018 レベルアップ
私は大声を上げたわ。
でも、すぐに近づいて来る物音はしない。
何処へ行ったのかしら?
その辺を見てきて良いとは言ったけど、何かあったのかしら。
それより、このまま帰ってこなかった場合はまずいわね。
最悪錬金術で即席の家を作るとか考えないといけないけれど、パトラッシュが居なくなるなんてことは無いと思うのよ。
うーん、そうは言っても暗くなってきたし、うさちゃんがうようよ出てくる可能性を考えると、動かないわけにはいかないわよね。
とりあえず動くためには用意が必要ね。
網バッグに入っている大量のポンポンの綿毛だけど、このままだと嵩張って仕方ないから糸ボールにするっきゃないわね。ということで、ぱぱっと糸ボールにしたら、網バッグの中身が半分以下に収まったわ。
で、この網バッグを背負いやすくるために、錬金術で網バッグをバックパック型に成形しなおしたわ。これで背負ってしまえば嵩張らない。そして、折角だからうさちゃんの毛皮だけ分離して頂いておくことにしたの。一応戦利品ということで。
あ、角もあれば良かったけど、生憎顔面は氷柱でガッツリ潰れましたので。テヘ。
仕方なく私は川沿いを歩き始めたわ。
パトラッシュの背に乗って15分の距離でも、私の足では一時間以上掛かることは確実な距離。
体力に自信が無いとかは無くても、魔物に対して自信が有るかと言われたら正直無いわ。
ふと、思いついて川岸に足を運ぶ。
そこで手を付いて錬金術を発動。青白い閃光を発して、ほい!出来上がり!
私はミスリル銀で出来たショートソードを作ったわ。思った通りというか、やっぱりこの辺にはミスリル銀が有るのね。MPを10消費してこれが出来るなら儲けものじゃないかしら。私は更に鞘を作って腰のベルトに刺したわ。
あたりが暗くなっていく。
周りが見えない中でも進むしかない。
剣を片手に進んでいく私。
まさか一人でこんな場所を歩くことになるとは思ってもみなかったから、どうしたものやら。
暗いとはいえ、目も少しずつ暗さに慣れていっているので、全く見えないわけではない。それに、鑑定眼を発動させているので、周囲の物の状況も分かるというのもあり、魔物の気配も遠視であれば避けるルートをとっている。
そんなことをしながら歩いていれば、やはりというか。
鑑定眼のレベルが上がりました。
鑑定眼 4 → 5
世界の基礎知識3が解放されました。
……確か、ケリーの話では用途詳細が解禁されるんだったかしら?
私は近くの草を鑑定してみた。
鑑定結果 「プルマニア」……薬の材料。食用不可。
主に麻痺毒に効果のある野草。煎じて飲むと効果が有る。
……本当だわ。用途がちゃんと出ている。
とりあえず、貴重な麻痺毒に効果のある草なので、その草を摘んでバックパックの中に入れたわ。
再び歩き始めた私。
辺りが完全に真っ暗になったけど、鑑定眼のお陰で周囲にはウィンドウの山。
暗くて怖いなんて考えている暇なく情報を読みながら歩いている感じかしら。
しかし、こう何でもかんでも表示されていると読み難いのよね。
フィルター掛けられないかしら。
そう思ったら視界の中央にウィンドウが新たに開いたの。
表示切替
1、オールスキャン
2、エネミースキャン
3、アイテムスキャン
私は迷いなく言った。
「2でお願い」
その瞬間、あれほど沢山あった草花や色々なアイテムに関する情報が消えて、魔物の情報のみが表示された。
み、見易い。
初めからこれが出来ていれば……と思ったけど、こんなことにでもならなければ鑑定に頼り切ることなんて無いわよね。そう考えたら、まぁ、フィルタリング出来てオッケーと思うことにしたの。
ふむ、しかし、魔物って意外にいるのね。
うさちゃんことアルミレージの他に、イノーって奴と突っ走っているのが出てたり、バルバってのが飛んでいるっぽいのがわかる。
あの突っ走り方はパトラッシュが仕留めた豚っぽい魔物かしら。バルバはこんな夜更けに飛んでいるんだから、蝙蝠や梟みたいなものかしらねぇ。
暫く歩いたけど何事もなく進めたわ。
遠くで魔物が動いているのが表示で分かるので、そっちには近付かないのを徹底していたから。
それにしても、腹が減ったわね。
何も食べ物を用意していないし、食べられるものと言っても生の野草をそのまま食べる気にもならないし。
時間はかかっても家に戻れば食事には有りつけると思うから良いんだけど。
そんなことを思っていたら、背後から急速にこちらに近づくアラートが出たの。
鑑定眼は見えている視界以外は基本的に表示しないけれど、エネミースキャンについては親切にアラートを出してくれる様ね。
振り向けば表示が出たんだけど……。
魔物 「ダークウルフ」……LV,14
HP529/640
MP243/480
つ、つよ!?
まって、もしかして、パトラッシュの元の姿かしら。
だとしたら、私一人で勝てるのかしら。
逃げると言っても逃げられるような速さじゃないし、戦うっきゃないのだけど。
うーーー、仕方ない。
距離があるうちに片を付けるわ。
私は手を前に出して構える。
「スピンアイス!」
パキパキペキペキ……パシュン!!
氷柱が前方に向かって瞬時に飛んで行った。
表示が横にずれた。アレ、つまり避けられた!?
やばい。
あのスピードを避けるとか求めてないから!
ぬー、連射しても意味ないだろうし、私のMPも連射に耐えられるとは限らない。
と思ったら、来た!
「ガウガルルルルルル!!!!」
「ヌリカベ!!」
ドン!
「ギャインキャン!!!」
ダークウルフは私に向かって飛びかかってきたけど、とっさにヌリカベを使って壁を作ってやったらそのまま正面から衝突したわ。
自分の体重にスピードが乗った衝撃をもろに受けた哀れなダークウルフは、ヌリカベにぶつかった反動で背後に倒れたわ。そして、脳震盪を起こしているのかピクピクといっている。
「スピンアイス!」
今度は完璧に決まったわ。
ダークウルフは頭を氷柱に貫かれてピクリとも動かなくなったの。
ひやひやさせられたけど、何とか撃退出来たわね。
レベルが上がりました。
キョーコはLV,7になりました。
それぞれのステータスは以下の様になりました。
キョーコ
年齢 37 LV,7 職業:錬金術師
HP120/330(180UP)
MP300/1000(620UP)
LP9/10
AT18→36(18UP)
DF14→32(18UP)
MA58→268(210UP)
MD66→246(180UP)
SP15→45(30UP)
LU55→111(56UP)
スキル
錬金術 LV,7
鑑定眼 LV,5
画 力 LV,10
調理術 LV,5
裁 縫 LV,7
工 芸 LV,8
調 教 LV,9
集 中 Lv,2
魔 法 LV,4
水属性 LV,2
土属性 LV,1
火属性 LV,1
風属性 LV,1
称号:魔法使いのお姉
スキルレベルが上がりました。
集 中 2 → 5
魔 法 4 → 6
水属性 2 → 4
土属性 1 → 3
……一気に5も上がったよ。
とりあえず危機は去った。
私は再び歩き出した。
レベルも上がったことで心にちょっとだけ余裕が出来るかというと、いまいち実感が湧かない。
こう、なんというか「強くなった!」という様な目に見える変化が有るわけでもなく、数値的な部分で上がりましたと表示が有っただけなので、それがどの程度という部分では全く意味が無い。
いや、上がらなくて良いわけじゃないのだろうけど。
護身用に剣を作ってはみたけど、結局魔法で倒すなら魔法専門になった方が良いのかしら。とはいえ、魔法が使えない状況が有るかもしれないと考えるとそうも言ってられないのか。うむー。ダークウルフの様に魔法を避けることが出来る魔物が現れた時に、今回の様な運良くヌリカベで防げるラッキーは続かないだろうし。
ぬぬぬぅ、だからと剣術が出来るわけでもないのが困りものよねぇ。
と、そこへダークウルフが前と後ろから来た!?
二匹は同時に跳躍して私に飛びかかって来る。
私は慌てて横に転げて回避したけれど、ダークウルフが交差する様に着地するとすぐにこちらに向かって飛び掛かて来たわ。
私は剣をぶん回して牽制を試みるも、一匹はその切っ先に当たってキャインって回避行動をとったけど、もう一匹が私の右足を強かに引っ掻いたわ。
「痛!?!」
痛い、マジで痛い。
痺れるように痛いけれど、そんなこと言ってられない。
「ぬ、ヌリカベ!!!」
涙がちょちょぎれんばかりの痛みに耐えて突き出した手の向こうに、もう一度飛び掛かろうとしたウルフ達を遮る様に土の壁がぬぅっとせり上がる。
二匹のダークウルフは回避できずそのまま衝突して背後に跳ね返されたわ。でも、痛みで集中が持たなくてしぱしぱと崩れたヌリカベ。
「スピンアイス!」
脳震盪を起こして痙攣しているダークウルフを狙ってスピンアイスで貫いたわ。
一匹は何とか倒したけれど、もう一匹は起き上がって周囲を駆け回り出した。
これじゃ狙いが定まらないわ。
私は剣を構えながら足の痛みを我慢して立ち上がった。
時折ぶんぶん振り回して牽制するもあざ笑う様に左腕が引っ掻かれたの。
服が破れて血が垂れる熱を感じる。……結構深いのかも。
痛い!チョー痛い!この年になってどんな罰ゲーム!
っつか、このままではやられるわ。
何とかアレを止めるには……そうよ、足を止めるだけならアレが行ける!
私はヌリカベを複数隆起させる。通常の大きさではなく、ハードル程度の大きさのものを複数個同時に隆起させたわ。
ダークウルフは最初の一つ二つは回避したけれど、三つ目で足を引っ掛けてバランスを崩し、四つ目に体を激突させたわ。
この瞬間を待っていた!
「スピンアイス!!」
スピンアイスが壁の前に倒れたダークウルフを貫いたわ。
スキルレベルが上がりました。
魔法 Lv,6 → 7
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……やった。……くぅ、痛い。めっちゃ痛い。あーん、もぉ」
痛みに顔が歪む。
血はだらだら出まくってるし、至る所がズキズキと自己主張しちゃってる。
はぁ、私なんでこんなことになってるんだろう。生きているだけ丸儲けかもしれないけれど、こんなんがまだまだ続くのよね。帰るまでどのくらいあるのかしら。
こんな状況でもガリなら剣で対応出来ちゃうのよね。
異世界生活開始早々にその能力の高さを見せてくれていたから、スペック通りの行動を出来るのがガリの凄い所なんだと思うの。その点、私は出たとこ勝負感が強いでしょう?
自分で言うのもなんだけど、考え無しなのよねぇ。困ったわぁ。
とりあえず、バッグから傷薬を出して傷口に塗ったわよ。
「つぅ……」
傷は緑色に輝いて治ったけれど、塗った瞬間の沁みることと言ったら発狂したくなる程よ。
何とか我慢して塗って治ったとはいえ、完全に回復した様な感覚は無いわね。体力は削られているし、流した血までは戻らないんだと思う。
トボトボと歩きながら考え事をしていると、遠くに以前パトラッシュの背で見た洞窟の表示が有ったわ。以前同様に未踏破と出ているだけ。たぶん、次のレベルにならないと地名とかは表示されないんでしょうね。とはいえ、未踏破ということは、名前なんて無さそうよね。
こんな真っ暗な中、洞窟に一人で向かうなんて馬鹿なことは流石にしないわよ。
それにしてもパトラッシュは何処に消えたのかしら。
あれから30分くらい歩いたけれど、やって来る気配もないのよねぇ。
やってくる子は黒いワンコばっか。
それを必死になって魔法で打ち倒してばかり。
人間必死になれば何とかやれるものみたいだけど、このまぐれはどこまで続くかしら。
いや、続けて見せるわよ。根性で。
何が起こっているのかしら。
……いやだわ。
レベルが上がりましたが、パトラッシュがいません。
日も暮れて魔物が沢山出てきました。
負傷しつつも頑張るキョーコです。




