ひょっとして、ひょっとしなくても
私、ミュウのこと好きなんじゃないの。
ひとり、部屋にいるとそれしか考えられない。
男嫌いなのに?
治ったのかな?
でも顔は見られない。
ということは治ってない?
相談できる人もいない。恋話的に聞いてくれる友人もいない。
そういえば、なぜ友人から一通もメールも電話もこないのか。
あまり多いほうではないから気にしていなかったが、いくらなんでもなさ過ぎる。
そう思って自分のアドレスを見ると、まるで見たことのないものに変わっていた。
電話番号も。
……つまり、キヨは中身を消したのではなく、父の連絡先しか入っていない、同じ型の携帯電話をよこしただけだろう。
なぜそんなに手の込んだことをするのか。
……かっこつけたいだけだな。
消去するのだって、時間をかければ出来るし、番号の変更だって出来る。しかしそれを面倒がって新しい携帯を用意したのであろう。
まったく別の携帯でもいいものを、同じものを用意したのは、椎菜の驚く顔が見たかった……とか。
真面目に考えてもわからない。
やーめた、とベッドの上に横たわる。
スパイがどうの、男がどうの。
疲れていないわけではない。楽しいこともある。
しかし、まだ現実味がなかった。
どこかで、これは映画か何かではないかと。あの監視カメラで撮影されていて、世界中で生中継されている……とか。
そんな昔の映画を思い出していた。
そう考えれば、あの個性豊か過ぎる面々も納得できる。
全員、そろいも揃って整った顔をしている理由も。
本当にそうなら、どれだけいいか。
舌で右奥歯に触れ、自分のものではない感触が現実を思い知る呼び水となっている。
はぁ、とため息をつこうとしたところで、内線電話がなった。
キヨだったら直接部屋にくる。
まさか、生徒の誰かだろうか。
ベッドから体を起こして、壁にかけてある電話をとる。インターホンみたいだ。
「どちら?」
「オ・レ☆」
「……あの、誰ですか」
「酷いな、そんなボケいらないって」
「いや、リアルにわからないです。名乗らないなら切りますよ、先生に言いつけますよ、なんなら部屋に放り込んで熱光線銃のターゲットにしますよ」
「おっそろしいこと言うなぁ。コウだよ、コウ」
けらけら笑う声に、思わず胸のあたりがぞわっとした。
「セクハラ先生おはようございますさようなら」
怒りを押し殺してそう言って、電話を切ろうとした。
「だぁー、今電話切ろうとしたでしょ。ダメダメ。俺はシーナとお話したいんだよ?」
「私はしたくない」
「冷たいこと言うなって。シーナの好きな人のこと、色々知りたくない?」
知られているのか?
気分が悪い。あんなヤツに秘密を握られているなんて。
「……ありがちな手法で呼び出すなんてダサい。聞きたいことは本人に聞くからいい」
「だと思った。うーん、シーナを呼ぶにはどうしたらいい?」
「どうもしなくていい。何を言われても、あなたとふたりっきりになんてぜーったいならないから」
そう言って電話を切ろうとする。
しかし、受話器から聞こえる笑い声が冷たくて、再び耳に戻してしまう。
「じゃあ、ダンを人質にしてる、って言ったら?」
その言葉にはっと息を飲む。
が、冷静に返す。
「誰ですか。ダンって」
「……え?」




