気づけばこれにて完結
はいまず結果から報告します(誰に向けて言ってるんだろう)。
あの後神様は、きちんとあの子の転生手続きをとってくれました!やったね!
そして、数年がたち、あの子は立派な王道のチート主人公になりました。学園などにも行き、充実した日々をおくっているようです。良かった良かった。
その学園の召喚術の授業の時になぜか召喚されたことには驚き桃の木三途の木です(三途の木ってなんだおい)。
実際はただの幽霊なのですが、ここで彼の顔に泥を塗るのは悪いと思い、咄嗟に天使のアンジュと名乗りました。神様偽名をありがとう。天使の天使って…なんて呟きが彼から発せられたような気がしましたが、気にしないようにしました。
それからというもの、彼に呼び出されては戦いに明け暮れ、(ゾンビ的なキモいのが数千もいた時は、もう死んだ身でありながら死ぬかと思いましたはい)真っ白に戻ると仕事を押し付けられ、散々でした。
彼は後に英雄と呼ばれました。しかし、彼は不老不死ではありません。着々と日々衰え、そして、愛しい人と娘に見守れながら亡くなりました。彼の息子は父の大往生に間に合いませんでした。彼らが涙を流すのを見ているうちに私もホロリときました。彼と、彼を追うように亡くなった彼の愛しい人を一緒に転生させたりもしました。神様は黙認してくださりました。
私の姿は全く変わってませんが、精神的に年をとりました。敬語は標準装備です。神様もあの美貌のまま今日も輝いております。
しかし、私は何時になったら転生できるのでしょうか。神様に訊ねても「もう少し待って」なんてはぐらかされました。
暫く経つと仕事がまわされなくなりました。
初めの頃なら喜んだのでしょうが、仕事をして暇を潰している今の私にとっては、逆効果でした。
彼が再び転生し、私の管理下から抜け、仕事もなく、ここにいる意味も見出せなくなった私は神様に泣きつきました。
すると神様は言ったのです。
「わかった。転生させてあげる」と。
そして、私は無事転生したのですが、
「……何故、記憶が消されていないのでしょう」
なんででしょうね?前世の記憶と間の記憶が残っています。
私も王道主人公ですか。これこそがテンプレなのですね!?
そして、最後に神様が言った言葉が気になります。
「覚えていて?君の十八歳の誕生日にとてもいいことが起こる」
それは予言ですか、と突っ込んだ私に神様は意地悪く笑いました。
「これは予言じゃない。事実だ」
それが間の最後の記憶です。
そして、今日こそが、今世の十八歳の誕生日。最初の人生より長生きしました。前がとんでもない早死にだっただけですが。
「アンジュちゃん、誕生日パーティーが始まるわよ」
アンジュ、それは偶然にもあの偽名と同じ、私の名前です。呼ばれ慣れているので別にいいのですが。
「はい、わかりました。今行きます」
そして、先ほど私を呼んだ人こそ、この国の女王であり、今世の私の母親であらせられるお方です。
そう、私はこの国の末姫なのです。
姫と言っても、チートではなく、両親譲りの顔以外は特に飛び出た才能のない平凡なお姫様です。
そんな姫に婚約の申し込みがあったのは二年前。私が十六歳の誕生日でした。
娘をこよなく愛する父は勿論渋りましたが、相手が世界一の軍事力を誇る国の次男坊では勝負になりません。顔も見たことのない人と婚約させてしまうことをとても謝っていました。そして今日、初めて私は婚約者の顔を見ます。
今年のパーティーは誕生日パーティー兼婚約者のお披露目パーティーでもあるのです。
きつく締められたコルセットのおかげで憂鬱な気分にさせられた私は、重たい足取りで母を追いました。
「お母様、私の婚約者様は何処にいらっしゃるのですか?」
「んー、あっそこよ。ほら、あのとっても綺麗な…」
私は目を見開きました。
母の目線の先に立っていたのは神様のそっくりさんだったのです。
「あらあらまあまあ」
気がつけば、手に口紅がつかないよう気をつけながら口元を抑え、どっかのおばさんが言いそうな台詞を口にしていました。まあ、精神年齢はかなりいってますもんね。
神様もどきはにっこり微笑み、此方へ近づいてきました。そして、空いてる方の手を取り、その整った唇を押し付けいたずらに微笑みました。
「ずっとお慕いしておりました。こうしてあなたと出会えたことに僕に感謝しましょう」
あらあらまあまあ、こんな神様の顔で告白されちゃったよ。すごいね。社交辞令とはいえ、気分が浮上する。……ん?僕?
「ほら、僕の言うとおりになった。いいことあったでしょ?」
…な、な、まさかの〜!?
神様もどきはご本人様でした。