表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
58/157

055 大掃除

少女視点の続きです。

 兄がゆっくりと起き上がる。



「……嘘の様だ。こんなに体が楽なのは何時振りだろう」

「兄さん、大丈夫なの?」


 

 兄が私の事を両手で優しく胸に抱き寄せる。

 私はされるがままに兄の胸に顔を埋めた。そして、瞳の奥で堪えていた涙が堰を切って流れ出すのを感じた。

 そんな私を兄はあやす様にゆっくりと背中をさすってくれた。

 その手の熱が温かくて、余計に涙が溢れだすのを止められない。



「あぁ、もう大丈夫だ。苦労を掛けたな。本当にすまない。……キョウさんと仰ったか。有難う。申し遅れました。私の名はシャイン。この御恩は一生忘れません。このような家で申し訳ないが、是非ともゆっくりして行ってください」

「薬が効いて良かった。この薬が効かないとすれば、呪いの類かと疑っていましたが、良かった良かった」



 私はキョウさんの言葉に驚いてガバっと振り向いた。

 兄も驚いた様で声が重なる。



「「の、呪いですか!?」」

「えぇ。世の中にはそういうものも有り得る様ですから。まぁ尤も、呪いくらい解きますけれど」

「は、はぁ……」



 私達二人の驚きに対して、キョウさんは全く動じることなく事も無げに言っていたけれど、薬があんなによく効いたのだから、それくらい出来ると言われても嘘には思えなかった。



「姉ちゃんただいま!!ねぇ、ねぇ、姉ちゃん!木の実こんなにいっぱ……誰、この人達!?」



 その時、家の戸口を乱暴に開けて弟が勢いよく帰ってきた。

 弟はいつも山で木の実を取ったり山菜を採りに行ってくれている。

 今日も沢山の木の実を籠に入れて持って帰ってきたけど、入り口にいる二人の少年や、キョウさんの存在を認めて驚いた様子。

 私は兄の胸から離れると涙を拭いて笑顔を作る。



「この方々は私が森で魔物に襲われているのを助けて下さった方々よ。それに、兄さんも薬で病気を治してくれたの」

「え!? 兄さんが!?」

「ルード、もう大丈夫だ。俺も少ししたら働けるはずだ」

「兄さん、にいさーーーん!!!」



 ルードが兄に走り寄る。

 兄はそれを見て微笑み、手を広げて彼を迎え入れたの。

 兄に抱き着いて泣くルードを見て、私もまた貰い泣きしちゃった。

 横を見たらキョウさんも布で目元を拭っていたの。

 男の人が涙を見せるは珍しいから驚いちゃったけど、それだけ心優しい方なんだなと納得しちゃった。



 その後、お互いに改めて自己紹介をした後、昼食にすることにしたんだけれど、その食事もキョウさんが用意してくれたわ。

 座って使う座卓というテーブルを出して、そこに兎肉のステーキ? だとか、香草とホーホー肉のスープだとか、私達が食べたことの無い美味しい料理を作って下さったの。

 盛り付けに使われている陶器のお皿も、模様は無いけれど艶々で清潔そうな純白のお皿でとっても高そうだわ。それにこのナイフとフォークやスプーン、とってもピカピカに輝いているの。

 こんなに素晴らしいものは見たことも無いわ。

 良い食器に素晴らしい盛り付けの料理を見て、父さんが昔、本当の贅沢な料理は見る楽しみも大切にするという話をしていたのを思い出したわ。……これらは本当にその意味を理解できる料理ね。味だけじゃなく、全てがそこに揃っている気がするわ。

 


「こんなに美味しい料理を頂いて、すみません」

「あー、遠慮は要りませんよ。皆さん育ち盛りなんだから、しっかり食べて元気に大きくならないと」



 そう笑顔で告げるキョウさんだけれど、キョウさんも十分若いと思うんだけどなぁ。



「あの、キョウさんっておいくつなんですか?」

「歳は今年で38ですね」

「えぇ!?!全く見えません。てっきり私達と同じくらいだとばかり。でも、お子さんがいらっしゃるんですものね。そう考えたら……確かに。でも、若い」

「そんなに驚かれると嬉しいなぁ。まさか10代でも通るだなんて、お世辞でも嬉しい」



 キョウさんはそう言ってとても上機嫌な様子。

 兄さんや弟も驚いていた様だったけれど、そんなことよりパト君とインディ君に負けじと料理に齧り付いていたわ。

 お行儀悪いって言いたいけれど、こんなに美味しい料理を笑顔で気にせず食べられる日なんて何時振りか分からないもの。……今日くらいは良いわよね。



 食後は綺麗なガラスのポットでお茶を入れてくれたの。

 紫色の凄い色のお茶なんだけれど、とっても幸せな香りが漂っていて、飲むとほんのり甘いの。

 私はこのお茶の味に心奪われる気分だったわ。

 世の中にこんなに素晴らしい香りと味の物が有っただなんて、世界は広いのね。……昔父さん達が行商に行く楽しさを語っていた気持ちがよく分かるわ。


 お茶の時間も終わると、キョウさんは唐突に掃除をしようと言い始めたの。

 キョウさんの国では土間で靴を脱いで板間で暮らすそうで、板間で靴のまま暮らしたりしないそうなのよ。変な習慣とは思ったけれど、掃除をすることは良いことだから、その提案を受け入れることにしたわ。

 それにもともとこの家は東方の方が建てた家だと聞いているから、土間と板間があるのは変わっているとは思っていたけれども、キョウさんの話を聞いたらそういう意味だったのかもしれないわね。


 まず、家から家財道具を全て外に出すように言われたから、みんなで外に出したわ。と言っても、小さな木のテーブルと箪笥一つしかないから、あっと言う間だったけれど。

 その後はキョウさんだけ家の中に入っていったの。

 私達は外で待つ様に言われたから待っていたら、中が青く光って、その後白く光った後にキョウさんが出てきたわ。

 入って良いと言うので入ってみたら、中は新品同然の色合いに変わっていて、土間も綺麗な白い石の床に変わっていたわ。壁の木の隙間も綺麗に塞がれていて、天井に窓が二つ開いていたの。そこから燦々と午後の太陽の光が降り注いでいて明るいのよ。



「……凄い。どの様にしたら、これほど綺麗に」

「姉ちゃん、明るい!それに部屋の中良い匂いだね!」



 兄や弟が驚きの声を上げている。

 私もその気持ちは一緒よ。

 新しい家ってこんなに良い香りがするのね。

 


「ベッドの用意まではしませんでした。その代わり、私達が使っている旅の道具と同じものを用意してみました。こちらならば寝るときに広げれば良いので」



 そう言って私に手渡してきたのは布の袋。

 キョウさんは一つ開けて形を見せてくれたの。兄の全身がすっぽりと入るくらいの大きな布の中はふわふわの綿が敷き詰められていて、とっても触り心地が良いの。

 キョウさんの話ではこの中に入って眠るそうよ。

 確かにこれなら嵩張らないから旅の途中でも快適ね。

 私達はキョウさんの道具に感心しながら一頻り見ると、感謝の言葉を忘れなかったわ。

 


 その後はもっと凄かったの。

 私、話には聞いたことが有ったけれど、収納魔法というものを初めて使っているのを見たわ。

 その中から大きな白い箱を二人のお子さんと一緒に中から出してきたの。それはレーゾーコというもので、中がとっても冷えた箱で、その中に入れて置けばお肉や野菜を新鮮に保ってくれるそうなの。それから、幾つかのお皿やそれを収納するためのガラスのはめられたとっても高級そうな戸棚とか、中が透き通って見える程綺麗なガラスのコップも出してきたのよ。

 これら全てを計算したら一体幾らするのかしら。……想像すると怖くなる程よ。



「あの、キョウさん、これを使って壊したりしたら、私達弁償なんて出来ないんですが……」

「え? あぁ、気にしないで。こんなもの幾らでもあるから」

「はえ!? そ、そうなんですか」



 幾らでもあると軽く返されたけれど、私は気が遠くなるのを感じたわ。

 キョウさんは粗方出し終えると、少し外に出ると言って出て行ったの。

 土間の横壁辺りに音がしたと思ったら、突然ドゴンと音がして土間の壁が崩れたわ。驚いてそちらに駆け寄ると、土間の向こうに部屋が出来ていて、そこに見慣れない横長の白い大きな入れ物が置かれていたわ。

 とってもつるつると光っている綺麗な石の箱。

 壁も純白でとっても明るい。

 キョウさんがその部屋の中から土間にやってきたの。



「これは何ですか?」

「バスルームですよ」

「バスルーム?」

「えぇ。我々の国では入浴の習慣が有りましてね。折角ですからお風呂を用意してみました。あぁ、お風呂というのはお湯に浸かって汚れを落とすんですよ」



 お湯に浸かるですって!?

 そんなことしたら、幾ら薪が有っても足りないわ。



「そんなこと無理です。うちにそんなに沢山の薪は有りません」

「あ、大丈夫です。私が用意しますから」

「え」

「私が欲したんですから、当然でしょう」

「はぁ」



 何だか狐につままれている様な感覚だったけれど、キョウさんが請け負うと言っている以上、私には何も言えなかった。



「明るい」



 その夜、辺りが真っ暗に沈む中、家の中が昼の様に明るいことに驚いたわ。

 バーライトというもののお陰で暗闇に足をつっかえることも無く自由に歩けるの。この幸せの明かりの中、また美味しい料理を頂いた。そして、私は初めてお風呂というものに入ったわ。


 お湯に浸かると体がじんわりと熱を発し、シュワシュワと泡立つのを感じたかと思うと、それは数分後には消えて暖かい感覚だけが体を包むの。その中に入っているだけでお肌がすべすべになって、髪も綺麗に艶々に光っているの。


 お湯の力って凄いのね。

 知らなかった。


 弟は二人のお子さん達と一緒にお風呂を入っていたわ。

 キャッキャ煩かったけれど、楽しそうな声が聞こえてきたの。

 ルードがこんなに明るい声を家で出すのは久々ね。

 兄もそう思ったようで、私と同じように風呂の方へ視線を向けていたわ。


 私と兄とキョウさんはテーブルでお茶を飲んでいたの。

 今回のお茶はちょっと渋い味だけれど、苦くなくてこれも癖になりそうなさっぱりとした味ね。

 お茶の味を楽しんでいると、キョウさんが話しかけてきたわ。



「明日から畑の修復に向かいます。ところで、先程食事中にお聞きしたご両親のお話ですが、ご両親は行商をされていたそうですね。その際の事故でお亡くなりになられたということですが、どのような状況であったかご存知ですか?」



 私がどうしようかと思っていると、兄が口を開いたわ。



「事故だと聞き及んでいます。運悪く魔物と遭遇し、積み荷諸共全て盗られたと。傭兵を雇っていたのですが、傭兵の手に負えず殺されたそうで、傭兵は命からがら逃げて知らせにきました」

「そうでしたか。それで、傭兵というのは?」

「村のライセンス持ちを雇っていました。その時雇っていたのは村長の息子さんのアレンさんと傭兵業として生活していたラルゴさんでした。ラルゴさんは亡くなりましたが、アレンさんは何とか戻ってきて」

「そうですか」



 キョウさんは顎に手を当てて何やら考えているようだったけれど、その時に弟達がお風呂から出てきたので話は終わったわ。


 そして、その日はキョウさんのネブクロというもので、久しぶりに何も考えることなくぐっすりと眠ることが出来た。本当に深くぐっすりと。

キョーコによってリフォームされたジェシーちゃんの家です。

兄弟達は美味しい料理と明るく綺麗な家に大喜びです。

そんな中、キョーコは彼らの両親の亡くなった理由を聞きだしました。

何やら背景が有りそうな内容に興味を示します。


次も少女視点で続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ