プロローグ
高校入学初日。
桜の花びらが舞う校門前は、新しい制服に身を包んだ新入生たちで賑わっていた。
「ねえねえ美羽! 写真撮ろー!」
「待って、盛れる角度探すから!」
スマホを掲げながら騒いでいるのは、金髪ハイライトの少女、
――橘美羽
ゆるく巻いた髪に軽めのメイク。
新品の制服も、スカート丈だけはしっかり調整済みだ。
その隣には茶髪の莉乃、少し派手めなアクセをつけた真奈。
三人並べば、入学式とは思えないほど華やかだった。
「ちょ、今の撮り直し! 風やばいんだけど!」
「は?」
「前髪終わった!」
「知らんし!」
親友の莉乃が爆笑する。
いや笑い事じゃない。
朝六時半に起きて、一時間かけて髪巻いたんだし。
入学式だぞ。
高校デビュー初日だぞ。
それが今、たった一陣の春風によって崩壊しかけている。
許せるわけがない。
「スマホ貸して」
「ほい」
インカメを確認。
うん。
ギリ生きてる。
勝った。
「何に勝ったん?」
「風」
「意味わからん」
真菜まで笑い出した。
校門前は新入生でいっぱいだった。
真新しい制服。
緊張した顔。
親と一緒に歩いてる子もいる。
そんな中で、あたしたち三人は結構目立ってたと思う。
「ねえねえ!」
真菜が突然叫んだ。
「見てあれ!」
指差した先には、校舎へ向かう男子集団。
「一番左やばくない?」
「身長高っ!」
「顔も良くね?」
「やばー!」
二人が盛り上がる。
うん。
たしかにイケメンだった。
たぶん。
よく見てないけど。
「美羽は?」
「ん?」
「どうよ」
「どうって?」
「イケメン」
「まあイケメンじゃね?」
「つか、興味なすぎ〜」
失礼な。
別に興味ないわけじゃない。
「高校で彼氏作る?」
「知らん」
「えー」
「ま、できたらできたで」
正直、今は彼氏なんかより、別のことで頭いっぱいなんだわ。
高校に入ったら必ずやるって、決めてたこと……
よっしゃー、とりま明日から本気出すか!




