↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼウスゲイム ~異世界をフィールドに神々が遊ぶようです~  作者: 嘉神 佑
第1章 ゲームスタート ~スキルと魔法と異世界生活~
6/12

フリルの森の少女Ⅰ

 扉をくぐり、眩いばかりの光がツバメを覆う。


「うっ……」


 光が収まっていき、視界が開ける。

 最初に感じたのは、暖かな空気。


「……ここは、森か?」


 周囲には、ほどよく育った大きな木々。

 緑が豊かに生い茂り、よく肥えていそうな土の香りも感じる。


 どうやら、森のど真ん中に転移させられたらしい。


「すごいな……」


 見渡せば見渡すほどにその自然の大きさに圧倒される。

 というよりは、ツバメは引きこもり故にあまり外に出たことがない。

 アウトドアなどもってのほか。

 なので、このような自然に囲まれた場所に縁がなかったのだ。


「と、とりあえず――」


 人のいる場所に行こう。

 だが、最初に飛ばされた場所が森というのは少しまずいかもしれない。

 運良く人の集まる集落のような場所に出られればいいのだが、この森の大きさによっては迷い続けることだってありえる。

 とにかく、すぐにでも森を脱出することが先決だ。


「もし迷った時のためにも、水や食料とかも必要だな」


 そんなことは考えたくないが、もしものためにも備えは必要だ。

 最低でも水の確保は考えたほうがいいかもしれない。


 今後すべきことを頭にまとめ、ツバメは森をひたすらに歩き続けた。



 ◆



 しばらく歩いていると、和流のような風情ある音が聞こえてきた。


「この音は……水場が近いのか?」


 サラサラと水の流れる音が僅かにだが耳に届いた。

 聞き逃さぬように意識を集中し、その音源を辿っていく。


「この近くみたいだけど――」


 湿った地面を踏みしめて音のした方へ近づいていくと、そこには川があった。


「よかった……水がある」


 ツバメは安心したような声を漏らし、川に近づいていく。

 流れる水を見ると、底が見えるほどに透明で綺麗だった。

 生水には違いないが、飲んでも平気そうだ。

 ツバメは勢いよく顔を水面に近づけ、水を飲んでいく。

 喉を通る爽やかな清涼感に、思わず声を上げた。


「っぷはぁ! 生き返ったぁ!」


 結構歩いたので喉が渇いていたのだ。

 ツバメは服の袖で顔を拭き、改めて川の流れを目で追った。


「川を見つけられてよかった……このまま下流へと下っていけば人のいるところに着けるかもしれない」


 少なくとも、森の奥深くに入って遭難するということはないだろう。最悪でも平地に出られる。

 そこまでいけば、なんとかなるだろう。

 自分一人の力でなんとかならなければ、あまりやりたくはないがスキルに頼れば良い。


「とりあえず、休憩しよう」


 ツバメはその場に座り込み、スマホを取り出す。

 メニューを開き、スキルのアイコンをタップした。


「これ、どうするかなぁ」


 スマホに表示されたのは、3つの項目。




 ・能力1(自由度 小)


 ・能力2(自由度 中)


 ・能力3(自由度 大)




 それぞれの項目の下には、文字入力のフォームがある。

 恐らくこれはツバメのスキルでもある『自分の考えた3つの能力を使用できる能力』を設定する画面だろう。

 ツバメの考えた能力をフォームに入力することによって、その能力を行使できる。


 だが、問題なのはそこに書いてある"自由度"の文字だった。


「自由度って多分、能力の制限を意味してるよな……?」


 ツバメのスキルをそのまま鵜呑みにすれば、このスキルは自由度の非常に高いスキルだ。

 自分の想像した通りに能力が使えるという、夢のようなスキル。


 だが、この自由度という文字がどうにも気になる。


「……ちょっと試してみるか」


 ツバメは、とりあえずパッと思いついた能力を入力してみることにした。


 そうだな、例えば――


 ツバメは手馴れた手つきでフォームに文字を打ち込んでいく。




 ・能力1(自由度 小)

『超サイヤ人になれる能力』




「……我ながら酷いな」


 だが、誰だって一度は夢見た力ではないだろうか?

 幼い頃にかめはめ波の練習に精を出した思い出は日本男児共通である、とツバメは思っている。


 そんなことを思いつつ、ツバメはOKボタンを押す。

 すると、アラートが出た。




『この能力は 自由度小 が許可する制限範囲を超えています』




「そりゃそうだよな」


 だって超サイヤ人だもん。惑星だって破壊しちゃえる力だよ。流石にチートが過ぎる。


 試しに自由度 大 のスロットでも試してみたが、同じようにアラートが出た。


 だがこれは予想の範囲内だ。

 無理難題な能力を指定してみた時の反応を見たかったのだ。


 次に、自由度というものがどのような塩梅で決まっているのかをチェックしていこう。

 ツバメは思いついた能力をスマホに入力する。




 ・能力1(自由度 小)

『炎の魔法が使える能力』




 少し、単純過ぎるだろうか?

 そう思いながら、ツバメはOKボタンを押す。すると先ほどとは異なるアラートが出た。




『この能力は 自由度小 の許可する制限範囲内の能力です。設定しますか?』

 ※一度設定した能力の変更はできません




 そのアラートの下にOKボタンとキャンセルボタンが出力される。


「危ない危ないっと」


 ツバメはすぐにキャンセルボタンを押した。

 今のは少し危なかったな。もしアラート無しに入力即設定なんてことになったら目も当てられない。

 自由度 小とはいえ貴重な能力のスロットを消費するところだった。

 まあ、炎の魔法というのも悪くない選択肢だったかもしれないが、もう少し慎重に考えたい。


 だが、炎の魔法が使える能力、で自由度 小の許可範囲内か。


「割りと設定できる能力の範囲は広そうだな」


 そもそも"魔法"という概念をこのスキルが理解しているってことは、この世界には魔法がある可能性が高い。

 その魔法が希少なものなのかありふれたものなのかはさて置き。


「色々と試したいけど、とりあえずはちゃんと休める場所を探そう」


 この自由度のチェック。思ったより時間がかかりそうだ。

 もう少し腰を落ち着けてスマホを操作できる場所でやりたい。


 そう思い、ツバメは休憩を終えて立ち上がり、下流を目指して川を辿っていった。



 ◆



 森を抜けるために川を辿って歩みを進めていく。

 その途中で、少し大きな水場についた。

 湖だろうか?

 大きめの岩場に囲まれていて、日光がとても美しく反射している。


「また水でも飲んでいこうかな」


 そう思い、湖へ近づいた。

 すると、先客がいた。


「……ふぅ、気持ちいいです~」

「…………」


 岩場の影から湖の全容が見えたと同時に、その湖で水浴びを楽しんでいるであろう人影が視界に入った。


 水面の上で踊るのは、サラサラとした茶色の髪の毛。

 その毛の根元には、ファンタジーの世界でしか見たことのない、獣の耳。

 目線を下にずらせば、それはそれは美しくしなやかに伸びる女性の肢体。

 きゅっとくびれた腰周りには、付着した水玉で煌く長い尻尾が見えた。


 思わず見とれていた。

 本当に、おとぎ話のワンシーンに飛び込んだかのような垂涎の景色。


(獣の耳を付けた女の子が、水浴びをしてるッ……!!)


 ツバメは足を動かすことを忘れ、しばらくその女の子の後ろ姿を眺めていた。


「……そろそろ上がりましょ――」


 すぐに離れればよかったのだ。

 未練がましく眺めていたのが、いけなかった。


 その女の子と、目があった。


 ようやく見えた顔はとても素朴な作りをしていて、尚且つ目鼻立ちはとても整っている。

 目もクリクリしていて、翡翠色の瞳に吸い込まれそうになる。

 そして、目線は胸元へ――


「え、ああ……」

「あ」


 そこで気づいた。

 さっきまで覗きまくってた女の子が、とてもワナワナと震えていることに。

 これは、もしかして、もしかしなくても。


「――きゃあああああああああああああああああああ!!!!」


 その甲高い悲鳴に、ツバメは明らかに弁明不可な状況に陥っていることをようやく知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。