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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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049 ラズウルドオルム

水源の洞窟での出来事の続きです。


「……う、うぅ。俺は……!?なんだ、お前は!?」



 少年はしゃがんで見つめている私に気が付くと、ガバっと起き上がったわ。

 まるで妖怪でも見たような表情だったのは解せぬ。

 


「ちょっとー、助けてあげたのにお前はないでしょう」

「なんだと!? この俺を誰だと思っている!!」

「ラズウルドオルムでしょう?」

「う、そ、そうだぞ!」



 あら、すっぱり正体を言い当てられて面食らっているわね。

 しかも全く私が動じる様子も無いことに戸惑っていると言ったところかしら。魔物の事情は知らないけれど、私がお子様如きに恐れをなすと思っている辺りが甘いわねぇ。



「それで?」

「……だから、人間如きが俺様に触れて良い存在ではないのだぞ!」

「あらやだ。もう触っちゃったわよ。あなたの服を作るのに」

「は!? ……え、うわ、なんだこりゃ!?」



 彼は慌てて自分の全身を見回している。

 服に触れて引っ張ったりしたかと思えば、自分の手や足や顔に触れて確認しているみたいね。っていうか、あの子の目ってやっぱりパッチリと大きいわねぇ。金色に光る綺麗な目に困惑の色あいを乗せてあたふたしている姿は滑稽ね。

 私は一息吐くと言ったわ。



「あなた、そこの池に塵になっていたの。その原因は私にあるから、責任は感じているわ。だからお詫びにあなたの体を再構築したの。流石に流れ出てしまった細胞まではどうすることも出来なくてね。あなたを元の大きさに戻すことは出来なかったわ」



 少年は私の言葉に背後を振り返って池を見つめる。そして、洞窟の周囲を見回した後私の方を向いたわ。その表情はまだ困惑している感じかしら。

 まぁ、無理もない反応だとは思うけど。



「お前は何者だ。俺の体を破壊しておきながら、それを再び再構築しただと? そんなことが出来る人間はいない!」

「あら、現にここにいるじゃない?」

「そ、そんなのは有り得ない!それに何だこの服は。……意外に着心地は良いが」



 自分で反発する発言をしておきながら、素直に着心地の良さを認めたわよ。

 何この可愛い生物!?



「ふふ、気に入ってくれたなら良かったわ。さて、あなたを復活させたのには理由があるのよ。あなた、水神でしょ?」

「は!?」

「あなた、ここのすぐ近くの村から生贄貰っていたんでしょう?」

「……」



 少年は私の言葉に目が泳いでいるわね。

 どうやら図星かしら。



「その反応から察するに当たっていた様だけれど、水神ではないの?」

「……それは人間どもが勝手に付けた名だ。俺は魔王様に仕える身。神であるはずがない」

「へぇ~、そうなの。人間との契約を結んだ理由は何かしら?」

「……」



 否定をするわけではなく、人間に責任転嫁といったところかしら。それより、魔王に仕えるって言ったわよね。これは後々にも響く重要ワードね。とはいえ、現段階で深堀しても教えてくれなそうだし、現時点で必要な情報ではないわね。


 それにしても、まただんまりってことはあまり言いたくない理由なんでしょうけれど、あたしがそんなんで引き下がるおネエだと思ったら大間違いよ。

 私は素早く彼に近寄ると、一気に脇腹を擽ってやったわ。



「な、何をする!ぎゃははは、うひゃひゃ、あははは、やめ、やめろって、あははは、ぎゃあははは、ま、まいった、まいったから、やめてくれ!た、たのむから!」



 私はその言葉を聞いて擽るのを止めたわ。

 彼の眼には涙が浮かんでいる。

 涙目も可愛いとか言ったらSかしら?

 ひゃだ、あたしSの才能開花?

 自分ではМっ気むんむんだと思っていたけれど。



「はぁ、はぁ、はぁ、あー。あれは二百年程前だっただろうか。人間どもが集落を越えてラズウルドの地に入ろうとしたのだ。その時に俺は村人達を懲らしめ二度とその気を起こさぬようにした。そうしたら、村人達が詫びに生贄を出すというから受けたまでだ」



 息も絶え絶えにもだえ苦しんだ呼吸を整えながら、彼は素直にゲロッたわ。そうよ。初めからそんな感じに素直だったら優しくするっていうのに。

 ……あ、ごめんなさい。

 こんな可愛い生物を放っておく程お人好しじゃなかったわ。



「それで村の若いおねーちゃんを見繕って紋を付けて寄越せと集ったと?」

「ん? 俺はそのようなことはしない。生贄を必要としていたわけではないからな。確かに最近やってくる者には微弱な魔力紋が付いていた。いつから始まったのかは覚えておらぬがな」



 この子の目を見ている限り、嘘をついている様には見えないわね。

 確かに彼の言う通り、ラズウルドオルムの以前のステータスを考えれば、人間の一人や二人を食らったところで微々たるものだったでしょうし。微弱な魔力紋っていうのが引っかかるわね。

 たぶん、彼が本気でそのような物を用意したなら、決して離れることのない戒めとして刻むでしょうし。


 これはまだ謎が隠れている様ね。

 それはそれとして。



「ねぇ、村人達の話から知ったんだけれど、生贄が来なくなった際に嫌がらせをしたそうね? 井戸の水を枯渇させたり、川の水を止めたり。ここを見る限り、からくりは理解しちゃったんだけれど、これをやったのもあなたじゃないの?」



 私に問われて彼は青い顔をしているわ。

 あ、これはやったのね。



「へぇ、そうなの。返事が無い所を見るとやったと受け取るわね。構造は理解しているのよ? そこの川の水を止めるのなんて放水口を止めれば良いだけだし、地下水脈も村に行く方向を止めてしまえば良い。あなたは水の魔物だから、水の流れについて理解しているでしょう? そんなの簡単よね?」

「……認める。だが、それは百年以上前の話だ。それ以来はやっていない」

「え? 村長の記録では二十年ほど前にも有ったようだけれど?」

「俺は一度しかしていない。何かの間違いであろう」



 彼は否定したけれど、記録では存在している。


 これはどういうことかしら。


 彼の表情を見る限りは嘘を言っている様にも感じられない。

 彼の言葉も真実なのだとしたら、誰かが彼を騙っているのかしら。



「ねぇ、前回の生贄はいつなの?」

「前回は30年程前だな」

「え、30年前?」



 ちょっと待って、記録では十年に一度じゃなかったの?



「そうだ。老人が捧げられてきたな。まあ、人間の魂に老若は関係ないが、そいつにも紋はあったな」

「え、老人なの? 若くなくていいの?」

「何を驚く。俺にとっては人間が戒められるのであれば良いのだ。何か問題が有るか?」

「……いえ、無いけれど、そうなの」



 事も無げに語っているけれど、これは重要な事よね。

 彼からすればそういう認識であると考えれば、確かに老若は関係ない。

 そもそも彼も言っている通り「生贄を必要としていない」わけだもの。



「おい、それで俺に何が望みだ」

「へ?」

「何の目的も無く俺を復活させるような酔狂な真似はしないであろう。人間はそういう生き物では無かったか?」



 彼は恨めしそうな顔をしつつ私に望みを問う。でも、望みと言われると何も考えていなかったのよね。……そもそも彼を復活させることだって予定外だし。

 ふむ、どうしたものかしら。



「そうねぇ、村の生贄の儀式の廃止に付き合って貰おうかしら。あとは、貴方がどうしたい?」

「は?」

「だから、私にとっては前者しか要らないのよ。貴方はこの後どう暮らすつもり?」

「……人間、お前は一体何者なのだ? 俺に罰を下すのかと思えば、俺に望みを聞くとは意味がわからん」

「私はキョーコよ。覚えて頂戴。そして後者の件については、貴方って元は闇の魔物だったけど、今は聖なる存在に変わったわけよね。これは私の想像だけれど、ラズウルドが魔物の巣窟だとすれば、聖なる存在となった貴方にとっては危険な場所になるんじゃないかしら。どうなの?」



 彼は私の言葉に目を見開いて驚いていたわ。

 そして自分の体の具合を調べる様に触れ始めたの。

 一頻り調べ終えた後の表情は、何かを諦めたような暗いものになったわ。



「……キョーコよ、お前は俺を幻獣に変えようとしたのだな。ようやく俺が壊れた理由が分かった。そうか、俺は幻獣となったのか。……お前の言う通り、俺はこの場で生き続けるのは難しいだろう。だが、残念ながら行くべき場所は無いのだ」



 彼は伏し目がちに話しているわ。

 彼からすれば古巣からの別れを惜しむ気持ちもあるでしょうね。



「……一緒に来る?」


 ラズウルドオルムであった少年から聞いた話には、キョーコが事前に調べた内容と一部食い違いがありました。しかし、少年に嘘をついている様子は見えず、これをどう解釈したものかキョーコも困惑です。

 次も水源の洞窟でのお話が続きます。

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