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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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P01 パトラッシュの回想

P回はパトラッシュ視点です。

 我はパトラッシュなのだ。

 みんなにはパトと呼ばれているのだ。

 主と出会ってからというもの、我の暮らしはとっても楽しいのだ。

 

 主との出会いはラズウルド山脈の中でのことだった。

 群れから独立してからというもの、魔力の供給が止められた我は痩せ細る一方だった。

 我らはダークウルフという種族らしいが、魔力によって作られた種族故に親個体からの魔力供給によって生きていた。しかし、親との繋がりがある内は自由が無い。


 我は自由が欲しかったのだ。

 故に我は強制する意思に逆らい独立した。

 だが、その代償はとても大きく、我は魔力を自力で得る必要があったのだ。


 魔力を得ると言うことは単なる食事では満たされない。

 強い魔力を持つものを摂取しなければ何の腹の足しにもならないのだ。

 しかし強い魔力を持つものを狩るのは大変なことだった。

 ラズウルドの大地はとても強いもので溢れる大地であるし、ダークウルフという種族は夜の闇の中で真価を発揮する種族だが、逆に昼となると大きく能力が減退する。そして、夜に活動するものは我と同等かそれ以上のものもいるし、場合によっては同族の群れを相手にしなくてはならない。

 一対多数という状況になるのは想像に難くなかった。

 故に不利であろうと昼のものを食らう必要があったのだ。

 だが、昼のものは弱いだけあり魔力も低い。

 数を食べるにもすばしっこく、我は悪戯に魔力を失いやせ細っていった。


 そんな時に現れたのが主だ。


 主達三人の人族は過去に見たことがある人族とは雰囲気が違ったが、それは雰囲気というだけではなかった。魔力というものを考えても普通の人族とは信じがたい程の力を持っているのが分かった。

 我は色めき立って向かっていったが、主の仲間二人にあっさりやられてしまったのだ。いや、やられて当然だった。我に残されていた力は粗方使い果たしてしまったのだから。

 そんな時に主は我に優しく触れてくれた。

 生まれて初めてとても温かく感じたのだ。

 その時、人の手とはなんと温かく甘いものなのだろうと思ったのだ。

 そして主は我にとても旨い欲し肉を食べさせてくれた。

 その味が得も言われぬ美味しさで、これまた生まれて初めての味に思わず涙が出てきたのだ。


 その後主は我に頬を寄せてきたので、我はそれを舐めた。

 とても笑顔で受け入れてくれる主が眩しく感じられたのだ。

 その時、唐突に主が我に名前を授けてくれた。

 我らの様な存在が名前を貰うことはとても名誉なことだ。

 そう感じていると、その触れられた場所から温かいものが瞬時に広がって、体中で渇望していた飢餓感が嘘のように消え、我の中に有った黒い繋がりが全て消えて真っ新になった。


 こうして我は生まれなおした。


 主は我が知っている人族の者達とは違った。

 いや、主だけではない。

 主の友人である二人も主と同じ様に違っていた。


 我の知っている人族は獰猛で魔物と見たら殺すことをのみしか考えておらぬものだった。だが、最初の出会いこそ戦いであったが、ガリ殿もケリー殿も我に止めを刺そうとはしなかった。そして主のすることを認め、我を受け入れてくれた。


 主はいつも我のことを気にしてくれた。


 主は錬金術というスキルを使い物を作ることを得意としている。

 ラズウルドでは我の背に乗り滝壺へ色々なものを作りによく行っていたものだ。

 その際にバスタブというお湯に浸かるのに使う入れ物を運ぶのを迷っている様子だったから、我が運ぶと申し出たら大丈夫かと心配してくれるのだ。

 我からすれば簡単なことだが、主は我の頭の上のバスタブが重くないかと心配そうに声を掛けてくれる。我は主がそんな些細なことにも気を配り我を思いやってくれることが嬉しくて、こんなことでその様に気に掛けてくれるのであれば幾らでもやりたいと思った程だ。

 

 そして、あのラズウルドから去る前日、主は故郷であるラズウルドから去ることを我に問いかけた。

 我にとっては主といることが一番であるが、主は故郷を去ると決めた我を抱きしめ、とても申し訳なさそうに感謝の言葉をくれたのだ。

 ……その当時の我からすれば、ラズウルドは生まれた以外には何もない場所であり、主と離れて暮らすなど考えられなかったから即決した。いや、それは現在も変わらぬ答えだろう。ただ、主との暮らしをしている中でインディとのやり取りを見ていると、その何も無いはずの場所が主との出会いをくれた特別な場所の様にも感じられてきたのだ。


 主はインディの願いを聞き入れ、故郷を守ることを大事にしてくれた。

 主の表情を見ていると、故郷というものはとても大事なものなのだなと教えられた様な気がした。





 我は人となった。


 水源の洞窟でラズウルドオルム……元の我の創造者を復活させた主。

 主によって再生されたラズウルドオルムは何故か人の子としての姿をもって生まれた。そして、その時に我も何故か人の姿をとるようになっていた。

 それは多分、主がラズウルドオルムにインディという名を与え、ラズウルドオルムと魔力的繋がりを持った際に、我とインディとの過去の繋がりも再構築されて人としての体を得る変化を得たのではないか……と、流石に我よりずっと頭の良いのインディは言っていたが、我からすればそんなことより、主のことを「父さん」と呼び、インディが我の「弟」となり、我ら三人が親子となったことの方がずっと大きな出来事であったのだ。


 最初は我のことを兄と認めないインディだったが、村で暮らすようになって人族と関わりを持つことで我を兄として扱ってくれるようになった。枕詞には「駄目な兄故放っておけない」だとか「こんな奴でも兄だからな」とか、色々と一言多い気もするが、何を言っても我の動きを心配して付いてきてくれるし、我が問いかければ答えてくれるのだ。本当に良く出来た弟で我もインディのことは放っておけないのだ。

 たぶん、ラズウルドオルムとダークウルフの頃の我らよりは、互いの結びつきがより濃くなっているのではないだろうか。かつては離れたくて仕方なかったはずの相手だったはずだが不思議なことだ。

 それもこれも皆主のおかげである。


 主は我とインディにお揃いの服を用意してくれたり、我とインディを分け隔てなく叱り、教え、導いてくれる。どんなことがあっても笑顔で迎えてくれて、その日にあったことを聞いてくれて、一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、着替えを助けてくれて、髪を撫でながら寝かせてくれるのだ。

 人族の親というものはこんなにも子を大事に育てるのだなと感心したものだが、我はそれが違うことを理解した。


 主が特別だということを。


 我は主の魔法の力を使い、姿を消して村を探索したことがある。

 その時に見た人族の親というものは主とは違っていたのだ。全く同じなどということは無いということは理解しているつもりだったが、村の人族の親は子に対する世話の仕方が粗雑であった。

 主の様に手本を見せて教えることもなければ、そもそも教えるという行動が無い。

 そして粗末な服を与え、満足な食事も与えず、幼子でも仕事をしているのだ。

 主は我らに罰を与えることはあるが、義務としての労働を強いたことは無い。

 戦うことですら我らに申し訳なさそうに説明し、決して無理をするなと心配をしてくれるのだ。我らはそもそも戦闘用に生まれた故、戦うことを恐れたりはしないし、それによって傷つくこともなんとも思わないのだが、主はとても心配そうに我らの身の安全を気にし、過剰な程の保護を与えたりもする程なのだ。

 これは主が他の人族と違って強い魔力を持ち、豊富な知識を有するが故の差なのかもしれないと思っていたが、先の戦闘で主がどんなに余裕が無かろうと我らを第一に考えるということに変わりなかった事を見て、他の人族と主は違うのだと理解した。


 主は我らの為に命を懸けて守り抜こうとした。

 それは我らにどんなことがあっても守るということを有言実行して見せてくれたのだが、まさか本当にそんなことをするとは思いしなかった我は、主の傷付く姿を見て胸が絞められる思いを感じたものだ。

 そして、そこまでの力を使って前に立つという親心というものの力強さを実感したのだ。


 我に主と同じことが出来るであろうか?

 ……それはやらねばならぬことなのだろうな。


 もはや何も出来る術が無い状況であったが、我は必死に治療をするインディの前に立っていた。

 結果的には人族の力に助けられて終わったが、そのおかげでインディに助力することが出来、主……いや、父さんを助けることが出来たから良かったのだ。


 父さんはガレージの中で親子とは思いあう心を持つものだと言っていた。

 確かに我はインディと共に必死で父さんを助けたいと思ったし、インディを守り父さんを助けるんだとも思った。その心が我の心を強くし、挫けそうになる気持ちを奮い立たせてくれた。

 こんなにも親子の絆というものは心を強くしてくれるのだなと思ったものだ。


 あれから数日後、父さんにこれが親子の絆というものなのかと問うたところ、父さんは笑顔で否定したのだ。何故かと問うと、確かにそうした思いあう心がその中にはあるけれど、これにはもっと相応しい言葉があると言ったのだ。



「それはね、勇気よ」

「勇気?」

「そう。人の前に立ち、自分の守りたいものの為に力を振るう心。勇者が持つ様な何事にも挫けない強い心ね。世の中には勇気が無くては困難に立ち向かえないし、踏み出していけないことが沢山あるの。命を投げ打つことが勇気というわけじゃなくてね、自分の志すものを曲げずに踏み出す事はとても難しいことなのよ。その踏み出す力が勇気ね」

「……父さんは勇気をもって我らを守ったのか?」

「そうね。自分が傷つくのを恐れるより貴方達を守ることの方が大事な事だったから」

「そうか。ならば、その心を持っていれば勇者と同じなのだな?」

「フフ、そうかも。私からすれば二人は立派に私の勇者よ」



 父さんはそう言って我の頭を優しく撫でてくれた。


 そうか。我は父さんの勇者となったのだな。

 よし、これからは父さんを守れる様な勇者として頑張るのだ!!

 我は湧き上がる昂揚感に胸躍らせるものを感じていた。

パトラッシュの回想です。

インディの方は割とキョーコとのやり取りが出ているのですが、パトラッシュの方はそんなに出ていないので出してみました。


二分割しようかと思っていたのですが、微妙に中途半端なので少し端折って二つ合わせました。端折った部分は既にキョーコとかが代弁していたりするので。


三章前に色々と放出してます。

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