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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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054 お客

少女視点が続きます。

 私の暮らす村はポプリって呼ばれているの。


 村の産業は伝統的な民芸品を中心に行商で売り利益を得ていて、両親はこの村と大きな町のグレイズとの間の行商を引き受けることでそれなりの収入を得ていたわ。だから、私達の暮らしが辛いと感じたことは無かったけれど、村が豊かなわけでもなければ、貧し過ぎるわけでもなく、日々の暮らしがゆったりと過ぎ行く村だと思う。


 小さな村だけど、魔物から守るために自警団が組織されていて、村のライセンス持ちの人達がそこに入って魔物達の攻撃から村を守っているの。

 つい最近、これまで見たことも無い大きな魔物が襲って来たこともあったから、自警団の人の警戒は高くなっていて、村の入り口で交代で警戒に当たってくれているわ。

 

 私が三人の恩人を連れて村に戻ると、入り口で番をしているおじさんが声を掛けてきたの。

 このおじさんは非番の日は狩りに出て、魔物の毛皮を沢山持ち帰って来る狩りの名人として有名な人。年齢は父さんと同じくらいで、私の事も小さい頃から知っているから、私達の事を色々と気遣ってくれる優しい人。

 本来なら私の行動も咎められるところなんだけど……。



「お、ジェシー、そちらの方々は?」

「こちらの方々は私をゴブリンから守ってくれた旅の方なんです。お礼に暫く宿を提供してほしいということなので、私の家でお客様としてお迎えすることになりました」

「ほー、そうかい。それは良かったな。旅の人、ジェシーを守ってくれて有難う。この村は何も無いが、まぁ、ゆっくりしていくが良い」



 おじさんの言葉に、男の人は笑顔で会釈をしたわ。

 本当に物腰の柔らかい方ね。



「温かいお言葉感謝します。東方からの長旅で野宿生活の連続でしたから、久々の屋根のある暮らしを楽しみにしているところです」

「お~、そうかいそうかい。まぁ、ゆっくり休んでいきな~」

「はい、お言葉に甘えて」



 男の人が再び笑顔で会釈を返すと、おじさんがちょっと面食らった様な顔をしていたけれど、丁寧な対応に好感を持ったのか笑顔で手を振って見送ってくれたわ。

 内心、よそ者を入れないとか言われたらどうしようと思ったけれど、何事も無く済んで良かった。




 私は村外れにある私の家に向かった。

 途中井戸端でおばさん達に声を掛けられたり、広場でじろじろ見られたり、みんな気にしているのは感じたけれど、旅人自体はこれまでも何度もやってきているから、新しい旅人だという感覚で眺めているみたい。

 井戸端のおばさん達の明日の話題は、きっと旅人の容姿についての談義に決定なんだろうな。フフ。


 私達の家は元々は村の中心街の方に有ったんだけれど、借金の支払いのために売り払って村外れのあばら家に移り住んだの。最初は弟も嫌がったけれど、最近は私の事を困らせないために健気に笑顔で暮らしてくれている。

 ……そんな弟を不憫に感じても、私にはどうすることも出来ないのが辛いわ。



「ただいま」



 真っ暗な家の中に入る。

 昼間でも窓が無いので、明かりは隙間から入る光以外には無い。

 家は木造で土間と板間の平屋の広い家なんだけれど、何十年も昔に放棄された家で、村では幽霊屋敷みたいに言われていた場所をタダ同然で譲り受けたの。

 私達の経済事情を考えればピッタリなのだと思うけれど、これまでとの落差を考えると……ね。


 家の奥に兄は寝ている。

 ベッドを買うお金も無いから板間の上にワラを敷き、シーツ替わりのぼろ布を敷いて粗末な掛け布団を掛けて。体の事を考えたらもっと良い所に寝かせてあげたいけれど、売れるものを売らないと日々の食事にも事欠くほどの状況だから、兄には本当に申し訳ない気持ちで一杯。

 私は兄のもとに行き様子を窺う。


 土気色に変色した兄の肌。

 痩せこけてあの元気な頃の面影はない。


 たった一年前までは、村でも一二を争う力持ちで、兄の逞しい腕が頼もしく感じたものだったけれど、こんなにもやつれた顔を見ることになるだなんて予想も出来なかった。



「兄さん」

「……ジェシーか」

「ごめんなさい。起こしてしまったわね。あの、兄さん。私ね、今日森でゴブリンに襲われたんだけれど、その時にあちらの方に助けて頂いたの。それで、お礼に暫く宿を提供して欲しいということだったから、お連れしたの。良いかしら?」


 

 兄は少し頭を上げてお客様の方を向いたわ。私はそっと手を差し出して兄の頭の下に手を添える。兄がそれを感じて私の手にその重さを預けると、ゆっくり口を開く。


  

「……それは、良かった。お、お客人……何もないが、ゆっくりしていかれるといい」



 兄と私のやり取りを見て、男の人が板間に靴を脱いで上がってきたわ。

 私はそれを見て驚いて慌てて声を上げる。



「あ、あの、汚いですよ!靴のままお上がりください!」

「え? あ、そう? 分かりました」



 そう言うと彼は靴を履きなおして上がってきたわ。

 私がホッとしていると、彼は兄のもとに近付いてそっとしゃがむ。



「申し遅れました。私はキョウ。旅の商人です。あちらに立つ二人は私の息子で、銀髪の方はパトラッシュ、青髪の方はインディと言います。以後、お見知りおきを」

「……キョウさんと仰ったか。俺は……見ての通りでして、妹に迷惑かけ通しの不甲斐ない兄です。俺の許可は要らない。妹が貴方方を受け入れると決めたのだから、俺はそれを尊重する。気にしなくて良い」



 兄が呼吸するのも苦しいのに一生懸命話してくれている。

 成り行きとはいえ、お客様を泊められる様な状況ではないけれど、有難う。兄さん。



「あの、ジェシーさんで宜しいですね?」

「はい」

「お兄さんにこちらを飲ませてあげてください」



 キョウさんはショルダーバッグの中から小さなガラス瓶を出したわ。

 中には青い液体が入っていて、綺麗なカットが施された宝石の様にとても美しい瓶。こんなに素晴らしい細工を施したガラス瓶なんて初めて見るけれど、容器でこれほどの加工を施したものだから、中の物もかなりの高額のものだと思う。だけど、これは一体何かしら。彼はそれを私に差し出してきたの。

 私は驚いて彼の顔を見たら、彼は私に笑顔で頷くの。



「これは?」

「薬です。我々東方に伝わる万能薬でして、これも何かの縁です。使ってみて下さい。遠慮は要りませんし、お代も頂きませんから」



 私はキョウさんの言葉に、薬も買えない程貧しい我が家の状況を考えると、こんな幸運はまず有り得ないと思い、お言葉に甘えて試してみることにした。

 何もしなくても兄は衰弱していく一方だもの。

 兄の頭をそっと下して、私は彼から小瓶を受け取ったわ。


 瓶の蓋を抜き、兄の口元に持っていく。

 兄は薄目にそれを見つめていて、私が瓶を近付けると僅かに口を開けてくれたの。

 瓶の中身を口の中に咽ないように少しずつ注ぎ込む。

 兄の喉がそれをゆっくりと飲み込んで動のが見えたわ。

 瓶の中身を全て飲み込むと、兄の体が仄かに青白い光を帯びだしたの。



「え!?」



 光は次第に強くなると緑色に変色して輝いて広がる。

 その光の広がりに合わせる様に兄の血色が徐々に良くなっていく。

 何が起こっているの!?

 光が収まる頃には兄の顔色は元の健康な頃の色合いに戻っていたわ。

 痩せこけていた顔もほんのり膨らみが戻って、体全体で消えていた肌の張りも、痩せてはいるけれど戻っているみたい。

 数か月ぶりに兄に年相応の顔が戻って来た。



「……ジェシー」



 私は目の奥が熱くなってくるのを感じていた。

三人を家に連れて帰って来たジェシー。

村人達はお客人に興味津々の様子です。

家に帰宅し病床の兄に紹介すると、客人が薬を差し出してきました。

彼女はそれを有り難く受け取り飲ませることにしました。


家でのやり取りが続きます。

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