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012 素材

二話目投下。


「主、こちらに来てほしい」

「なーに?」



 パトラッシュは私を見るとすり寄ってきたわ。

 朝からしっぽをブンブン振っているから何かと思って尋ねたら、夜やってきた魔物を刈ったと言って見せてくれたの。

 家の裏手にはパトラッシュが器用に木の枝を乗せて隠してあった魔物の死体が大量に有ったわ。

 数えてみたらアルミレージが5体に大きな豚っぽいのが2頭いるわね。というか、朝っぱらから大量の死体を目撃するってえぐいわぁ。



「うっ……良くやったわね。頼もしいし、助かるわ~」

「そうか。主の役に立ったのならば至上の幸せ」



 そう言って更にしっぽをブンブン振っているのを見たら、頑張るなとも言えないじゃない?

 これは大量に冷凍庫が必要かしら。……ケリーに言ったら卒倒するかしらねぇ。

 とりあえず私はパトラッシュを褒めて頭を優しく撫でてあげると、パトロールに行ってらっしゃいと送り出したわ。


 その後私は草原の草むらで用を足してスッキリすると、鑑定の練習を始めたの。

 昨日は錬金術の練習に追われてあまり詳しく見て回れなかったから、周辺の草花を詳しく見ていったわ。

 ケリーが持ってきていたハーブも生えていたし、薬になりそうな草も幾つか見つけたから収穫ね。

 そうしていると早速来たの。



 スキルレベルが上がりました。

 鑑定眼 3 → 4

 遠方鑑定が解放されました。



 来たわ、コレコレ。

 遠方鑑定が出来れば、例えば昨日パトラッシュに取ってきてもらったあそこ。



 鑑定結果 「岩塩」……塩の塊。食用可。



 これよこれ。

 この技術があれば、素材探しがずっと楽になるはずよ。

 私は周囲の山肌を鑑定してみたわ。

 そうしたら、周辺の山肌から色々な物質の反応があったの。

 見つけたのはざっとこんなところ。



 「鉄」……鉄鉱石。素材。

 「銅」……銅。素材。

 「銀」……銀。素材。

 「ミスリル銀」……魔法銀。素材。

 「精霊銀」……精霊銀。素材。



 反応が有ったものという前提を置いてだけど、これだけの素材がここらの周辺には有るっぽいわ。

 こう表現したのは、包丁を作った時に鉄の他にニッケルや錫という表示が有ったでしょう? つまり、希少金属や含有量的に少量の物質についての反応は少ないのかもしれないかなと。

 あと、フェンリルブレードを作った時に出ていた精霊銀という表示よね。あれはたぶんそんなに多く産出しないものだと思うの。あの氷河が残した岩にそんなに大量の精霊銀が有ったとすれば儲けものだったのだとは思うけれど。


 これはちょっとした仮説だけど、錬金術を使った際に大量のMPを消費するのは、必要なものを周囲から拾い集めてくるための力が要るからじゃないかしら。だって、あの砂山で事足りる時や、水の状態変化に必要な量はどんなに多かろうとたかが知れていたわ。だとすれば、あの大量のMPは何に必要だったかなんて一目瞭然じゃないの。


 仮に収集するのに必要なMPが不要の場合は、もう少し楽に生成できるんじゃないかしら。

 私はとりあえず近場にある大きな岩を鑑定してみたわ。



 鑑定結果 「ミスリル銀」……魔法銀。素材。

      「銀」……銀。素材。



 え、何これ。

 コレ、お宝じゃない?

 どうしよう。

 普通に凄いわ。

 あ、そうよ、なんで思いつかなかったのかしら。

 何も道具を生成しようと考えなければ良いことよね。


 私は岩に手をついてイメージしたわ。すると、岩が青白く光って分解されたの。そうして出来た物は思った通りになったわ。分解されて出来たのは、銀のインゴットとミスリル銀のインゴットよ。

 そう。インゴットにしてしまえば、いつでも素材として利用できるのよ。

 銀のインゴットは岩の全体量からしたら少ないけど、それでも3キログラムくらいはあるんじゃないかしら。ミスリル銀のインゴットは1キログラムくらいかしらね。え、どうして重さが分かるって? 簡単よ、うちのPCの重さが約3キログラム、タブレットの重さが1キログラムくらいだったもの。だから銀を持った時はPCくらいかなとか思ったわけ。そして、例のごとくというか、大量の砂山が出来てたわ。

 

 私は砂山に手を突っ込んで陶器の籠を作ると、そこの中にインゴットを入れたわ。さすがに全部で5キログラム近いから結構重いけれど、何も無いよりは持ちやすいもの。それを持って家に戻ってきたら、ガリが着替えて涼んでいたわ。



「あら、お帰りなさい。それ何?」

「ただいま。これはねぇ。素材よ」

「素材? うぉ、銀色に光ってる。もう一つは緑色?」

「銀とミスリル銀のインゴットよ」

「ミスリル銀!? ……マジ?」



 ガリはそう言ってミスリル銀のインゴットを手に持つと、しげしげと観察を始めたわ。



「考えてみたら、素材をインゴットにしておけば使いやすいと思って。ここら辺はたぶん貴重な金属が手付かずのまま有るのよ。だから、上手く集めればそれなりの物を作れそうよ。それに、MPの消費効率を考えた時に、剣を作った時の大量消費は周辺から必要な素材を集めるのに使ったからだと思ったの。だったら、最初から用意しておけばその手間分のMPを節約できるでしょう?」

「確かに。まぁ、ゲームとかの錬金術なら素材集めするよね」

「でしょう? だから試してみたらこんな感じよ~」

「全く研究熱心ね。あ、風呂入りなさいよ。いい湯だったわ」

「了解。入るわ~」



 私は服を脱いだら、バッグからハンカチを出してバスタブへ向かったわ。……流石に服を脱ぐと寒いわね。

 傍から見たらちょっと奇怪な動きしていたかもしれないけれどバスタブのもとへ向かうと、湯船から良い感じに湯気が立っているの。時間の経過を考えるともう少しぬるくなっていてもおかしくないと思うけど、そんなに冷めてないわね。錬成の熱は冷めにくいのかしら?


 風呂桶でお湯をすくって掛け湯をしたわ。



「うひぃぃぃぃ」



 寒い体に熱いお湯は結構くるわね。でも、我慢してしっかり体を洗う私。

 普段は熱めのお風呂が好きだから慣れているのよ。

 一通り洗ったところで湯船に入ったわ。



 ちゃぷん。



「あぁ~、生き返るぅ~。良い気持ちぃ~。極楽だわぁ~」

「何年寄みたいなこと言ってるの」

「あらやだ、聞いていたの?」

「聞こえたのよ。まぁ、気持ちは分かるけど。ごゆっくり~」



 ガリの声が遠ざかっていく。

 彼も気を利かせて散歩にでも出かけた様ね。



「ふぅ……」



 それにしても、人生何があるかわからないものね。

 つい先月母が亡くなって私の心にぽっかりと穴が開いて、これからどうしようとか思っていたけれど、こんな状況がやってきたらそれどころじゃないわ。……色々と思うところは有るけれど、一人でこの世界に放り投げられたわけじゃないのが救いかしら。二人には付き合わせている様で悪いけれど感謝ね。


 上を見上げれば木の上に組み上げられた私達の家の床。

 壁と床の間から入る僅かな木漏れ日。

 なんというか、確かに日常とかけ離れた場所にやってきたんだけれど、妙な落ち着きがあるというか。



「……変ね」

パトラッシュが狩ってきた大量の魔物に思わず唸るキョーコ。

インゴットにすれば手間が削れると考えたキョーコは素材集めをしました。

唐突に連れてこられた世界だけれど、二人が居ることを心強く感じるのでした。

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