↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/18

Literature Café ARCADIA④

美羽が店内の人たちに感心していると、


「最近はネット上に、文章を書く人も増えたよね〜」


圭がカウンターから話しかけてきた。


「SNSってこと?」


美羽が振り向く。


「そうそう。昔は本や新聞だけだったけど、今は読む場所が変わってる」


圭はコーヒーを淹れながら言う。


美羽は、ふみのやの店主が言っていたことを思い出した。


本屋がなくなる。


本が読まれなくなる。


「だから、本が減ってるんすか?」


美羽が訊くと、圭は少し考えながら言った。


「いや、形が変わっているだけかもしれないな」


「形?」


「紙で読む人もいる。電子で読む人もいる。短いSNSなんかの文章から興味を持って、小説を読む人もいる」


「それって……なくなってるんじゃなくて変わってるだけ?」


「文章って身近すぎて、みんな気づいてないんだろうねー」


「……」


「ちょっと、マスター。その説明じゃわかりません」


どこからか突然、しおりの声が飛んできた。


「美羽さん、今も昔も本の数は変わってません。いえ、むしろ本は増えています」


「えっと、まじで?」


「ええ、文章として2行あれば、それはもう本になりえます。SNSの呟きもある意味では、書籍です」


「相変わらず、しおりちゃんは極端なこと言うよなぁ」


「本の存在理由は、誰かに伝えたい思いですっ」


もしかして、いま、この二人は文章論を語ってるのか?


つか、この雰囲気って、なんか雲行き怪しくないか?


わたしが、なんとかしないと……


「つか、マスターって本のこと詳しいんっすねー」


「ま、仕事柄かな」


「えっと、何の仕事?」


「昔、文章を書く仕事をしてたんだ」


「へぇ……」


「見えない?」


と言いながら、なぜかサングラスを外した。


クリッとした優しげな眼差しは良しとして、


なんで、つけまつけて、シャドウにラインまでがっつり決めてる?


しかも、ちょっとギャルっぽいメイクで、なんか敗北感……


「う、うん……」


つか、いろいろと情報量、多すぎっ!


脳内はパニック気味で、会話はここでギブアップ。


改めて、店内に目を向けた。


メイド服の店員。


文章を直す人。


外国の言葉を日本語に変える人。


ネットで文章を届ける人。


そして、本を好きな人たち。


「ほんっと、へんな店だし」


反射的に、また言ってしまった。


「それって、ここを気に入ったって意味でしょう?」


「……だよね?」


二人から、同時に言われた。


「た、たぶん」


すんなりと頷いている姿に、自分でも驚いた。


最初は単なる興味本位。


ただチラシをもらっただけ。


メイドが少し気になっただけ。


ここがへんな店であることは間違いない。


でも、この場所には、本屋とは違う何かがある気がした。


だから帰り際、店のドアを閉める前、


美羽はもう一度、店内を見渡しながら、


「また来よかな」


と小声で呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。