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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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056 開墾 前編

少女視点続きます。

 翌日朝早く、私はキョウさん達親子と一緒に畑に向かったの。


 兄も行くと言っていたけれど、病み上がったばかりの兄が無理をしてぶり返しても困るから、弟と一緒に留守番をお願いしたわ。


 キョウさんもそうした方が良いと仰ってくれたから、兄は渋々従っていたわね。ただ、まだ夜が明ける手前だから、私は魔物が出るかもしれないって出るのを止めたんだけれど、キョウさんは大丈夫だから行きましょうって。

 ……確かに昨日のことを考えれば大丈夫なのかもしれないけれど。普段の私でもあまり出歩かない日の昇る前の闇の中、私は鍬を持っていつもの道を歩いたの。


 今日の村の入り口に立っている門番の方は、近所の幼馴染だったツンツンとした赤髪が特徴的なライルだった。自分の背より大きな槍を立てて、背には弓の道具を背負っているわね。

 私よりは背が高いけど小柄で、悪戯少年っぽいあどけなさを残した表情が印象的だけれど、だからと悪戯っ子ってわけでもなかったのよねぇ。

 

 兄より一つ下だから、兄に懐いてよく遊んでいるのを見掛けたものだけれど、兄が両親の行商への道を選んで商業ギルドへの所属に進んだのと違い、彼は冒険者ギルドのライセンス持ちになることを選んだのよ。


 最初は兄と同じ道に進みたがっていた様だけれど、両親に反対されて、それなら冒険者になるとか啖呵を切って勝手にグレイズに行っちゃったんだっけ。そうして宣言通りにライセンス持ちとなって帰って来たから、彼のご両親は勿論、村の皆もたいそう驚いたのよね。


 彼はライセンス持ちだからこうして自警団に所属しているけど、普段は弓の名手として狩りで活躍しているそうよ。元々彼の家は農家の長男なんだけれど、農家の跡目は弟に譲ってしまったのよね。まぁ、冒険者としての仕事の方が農家より稼ぎも上になることの方が多いから、無理もない話だけれど。



「よぉ、今日も朝早くから野良仕事か。そこの連れは昨日来たっていうお客人か?」

「えぇ、そうよ。貴方も朝早くからご苦労様」

「そっか、有難うよ。それにしてもいつもより随分早いな。今日はそのお客人も連れてどこに行くんだ?」

「いつもと同じよ。私の仕事を一緒に手伝って下さるということだから、お願いしたの」

「へー、そうかい。それは良かったな。ま、こんな時間だ。何が有っても、俺は知らねーぜ? それは分かっているよな?」

「分かっているわ」

「なら良い。通ってよし」



 ライルはそう話して道を開けてくれた。

 村では夜の出入りが制限されているの。

 夜に出入りをした場合は村として責任は負わないというルールよ。

 夜は魔物が出る以上、どうしても襲われないとは言えない。だから、分かっていて出ていく者を助けることで他の村人に及ぶ危険を減らす目的があるの。

 ……昔、私と同じように夜に出て魔物に襲われて大騒ぎになった事が有って、それ以来そういう決まりになったらしいわ。


 いつもの道を進んでいくと、やっぱり来た。

 前方に現れた複数の目の光。大きさから昨日も現れたゴブリンだと思う。

 魔物は日の光が出ると引き始めるんだけれど、闇が支配している間は村の近くから虎視眈々と狙っているの。だから、村を出ると魔物が襲い掛かって来るのよ。

 私がいつも日が昇り始めてから出るのは、魔物が引き始めるのを見計らってのこと。

 上り始めるかどうかが大きな違いなの。



「パト、インディ、やっちゃって」

「「応!!」」



 キョウさんがそう告げると、二人が呼応して勢いよく小走りに飛び出していく。

 そうかと思ったら前方に光っていた目が次々に消えていくの。

 とても速く動いているのが分かるけど、何が起きているのかは全く分からない。

 一つ一つ減らされていくのが音も無くただ淡々と展開されていく。


 そう思っていたら唐突にキョウさんが私の背後を庇う様に動くと、細い棒を出して素早く何かを受け止める。

 甲高い音がしたと思うと、それは払われて着地する。

 私が振り向いて状況を確認すると、そこには剣を持ったゴブリンがキョウさんと対峙していたわ。

 ゴブリンが再び攻撃を仕掛けるけど、キョウさんの細い棒で再び払われると同時にゴブリンの剣が脆く折れてしまったの。



「え!?」



 そして、次の瞬間、唐突にゴブリンは奇声を上げて倒れたわ。

 その背には深々と矢が刺さっていた。

 キョウさんが見ている視線の先を追うと、ライルの姿が見えたわ。

 村の外の出来事なのに、どうして!?



「ライル!有難う!!」



 私が思わず感謝の言葉をライルに聞こえる様に張り上げる。

 ライルはそれに片腕を高く上げて応じただけで、村に走って戻っていったわ。



「良い腕ね。……どうやら二人の方も終わったかしら。あなたは大丈夫?」



 そう言って棒を素振ると左手で棒の先端を押さえたの。

 そうしたら棒が短くなったのよ。

 どうなっているのかしら。



「えぇ、大丈夫です」

「そう。じゃぁ、行きましょう」



 いつもの笑顔で先を促すキョウさん。

 二人の息子さんも何事も無かったように私達の前を歩く。

 


 畑に到着した私達は、開墾の前にキョウさんがおまじないをするという話になったの。なんでも魔物や悪いものを寄せ付けないおまじないで、それを行えば安全に畑仕事が出来るそうよ。


 キョウさんは収納魔法の空間に入り込んでいくと、小さな袋を持って出てきたわ。そして、私に開墾する予定の広さを尋ねると、彼はそれより大きめの広さの端に穴を掘って、袋の中にある赤い石を埋めて行ったの。

 丁度四角い囲みの四隅に埋めていった格好ね。

 それから彼が畑の中央に立って、先程使っていた細い棒を取り出して長くして構えたわ。すると、棒の先が青白く光ったかと思うと、キョウさんを中心に白い光が走って、四隅に埋めた石を結ぶように白い光が伸びると、それらがつながった瞬間にカッと光って上昇し、大きな四角い光の箱に包まれたようになったの。

 それはそう長く続かずに消えてしまったけれど、それが終わったらキョウさんが始めましょうって笑顔で私達のもとに戻って来たわ。


 指定した区画にはまだ切り倒していない木が有るんだけれど、二人のお子さんがそれらをあっという間に伐採してしまって、その後キョウさんが切り株に触れると、形の整った木材がどんどん出来上がって畑の畔に積み上がっていくのよ。


 ……私はそれを呆気にとられながら、既に開墾している場所を耕しながら見ていたわ。


 全てが終わると、畑の端にキョウさんの収納魔法から黒い塊を出して幾つか置くと、地面に手を付いて何かを始めたの。青白い光が地面から光ったかと思うと、黒い塊が無くなってキョウさんの手を付いていた地面から何かが生えたわ。


 初めて見る形。

 棒の上に尾の長い鳥が止まっている様な形のものなの。


 キョウさんが立ち上がってその鳥の尾を掴むと、唐突にその尾を上下したわ。

 そうしたら嘴から水が飛び出したの。

 どうなっているのかしら。



「キョウさん、それは一体!?」

「あぁ、コレ? 井戸ですよ。このポンプを上下するだけで水が出てきます。簡単でしょう?」



 にっこりと笑顔で説明してくれるけれど、私には何が何だかサッパリわからない。

 近くに寄って実際に使わせてもらったけれど、確かに上下すると水を吐き出すの。それもとても綺麗な水を。

 こんな魔法の道具を持っているだなんて、やっぱりキョウさんって凄い人なのね。



「あの、こんなものまで頂いてしまっては……」

「え? 農業には必須でしょう。こんな水場の遠い場所じゃ不便だし。歩けば川は有るけれど、近い方が楽に決まっているでしょう?」

「それは、そうですが」

「娘、父が良いと言っているのだ。貰っておけ」

「そうなのだ。そうなのだ!」



 インディくんとパトくんもそう言ってくれるけれど、本当に良いのかしら。



「有難うございます」



 私は深く感謝の気持ちを込めて言葉にした。

村を出るとゴブリンがお出迎えしてくれました。

そこで本来であれば不干渉のはずのライルが矢でゴブリンを仕留めてくれました。

そして、開墾作業に入ったのでした。


開墾作業続きます。

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