いのちだいじに
「ご両親を亡くしたというのは……」
「それも違う。王ではないけれど、ボクと一緒に国を出た。今頃自由に遊んでいるんじゃない。まぁ何年も前に別れたっきりだから、本当に死んだかもしれないけど」
それだけ早口で言うと、ふい、と横を向いた。
おい、とアリサを見るとグロスが塗られた唇から、さらに舌が伸びている。
「やだー、ケネディが全然しゃべらないから、少しはコミュニケーションとってあげようと思ったんだよ?」
悪びれない様子に、椎菜もミュウも頭をおさえた。
「アリサ、いい加減にしろよ」
「頭が固いのよ、ミュウは」
アリサなりの気遣いなのだろうか。
……とはいえ、勝手に人を死んだことにするのはどうかとも思うが。
「ケネディは、どうして交渉人としてスパイになったの?」
ケネディの代わりに、ミュウが答える。
「日本のポップカルチャーだよ」
ポップ?
言っている意味がわからず、ミュウの顔を見返してしまう。
まずいまずい、とすぐケネディに視線をうつした。
「ナントカ、ってゲームだか漫画を見て、憧れたんだって」
呆れたようにアリサが言う。
「憧れで、四十ヶ国語も覚えられるようになるの?」
「ケネディの国では、日本のポップカルチャーが盛んなんだよ。そこで、忍者の……ええと、間者、っていうのか。そういうのとか、漫画とか、そういうので知ったらしい。それ以外もあるかもしれないけど、僕は知らない」
ケネディは、特に返事をすることなくうつむいたままだった。
否定しないんだ……。
こんな人ばっかりでどうしたものか、と椎菜は思うが、自分もその一人なのだよな、と思うと、なんとも言えない気分になる。
ケネディは、もういい、と言わんばかりに歩いていってしまった。
その後ろから「ピーちゃんに謝れ」と言うミュウが追いかける。
ミュウも、ピーちゃんって呼ぶんだ、と思いつつ……。
そして、また視線を感じた。
なんなのだ、誰なんだろう。
まだ見ぬ、最後の生徒、なのだろうか。
では、なぜ自己紹介をせずに覗くようなマネを?
なんだか恐ろしいことが待っているような、そんな気がした。




