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いっぺんに出てきた

 あれから数日。

 特別なことはなく、キヨにつれられては、世界史のような授業を受けている

「社会情勢ってムズいっすね」

 会議室のような部屋で、キヨと二人きり。とはいえ、監視カメラが稼動していた。


「そこいらの学校じゃここまで習わないからな」

 スパイがどの戦争に関わっていたか。

 どのような功績をおさめたか。


 時に耳を塞ぎたくなるような残酷な話もあった。

 本当に、父親はどの程度、悪のためでなく、正義の為にスパイ活動なんてしているのだろうか。


 授業が終わると、食堂へ向かう。

 特に用はないが、部屋にいてもつまらないし、よくアリサに会う。

 中身が男、とはいえ、アリサとはあまり緊張せずに話せる。

 そして、その隣には時折ミュウがいる。


 ミュウがいると、落ち着かないな。


 そんな気持ちになりながら、アリサの話に相槌をうつ。


 ふと、誰かに見られているような気がした。

 振り返ってみるが、どこにも、誰も、こちらを窺うような人影はない。


「どした?」

 アリサに問われ、椎菜は首を振った。

「慣れない環境で、ちょっと過敏になっているだけ」

 なら、いいのだが。


 ココアをかき混ぜながら飲んでいると、調理場の方から大きな音がした。

 たくさんんの金属がぶつかり、床に落ちる音。

 人がいるとは思わず、驚いて三人は調理場を見る。

 誰かが、何か言っている。


「なんか、怒ってる?」

「そうねぇ。あの声、ピーちゃんじゃない?」

「かもな」

「ぴーちゃん?」

 よくわかっていない椎菜を置き、二人は調理場のほうへ向かう。

 慌てて椎菜もついていった。


「ピーちゃん、いるの?」

「あっ、アリサ! ちょっと助けてよ!」

 ピーちゃん、と呼ばれた人は、アリサに助けを求めた。

「どうしたの」

 食堂からでは様子がわからないので、脇のドアから調理場に入る。

 すると、そこには北欧風の大人を下敷きに、同じく北欧風の少年が折り重なっていた。


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