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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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044 拾われて

予告通り視点が変わります。



「げほっ、がほっ、がはっ……」



 あたしは咽て咳き込んでいた。


 目を開ければ大小様々な石が転がっているのが見える。

 夕暮れ時かしら。


 体中が濡れていて、近くで川のせせらぎが聞こえる。

足の方が少し水に浸かってる感覚があるわ。

 あたしは再び目をとじる。


 あたしの記憶に有るのは、潜水艇の中でキョーコが錬金術を使っているところかしら。外側がダメなら中からやってしまえば良いのよってケリーが言って、キョーコがそうよねって応じて、ケリーが空魔法で結界を張って船体を守りながら、キョーコがキョーベンを使ってやり始めたの。そして、錬成が上手く行き始めて周囲の魔物の胃壁に光る筋が走って、閃光が……その後は覚えてないわね。

 

 足音が近づいて来る。

 誰かしら、キョーコ? ケリー? ……女の声だから違うわね。でも、何を言っているのかサッパリ。


 あたしは目を開けて声のする方へ精一杯腕を上げる。

 近付いてきたのは黒髪の少女。

 年齢は中学生くらいかしら。

 綺麗な顔をしてるわね。

 慌てた様子で何か言っているけど、本当に意味が分からない。彼女は私に優しく触れると、後方に呼び掛ける様に大声を上げていたわ。その後、彼女の後ろから男が二人駆けてくるのが見えた辺りで、また瞼を閉じたわ。



 次に気付いた時は板間の上だったわ。

 真っ暗で周囲の状況は掴めないけれど、ゆっくりと起き上がったわ。

 体の状態は手足も何処も異常は感じられなかったわね。

 持っているものも盗まれた形跡も無いから、さっきの女の子達に拾われたのかしら。


 あたしはゆっくり立ち上がると、ここが馬車の幌の中だということに気付いたわ。

 どうしようかと考えたけれど、出たとこ勝負で行く他ないわよね。あたしはわざと靴音を立てながらゆっくりと幌の外に首を出したわ。そうしたら、馬車の外に二人の男が駆け寄ってきたの。

 革の鎧を装着したいかにもって感じの剣士が二人ね。

 暗いから顔とかはよくわからないわ。でも、慣れているのか構えも様になっているし、この人達の目は堅気な雰囲気の目ではなさそう。……どちらかというと、人殺しでもしてそうな鋭い感じ。もしかしたらしているのかもね。

 


「○×▽□○●△×!!」

「待って、敵意は無いわ」



 あたしはそう言って両手を上げたわ。

 あたしの仕草を見て、二人は馬車から降りろと手振りで示してきたの。たぶん、私の言葉が理解できなかったから、彼らも言葉が通じないと理解したのね。

 あたしは手を上げたまま馬車から飛び降りたわ。



「△□●×▼××」

「どういう意味かしら?」



 再び呼び掛けてきたからこう答えたら、彼らのうちの一人が構えていた剣を鞘に納めて、それを地面に置いて、あたしに指をさしてこうしろって感じに促してきたの。



「りょーかい」



 あたしは言われたとおりに剣を鞘ごと外して地面にそっと置いたわ。そして、再び両手は上に上げたの。



「これで満足かしら?」



 あたしは笑顔でそう告げて見たら、相手は困惑している様子ね。



「□□●▼×○△」



 あたしの背後から、つまり馬車の前方の方から年配の男の声がしたの。

 声の主はランプを持ってゆっくりと近づいてきたわ。

 その人は着物というか作務衣の様な服を着ていて、頭に中国人が被ってそうな帽子を被ってたわ。特徴的な竜の髭の様な髭が伸びていて、いかにも東洋人というのは分かるかしら。

 彼は何かを言って二人を下がらせると、あたしの手も降ろしてくれという様に手振りで指示してきたわ。

 あたしが指示通りに降ろすとニンマリと笑顔を浮かべて何か優しく声を掛けてくれていたけれど、相変わらずサッパリ分からない。でも、敵意は無さそうだから。



「助けてくれて、有難うございます」



 あたしはそう告げて深く礼をしたわ。

 そうしたら、男は私の肩に触れて、礼は不要だという様にもう片方の手を左右に振っていたわ。

 それを見て礼を直すと、男はホッとした様な表情を浮かべた後、何やらまた声を掛けて、そして背後に呼び掛けていたわ。

 目をぱちくりして見ていると、男の背後から先程河原で見た女の子が飛んできたと思ったら、彼女は手にスープの入ったサラを持っていたの。木のスプーンもご丁寧に入れてあって、それをあたしにそっと差し出してきたわ。

 


「これを、あたしに?」



 あたしは指でスープ皿を指してから、その指を自分に向けて、貰っても良いのか尋ねてみる。

 彼女はニッコリとほほ笑んで頷いたので、あたしも笑顔で頷くと、そっとその皿を受け取ったわ。

 あたしが皿を受け取ったのを見ると、半ば中国人っぽい男がそっと背中に手を当てて私を誘導し始めたの。

 馬車の前方でたき火をしていて、そこに石で組んだ即席竈でスープを作っていた様ね。

 先程あたしに剣を向けていた男達が火の近くに座ってスープを食べていたわ。あたしも彼らのもとに促されて座り、一緒に頂くことになったの。


 彼らは色々なことをあたしに話しかけて尋ねていた様だけれど、本当に全く分からなかったわ。

 女の子が心配そうにあたしのことを見て、中国人風の男に何やら頼んでいる様子ね。彼の方は女の子の頼みを聞き入れたのか、あたしの肩にそっと手を置いて、何やら優しく告げるとぽんぽんと肩を叩いたわ。たぶん、あたしのことを置いてくれるとかそんなところなんでしょうね。

 あたしは伝わるかわからなかったけれど、スープ皿を置いて握手を求めてみたの。男は頷いてガッチリと握手を返してくれたわ。とりあえず、彼らはあたしのことを保護してくれる様ね。


 食後は女の子の誘導で馬車の中に案内されたわ。

 そこで毛布を出してくれて眠る様にってことなんでしょうね。

 あたしはそれに甘えて眠ることにしたわ。






 パチパチと木が火の中で爆ぜる音がする。

 焚火の明かりに照らされるなか、二人の男がその場で静かに話していた。




「老師、この剣はどのように力を加えても鞘から抜くことが出来ません。それどころか乱暴に壊そうとしても傷一つ付かないのです」



 傭兵の剣士の一人で今年で50を数える男が、白銀に輝く世にも美しい宝剣を手にそう告げた。

 老師は彼から受け取ると鞘から剣を抜こうと試みた。しかし、彼の言う通り微動だにせず抜くことは出来なかった。



「これは相当な業物じゃのぉ。持ち主を選ぶ宝剣であるならば、持ち主も相当の手練れと見て間違いないじゃろう」

「どうします?」

「これほどの宝剣の持ち主じゃ。我らが恩を売り庇護を受けるならば利があると思わぬか?」



 見ず知らずの男を受け入れるという老師の言葉は俄かに信じられないことだが、実際にこの様な物を所持している男が普通の男であるとは言えない。

 ただのこそ泥が盗むにしても、これほどの物を盗むとなると、それを打つ刀匠の神通力の前には不可能と言う他無い。盗むにも相当の力が無いと無理なことなのだ。故に男が只者でないことは確実。その上でこの剣を振るう者を味方に出来るとすれば、確かに大きな利が有ると言える。

 しかし、それを判断するにはあまりにも他に材料がなく、賭けの要素の方が大きく感じられた。それでも老師が賭けるという以上、判断が覆ることは無いのだろうが。



「では、老師はあの男を先程の話通りに保護するのですね」

「まぁな。孫娘の願いでもあるし、彼は深々と礼をしてきた。強き者がわしの様な老いぼれに礼を尽くすというのじゃ。そのような対応をする若者をわしは見たことが無い。強き者というものは大抵傲慢を極める。己の力を示してこそという愚か者が多い中で、何という心の清らかな方だろうか」



 老師は微笑んだ。

 傍らに毛布を被り眠る孫娘の姿を見ながら。

ガリ編です。

ガリの置かれた状況について明らかになりました。

次も引き続きガリ編です。

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