スパイ学園の内部を探るスパイ(見習い)
ようやく自己紹介をし、名前を覚えてもらったところで、椎菜は話を切り出した。
今までも聞きたかったが、一番聞けそうな雰囲気の人に出会えたから。
「キヨ先生って知ってる?」
「うん」
「先生が言うには、この学園には十人ほどの人間がいるっていうの。私を含め、まだ六人しか知らないんだけど……」
「歯科医の人に会った?」
「え、うん。毒入れられた」
考えただけで、右奥歯がむずむずしてくる。
当然気分もよくない。
「解剖とか、医療系のスペシャリストの、ナギ先生だよ」
「あれ、先生だったの?」
驚いて大きめの声になる。
マスクで口は見えなかったが、目元はいい男だったような、とあの錯乱状態でも記憶には残っていた。
あれ、私って男好き?
疑問はさておき。
「あとは誰?」
「毎日料理を用意してくれる人」
「ああ、給食のオバちゃん的な」
「違うよ、メカニックの、スービー・ロンド……じゃなくて……ピーヤン・ファイファイだったかな。そんなような名前の先生」
どんなような名前だよ、と言わずにはいられない適当さだった。
「メカニックの先生が、料理をしてくれているの?」
「そう。なんでも、料理と機械は似てるんだって。僕にはわからないけど」
よくわからないが、機械と似ているという理由で料理をしてくれるならありがたく頂いておこうと思った。
サラダ油の代わりに、機械のオイルじゃなければいいのだが。
あと、どこの国の人なのかも気になる。
うっすい顔の日本人の可能性は高いが。
「三人の先生と、六人の生徒……あと何人だろ」
「あとは、生徒が二人」
「まだいるんだ……」
うんざりして言う。
全員男、なんだよな。
とはいえ、いつの間にかどんな人と出会えるのか楽しみにもなっている。
父親の思惑どおり、男嫌いが治ったわけではないとは思う。
出会う人が普通とは違うから、動物園に来たような気分。
最初はこちらが珍獣扱いされて腹が立ったけど、今ではこちらが生徒を珍獣扱いしている。




