↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/29

上手に騙されるも賢い方法

「騙されたがる、ってどういう意味?」


「騙された方が、楽しくて、ある意味賢い、ってことだよ」


 意味がわからず、椎菜は首をかしげた。

 廊下で立ち話をしていると、少し体が冷えてくる。

 しかし場所を変えるつもりもないのでそのまま続行する。


「たとえばさ、嘘だと分かっていても、愛しているよなんて言われたら、その時は気分がいい」

「でも、それは偽りじゃない」

 自分が言われたわけではないのに、愛している、の言葉に思わず顔が赤くなる。


「偽りでもいいんだよ。本心から愛を囁いてくれる人なんて、そうそういない。一生に一人か二人か……ひとりもいないかもね」

 すると、コウはにやっと笑った。いやらしい笑みではあったが、つい引き込まれてしまう笑顔だ。


 椎菜は思わずあとずさる。

「結婚していたって、そこにはどこか打算がある。好きだ、愛しているって言っておけば、女は満足する」


「そんな単純じゃない」


 馬鹿にしているのか。

 苛立ちを隠しきれなくなってきた。


「浮気されても、お前が一番、お前の元に戻りたい、って言われたら許す。心のどこかでまた浮気をするかもしれないと思ってもね」

「でも、許しを請うときは本心かもしれない」

 すると、コウは指を鳴らし、椎菜に人差し指を向けた。

「その通り。上手に騙されているのは、女だけじゃない。男なんだよ」


 急展開に、ついていけない。

 戸惑いつつ、椎菜は意味を考える。

 

 ……やっぱりわからない。


「愛を囁けば、自分にとって一番大切な人間を作れる。許しを請えば、またその人の元に帰れる。女はわかっていて、上手に騙される。男は騙せたと思って女に騙される」

 じり、とコウは椎菜に近寄ってきた。


「何を言いたいのか、ちょっとわからない」

 一歩下がりながら言う。


「みんな、偽りの中を生きていて、ある程度それに満足しているってこと。俺たちみたいに情報で凝り固まった人間には、ちょっと理解出来ないんだけどね」


 情報分析に、人間の心理など必要ない。

 その割りに、コウは人の心にずけずけと入ってくる。


 このままじゃ、押し切られてしまう。

 だけど、椎菜には反論するテクニックがなかった。


「はっきり言ってよ」

 手の汗を感じながら、じりじりと下がる。


「シーナも、騙されてみればいいんだよ」

「はぁ?」

「俺のこと、大好きっ、って言ってみなよ。そうしたら、本当にそう思うかもよ?」

 可愛い顔して、なんだかえげつないことを言われた気がした。


「絶対言わない」

「言った方が面白いのに。そんなに警戒心丸出しだと疲れるよ」

「もっと疲れたくないから、このままでいいの」

 警戒心を解いたら、男が近くをうろついて、それを我慢しなくてはいけない。


 だったら、これでいい。


「言いたいことは言えた? さっさと帰ってよ」

 手で追い払うと、コウは諦めたように手を上にあげ、首をふった。


「知ってる?」

 手はそのままに、コウはうしろに下がりながら言った。

「解読出来ないアクセスキーが、一番燃えるんだよ」

「君のアクセスキーは何かな、とかクサいこと言ったら、アリサに言いつけて拷問させるから」

 言われた、とちょっと残念そうに肩をすくめる。


 言うつもりだったのか。残念すぎる。


「じゃあね」

 コウは手をふって、フロアの奥へ歩いて行った。


 階段もエレベーターもない。

 ということは。

「同じ階かよ」

 早いところ、熱光線銃に守ってもらおうと、椎菜はカードキーを使い、自室に入った。



 とうとうモテ期が来てしまった!

 嬉しくない……とは一概には言えないのは、早くも騙されているから?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。