ、並び替えるはず。どうやれば……」
「曙橋の直感がここで冴え渡るか!?」
「篠崎、さっきからうるさい。閃かない」
ここで菊川が「もしかして」と言って割り込んできた。
「埋蔵金って、普通どこかの中に埋まっているよね? この暗号がどこそこの中っていう暗号なら、ほら、こう並び替えれば――」
菊川が篠崎から鉛筆を取り上げて、曙橋のメモに書き足した。
『ほ と け の な か』
つまり、『仏の中』。
三人は顔を見合わせ、破顔して立ち上がった。
「やったぜ!!」「解けたー!!」「菊川さん、凄い」
今にも抱き合って喜びそうな三人を見ながら、西大島が眼鏡の位置を直して暗号文の紙片を茶封筒に戻しながら、「では、大地主様のところへ参りましょう」と言って立ち上がった。




