013 ポンポン
お風呂は良い気分で入れたわ。
広いバスタブに足を伸ばして入れるし、ここは外だからまるで露天風呂。
異世界二日目の朝が露天風呂だなんて、よくある流行りの異世界小説でもなかなか無いっしょ。
でも、お風呂に入れたのは良いんだけど、石鹸やシャンプーが無いのは不便ね。
それにドライヤーも無いから髪のセットが台無しよ。
整髪料はバッグの中に携帯用があるし、香水も入れてあるんだけれど。
錬金で材料を集められたら良いんだけれどねぇ。上手く行くかしら?
タオル代わりにタオル地のハンカチで拭っては絞ってを繰り返して何とか拭き終わったけど、タオルも本当に何とかしたいわねぇ。綿花なんてこんな山奥に生えているのかしら。ウサギの毛皮なら用意できるけど、あれじゃ拭けないものねぇ。
私が着替えて出てくると、ケリーが寝ぼけた顔して降りてきたわ。
「あら、ケリーおはよう。お風呂入ったら。今私は上がったところなの。あんたが最後だから好きにお湯を使って良いわ~」
「ん~? おはよう。分かったよ~」
ぼけぼけとした雰囲気にトボトボと歩く足取り。
本当に大丈夫なのかしら。
あの子、意外に朝が弱かったのねぇ。
「あ、ケリー!タオルは無いからハンカチとかで拭きなさいよ!分かったー?」
「分かったよ~!」
彼はそう言いながら手を振って入っていったわ。
まぁ、言うべきことは言ったから良いでしょう。
日差しも強くなってきて、少しずつ気温が上がってきている。
草原は日差しを受けて草花が綺麗に輝いて見えるわ。素敵ね。
私はそこをゆっくりと籠を持ちながら歩いて進む。
草原に鑑定眼を向けてみると、色々な種類の草花の名前が浮かぶ。
お馴染みのクレディルとフォルボーの他に、赤い花のカーマン、桃色のピレア、橙色のサーミシュ、白い花のポンポンって表示が出ているわ。
それぞれの鑑定結果は以下の通り。
鑑定結果
「カーマン」……赤い花弁が特徴。染料。食用可。
「ピレア」……桃色の大きな花弁が特徴。解毒薬で使用。食用不可。
「サーミシュ」……橙色の小さな花。麻痺毒に効果。食用不可。
「ポンポン」……白い綿毛が特徴。繊維製品の原材料。食用不可。
え、いきなりビンゴ!?
ポンポン、あんた凄い子ね。こんなところに咲いちゃってるの?
あ、しかも、結構咲いてるじゃないの。
とりあえずポンポン狩りよ!
私はポンポンを摘んでいったわ。
綿花と違って棘が無いから摘みやすいのよ。
それを持ってきた籠に山盛り摘んでから家に戻ったら、丁度ケリーがお風呂上がりだったわ。
「あら、お帰り~。どうしたのそれ~」
「ただいま。これね~、この世界の綿花っぽいのよ~」
「あぁ、確かに有ったかも~。食用不可ってあったから摘まなかったけど~」
「そういえば、ケリーは食料探ししてくれていたものね~。でも、これで糸を作れたら、そこから縫製品に入れると思うのよ~」
「わーい、出来上がるの楽しみに待ってるよ~。あ、そうそう、そろそろ良い感じに鍋が温まっていると思うから、ご飯にしよ~」
「そうね、私も丁度良い感じにお腹が空いているわ。ガリは?」
「ガリなら先に上に上がってるよ~」
「そう、じゃぁ、私達も上がりましょう」
朝食は昨日の鍋の食べたわ。
ウサギ鍋は良い感じに味が染み込んで、昨日とはまた違った美味しさを味わえたの。
食事中に今朝のパトラッシュの収穫の話をしたら、ケリーの顔色が物凄く悪くなったのよ。
彼には悪いことしちゃったかしら。でも、伝えておかないと忘れちゃいそうだし、冷蔵庫の用意も頑張らないとだし。
あ、でも、その前にあのポンポンを弄り倒すのが先だけど。
「ふぁぁ~、ご馳走様~。美味しかったわ~。ケリー、今日も期待しているわよ~」
「ほんと、マジ美味しいよねぇ~。あたし、ケリーが居てくれて本当に良かったと思うわぁ」
「もう、二人とも〜、褒めたってサービスしないんだよ~?」
私達に上目遣いの悩殺視線を出したって無駄なのに、全くこの子ったら。っていうか、私達の年齢を考えたら無謀よ!……まぁ、それを無視できる若作りっぷりがケリーの怖いところだけど。
ガリは今日は家の周辺に柵を付けるって話をしていたわね。
ケリーは食料を集めて回ってくれるそうだから、私はマイペースに錬金ってことでそれぞれ動き出したわ。あ、食事の片付けは各自でするって提案したんだけど、大した量じゃないからとケリーが請け負ってくれたの。
申し訳ないけど本当に助かってるわ。
胃袋掴むって大事よねぇ~ってしみじみ感じちゃった。
家から降りてきたら、パトラッシュがお座りして待っていたの。
どうしたのかしらと声を掛けたら、私のことを待っていたのですって。
まぁ、なんて健気で主思いなのかしら!
「主、何処かへ移動するならば、我の背に乗ると良い」
そうすまして言いながらも尻尾は今日もブンブンよ!
「まぁ、嬉しいわ。でも、私はちょっと実験がしたいのよ。だから待っててくれるかしら?」
「分かった。必要が有れば声を掛けてくれ」
ほんのり耳が垂れた気がするけれど、納得してくれたからよしとしときましょうか。
ちょっと可哀想にも感じるけれど。
「えぇ、有難う。そうだ、近場なら適当に出歩いていて良いのよ。必要になったら大声で呼んであげるわ」
「そうか。では、呼んでくれ」
そう言ってパトラッシュは風の様に森の中を駆けていったわ。
速いわねぇ。
私は森の中でもぶつからずに走っていく様を見えなくなるまで見送ったわ。
その後私は積んできたポンポンの籠を手に持って切り株テーブルに移動したの。
テーブルの上に籠を置いて、丸太椅子に座った私。
目の前にこんもりと入っているポンポンを見て、期待に胸が膨らむわね。
あ、胸は要らないわよ?
低血圧が発覚したケリー。
そして、見つけた綿花「ポンポン」。




